BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――同期!

 9R、3番手を争ったのは吉川元浩と山本寛久。終始、吉川が先行する態勢ではあったが、山本も諦めずに追い続け、差はなかなか広がらなかった。このふたり、79期の同期生。まさに同期競りだったのだ。レース後は、二人で肩を並べて笑顔でレースを振り返りながら控室へと引き上げてきた。25年以上も前に同じ釜の飯を食った二人が、マスターズの舞台で着を競い合う。そりゃあ笑顔も浮かぼうというものである。

 10代や20代前半に、厳しい訓練を励まし合いながら乗り切った者たちが、45歳を超えて大きな舞台で顔を合わせる。デビューしてからは長きにわたってしのぎを削り合ってきたわけだが、ベテランの祭典で顔を合わせれば感慨深いものも生まれてくるだろう。たとえば太田和美と三嶌誠司の絡みはSGで山ほど見てきたけれども、だからこそマスターズの舞台で二人を見ると、こちらが感慨深い心境になってくる。

 また、銀河系軍団の絡みは今でもSGでは当たり前に見られるわけだが、田村隆信と金田諭の絡みはちょいと新鮮であった。金田もSG経験はあるけれども、常連というわけではなかった。それだけに、ビッグレースで田村、あるいは井口佳典や森高一真と話しているのを見ると、なんだか嬉しくなってくるというわけだ。

 そして、田頭実と三角哲男の58期コンビが絡んでいるのを見ると、感動! 58期は現役選手も数少なくなり、そんななかでこの二人がマスターズチャンピオンに揃い踏みを果たしているのである。彼らが本栖研修所で切磋琢磨していたのは38年前! まだ昭和の時代だ。令和になってもなお、大舞台でともに戦えることは、彼らにとっても幸せなことだろう。それを目の当たりにできるこちらも幸せ!

 そんななか、同期生との絡みが見られるわけがないのが西島義則。だって、49期生で現役は西島のみになってしまった! この期の出世頭が49期の牙城を守り、そしてマスターズチャンピオンに参戦しているのである。凄い! 9Rは1号艇。先マイは果たしたものの、大きく流れて前付け2コースの石川真二に差しを許し、自身は大敗となってしまった。釈然としない様子で、顔をしかめながら戻ってくる西島はまだまだ突出した勝負師の顔を保っているし、だからこそ若々しくもある。決して枯れない闘志で、プレミアムGⅠという舞台に卓越した存在感を放つのである。

 同期生の存在は心強いだろうが、同支部、同地区の存在もまた精神的に大きいだろう。10R、中谷朋子が2コース差しで1着。差し切られた1号艇は吉田俊彦で、ともに兵庫支部勢だ。中谷にとっては会心、吉田にとっては痛恨と、明暗分かれた格好ではあるが、レース後は肩を並べてレースを回顧し合った。勝った中谷は忖度なくレースを振り返り、吉田もまた気楽に敗れた悔恨を語れる、そんな相手。だからだろう、勝ち負けという深い溝は少しも感じられない、そんな二人に見えたのだった。その会話が明日へとつながれば、その言葉たちはエールの意味を持ってくるだろう。

 その10Rで、赤岩善生は前付けに動くも4コースまでしか入れず、4着に終わっている。その赤岩に寄り添ったのは服部幸男。赤岩が饒舌にレースを振り返る言葉を紡ぎ、それに服部が合いの手のように短く言葉を挟んで赤岩を労っているという構図。まるで赤岩が愚痴を聞かせているようにも見えたりしたのだが(笑)、しかし服部のアドバイスのような言葉に赤岩がうなずくシーンなど、勝負師同士の質の高い会話となっているようだった。ちなみに、閉じていた控室へのドアを開けたのは服部。しかも先に赤岩を通し、自分はそれに続いたのだった。先輩にドアボーイをさせた格好となり、ちょっと恐縮の赤岩。そりゃあ、この大先輩にそうされたら恐縮するよね(笑)。

 さてさて、昨日レース後にうつむく原田幸哉、てな記事を書いたのだが、そのうつむき方の角度が今日はさらに深くなってしまっていた。8Rは1号艇。菊地孝平にまくり差しを許しての2着では、それは意気が上がらないのも致し方ないところか。直前に地元周年を制して乗り込んだマスターズ。勢いは一番といってもよかったはずなのに、その流れをここに結び付けられないでいる。そして、レース後には続けざまに苦悩の仕草……。消化不良の予選前半をなんとか立て直したい、明日3日目である。明日は一日早い勝負駆けだ!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)