BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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優勝戦 私的回顧

21日目のリベンジ

12R決勝戦
①関 浩哉(群馬)16
②平本真之(愛知)17
③松井 繁(大阪)14
④石野貴之(大阪)16
⑤茅原悠紀(岡山)14
⑥馬場貴也(滋賀)24

 関が勝った。クリスマスイヴの屈辱から、わずか21日で“それなり”のリベンジを果たした。GPシリーズ戦ファイナルはコンマ43。当然、1マークはレースをさせてもらえず、4着まで追い込むのがやっとだった。

 今日はビッグレースのファイナルとして過不足のないコンマ16。他艇の息もぴったり合ってスリットほぼ横一線から、松井や茅原らの猛攻をまったく寄せつけずにバック突き抜けた。強い。あの住之江でも同じだけのスタートを行けば同じように勝っていたはずで、まさに「リベンジ」という言葉が相応しい。もっと言うなら、うっかり今日も起こし遅れ⇒大敗などという、内面に支障をきたす事態(トラウマやイップス的なヤツ)にならなくて良かった。もちろん、それでもこの29歳は近い将来にリカバリーできる男だと思ってはいるけれど。

 そして、語気を強めて書くべきは、やはり今節のトーナメント戦の戦績だろう。
★1回戦=6号艇6コース3着
★準々決勝=6号艇6コース3着
★準決勝=6号艇6コース2着
★決勝=1号艇1コース1着
 今日の決勝は人機の力量的に逃げて当然として、それまでの3戦の素晴らしかったこと! 「ただインが強いだけじゃなく、幅員が広くて6コース難関の水面」として知られる大村で、しかも通常より内3艇の防御が固くなるトーナメント戦で、6コースから3回連続で2・3着に突っ込んだ。それだけで驚愕に値する。

 もっと言うと、昨日の2着で決勝進出を決めた直後、関クンはこうコメントしている。
「(3連続入着は)6コースが好きなんで……決勝戦に乗れたのはメチャクチャ嬉しい、何枠でも嬉しいし、どこでもいい。6コースでも勝負になる足ですから」
 デビューから長きにわたって6コース&ダッシュ戦にこだわり続けた男だからこその矜持か。4戦連続で6コースでもOK!と言いきった関クンを見て、大村南門前に棲む龍神さまは微笑みながら白い札を授けたに違いない。

 1分46秒3。大会トップタイの猛時計で3周を駆け抜けながら、関浩哉は21日前に背負った重荷をいくらか大村水面に投げ込むことができただろう。だが、それでは足りない、と私は思っている。前回はとにもかくにもSGという名義で、今回はそれより一枚格下のプレミアムGI。格下だから足りない、というのも少しはあるが、それだけではない。

――現状の関浩哉というレーサーにとって、GPシリーズ戦の1号艇でも今大会の1号艇でも足りない、足りてない。
 そう言いたいのだな。それくらいGPシリーズの6日間も今節の4日間も、「もう一丁、もう二丁上のステージでこの男を見てみたい」と思わせる光景が多かった。6コースから3日連続で強固なATシールドを突破した男。そんな男を、さらなる檜舞台で見たくないファンなど存在しないだろう。
“それなり”のリベンジを果たした関浩哉は、もっともっと大きな舞台で真のリベンジを果たさなくてはならない。
 あえて、そう書き記しておく。

   ※    ※   ※
 さて、毎年のように書いている気がするのだが、最後にこの大会ならではの注意事項を殴り書きしておこう。まずは全5回の総合データから。

★全5回のトーナメント集計

1回戦=1号艇30勝/40R 1着率75%
 他の1着=②5回③1回④3回⑤1回
準々決=1号艇17勝/20R 1着率85%
 他の1着=②2回③1回
準決勝=1号艇7勝/10R 1着率70%
 他の1着=②1回③1回④1回
決勝戦=1号艇4勝/5R 1着率80%
 他の1着=③1回
 ――――――――――――――――
トータル1号艇58勝/75R 1着率83%
 他の1着=②8回③4回④4回⑤1回
※1~3号艇の1着率93%!

 ざっと見てもらえばわかる通り、いわゆるトーナメント戦は大村大会に限らず1号艇=ほぼインコースが強いこと強いこと! もっと言うなら、1号艇が負けたときも好枠の2・3号艇が勝ち上がり、過去5回大会75レースで外枠が勝ったのは5回のみ。もっと言うなら、穴水面の鳴門大会で4・5号艇が3勝してるから、他の4大会のトーナメントは全60レースで2回しか4・5号艇が勝ってないのである。その1着率はわずか3%!!!

 いやはや、来年のとこなめ大会もこうなるとは限らないが、4~6号艇が大好物の穴党は「トーナメント戦は30回に1回くらいしかアタマに来ないかも??」と大いに警戒すべきだろう。もちろん、このデータが単なる偶然の産物であるはずもない。インがバカ強いだけでなく外枠が負け続ける最大の要因は、【決勝戦以外は3着条件だから】に尽きる。
「大村ボートで6号艇で、3等取らんと今日で終わってしまう。厳しすぎる。どーしたらいいとやっ!?」
 開会式で苦渋の表情を浮かべた宮地元輝。宮地は別のインタビューで「この大会は内3艇が防御を固めるんで、外からの攻撃が利かん」と嘆いていたが、まさにソレ! 今節のトーナメントでも3コースの選手がしっかり外をブロックしつつ、安全第一の外マイでしっかり2、3着に粘り込むレース展開が多発した。
 逆に強気のまくり差しで1着を狙いに行った選手は「舳先が入りきらずに大敗⇒レース後に作戦ミスだったかとボヤキ」みたいなケースも何件かあったな。これらの試行錯誤があってはや5大会、ボチボチ選手間では「この大会は選考順位の上位が断然有利」のみならず「内枠ではこう戦えばファイナルに行きやすいぜ!」みたいな不文律が出来上がりはじめてることだろう。

 うん、この大会の特異性をつらつら書いてみたらば、6コース3着⇒6コース3着⇒6コース2着で優勝まで上り詰めた関浩哉という男がどんだけ常識破りのレーサーだったか、改めて痛感すしかないな。
「SGタイトルにもっとも近いレーサー」
 と呼ばれる選手はどの時代にも複数存在するけれど、昨暮れのGPシリーズ戦ファイナル~今日の決勝戦の紆余曲折のドラマも含めて、2024年は関クンに相応しい“代名詞”だと確信した次第だ。
 でもって最後の最後に、やっぱり今回も1年後の私のために、いつものアレを書き残しておきたい。
――おい、2025年1月22日(前検日)のとこなめ記者席にいるであろう畠山、この大会はフツーにインが強いだけでなく、トーナメント戦のインがさらに恐ろしく強い大会だぞ。4~6号艇が勝ちきるのもメチャクチャ大変だぞ。それを肝に銘じて意地になったりムキになったりしないで、4日間を冷静に戦い抜きなさい!(photos/シギ―中尾、text/畠山)