BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

鳴門マスターズTOPICS 2日目

無傷のニコちゃん2連勝!!

 昨日の夜半、レース場の周辺で拾ったタクシーの運転手さん(推定65歳?)がボートレースに明るいこと明るいこと。ちょいと回想しておこう。
運「今日は朝からずっと賑やかでしたねーーなんでも14億近くも売れたそうじゃないですか、お客さんを何度もココに運んで、嬉しいよねぇ。毎日ずーーっとこうだったらいいんですけどぉ(笑)」
私「ビッグレースの初日ですからねぇ」

運「そうそう、しかもみんな大ベテランで昔っから名前をよくよく知ってる選手ばっかりじゃないですか。最近はSGとかでもぜんぜん知らない若い選手が出てくるけど、この大会は違いますから。もう舟券はほとんど買わなくなったけど、それでも朝からソワソワしてましたわ。ほんで、田村はどーでした?」
私「あ、まくり差しで勝ちましたよーー、3コースからエグるようなまくり差しでした」
運「そう、勝ちよった、まくり差しで、ほら、今節の地元はふたりだけじゃないですか、少なくとも林ビッケンかどっちかが優勝戦に乗ってもらわんと、地元が盛り上がらんやないですか……できれば烏野賢太にも乗って欲しかったんやけどねぇ」
私「確かに、賢太さんは見たかった」

運「で、他ではどんな選手が活躍しました?」
私「えっと、瓜生が3コースからまくったり、信一郎とか守田が5コースからまくり差したり、けっこう派手なレースが多かったかも」

運「ほおぉぉぉ、今は5コースのまくり差しぃゆうと新鋭の専売特許ってな感じやけど、昔はみんなもっと凄かったわねぇ、三角とか服部とか6コースからSG獲っちゃったもんねぇ、服部なんか6コースからグランプリやもんねぇ、あれはほんにおったまげましたわぁ」

 はい、長―――い前フリを経て、服部幸男である(笑)。初日から無傷の2連勝で暫定ながら予選トップに! 昨日はインコースの先マイがやや流れて古結宏~石川真二に差される絶体絶命の展開だったが、2周1マークの古結×石川の大競りに乗じて息を吹き返し、起死回生の大逆転1着をもぎ取った。

「1マークは普通に回ったはずなのに、どうしてああなったのか。そこだけが分からない。その他の足は良かったです」
 謎の1マークに課題を残したが、とにもかくにも1号艇で3着見当⇒1着10点を取りきった強運は素直に喜ぶべきだろう。
 そしてそして、今日の2Rはカドでもなんでもない5コースから、シュッとスリットから覗いて伸びなり一撃のまくり圧勝!! 27年前のグランプリは6コースまくり差しだったが、この豪快な大技を目の当たりにして昨夜の運転手さんの言葉を思い出した次第だ。

「今日は伸びを意識して調整してその部分は良かったけど、昨日より合ってなかった。明日に向けてしっかり合わせて、ベストを尽くします」
 連日の勝利インタビューの最後に“鼻ヒゲ付きのニコちゃんマーク”的な可愛いイラストを書き込んだ服部。ただ、昨日より今日のほうが、服部本人とニコちゃんの眼光がギラり鋭くなったと感じたのは私だけだろうか(笑)。明日の服部は【2R6号艇・12R4号艇】の外枠2連発。2016年の児島周年以来7年半ぶりのGI制覇へ、掛け値なしの正念場とお伝えしておこう。

鳴門は風の王国

 住之江が【無風~風速2m】ばかりの静水面であることは誰もが知るところだが、鳴門は真逆とも言うべき「風の王国」。【無風】は年に数日しかなく、ややもすれば5m以上の強風が当たり前のように吹き荒れる。そして、コースの幅員が狭い鳴門のスリット~1マークでは、そんな風の影響をもろに受けるレース展開がやたらと多い。その傾向を簡潔に記しておこう。
★向かい風=2コース差しや4コース差しなど展開を突く差しは1マークで風に推し戻されて決まりにくく、逆に3・5コースのまくりやまくり差しが増える。昨日の瓜生の3コースまくり、田中信一郎や守田俊介の5コースまくり差しが典型的なパターンだ。
★追い風=インの先マイが風で流れて2コース差しが激増。それを警戒してイン選手が極端に落として回ると、2コースの差しが入らない代わりに3コースのツケマイがハマるケースも増える。今日の鳴門水面が「追い風寄りの左横風」で、9R6号艇の石川真二も含めて2コースが差して5勝したのも単なる偶然ではないだろう。

 まあ、こうした「向かいまくり・追い差し」の傾向は全国のどのレース場でも似たり寄ったりなのだが、なぜか鳴門の追い風だけは極端な2-1水面に偏りやすいのでは? などと私は勝手に思い込んでいた。そうしたらば、昨日になって鳴門が誇る『ターンの魔術師』中道善博さんから実に貴重なお話をお聞きしたので、ざっくり掻い摘んでお伝えしよう。
――鳴門は1マーク側の端っこの水門から海流が入り込むちょっと特殊な形態なので、その水流と合致する向かい風では波風が立ちにくい。だから、ソコソコ強い向かい風でも選手たちはあまり気にせず走ることができる。ところがホーム追い風はその水流と喧嘩するので、ちょうど1マークあたりに白波が立ったりして、特にイン選手はメチャクチャ走りにくいゾーンになる(うねりに似た状況か)。ターンマークを漏らしたりキャビったりするイン選手が増えて、2コース差しなどの攻めが入りやすくなる。
 今日は瓜生正義や西島義則などの名手がインからターンマークを漏らしてズッボリ差されたが、まさにそんな水面環境だったのではないだろうか。(photos/シギ―中尾、text/畠山)