9R、濱野谷憲吾が6コースから激勝! これで準優1号艇は確定的となった。まあそれよりも、やはり笑顔の素は大外から勝ち切ったことであろう。展開が向いたのはたしかだが、そこを的確に突く腕も足もあったということだ。着替えを終えて整備室にやって来た濱野谷はやはり明るい! その後もしっかりプロペラと向き合っており、浮足立つことなく明日への準備を進めてもいた。
10Rは齊藤仁が5コースから勝利! 東京支部が外コースから連勝! 齊藤は今日連勝。準優は内枠で登場となりそうなところまで得点率を押し上げている(結果3号艇)。どういうわけか「やってしまった……」的な、恐縮が含まれているような様子だったレース後の齊藤。待ち構えたカメラマンたちが一斉にシャッターを押すと、やはり恐縮するように軽く会釈をするのだった。仁さん、胸を張れる堂々たる勝利でしたよ!
一方で蒼白気味なレース後だったのは白井英治だ。展開をとらえて抜け出すかと思いきや、さらに絶好のまくり差しで齊藤に先んじられた。これで6・00と得点率を上昇させたのだが、おそらくこれではダメだと理解していたのだろう。そう、白井は1着がなく、この時点で5人並んだ6・00組では最下位。5人並んだ「17位タイ」だが、実質的には21位までしかランクアップできなかったのだ。つまり、1着勝負だったのである。いったんは勝ち筋も見えたはずが、黄色いカポックに先行を許し、その後も差を詰められなかった。ドリーム1号艇として屈辱的な予選落ちが濃厚と自覚したからこそ、取り返しのつかないことをやってしまったかのような、辛そうな表情となっていたのだと思う。
ちなみに、1点足らずの5.83で待機していた井口佳典は、6・00にこれだけ並んだことでボーダーが下がる可能性がこの時点でほぼ消滅、連覇はかなわないこととなった。その悔しさを表に出すようなタイプではないけれども、1便で帰るべく控室へと戻る足取りは少々重いように見えたのだった。
11Rは6・00組が2人。原田幸哉と辻栄蔵だ。1マークは森高一真が逃げ、松井繁が差して追走。3番手争いは残りの4艇……そう、原田と辻がそこに含まれていたのだ。6・00をキープするには3着が必要なだけに、これは熱い。2マークを回ると、辻がやや舳先を出したように見えて、ここは辻が優勢に立つかと見えた。
しかし2周1マーク、辻はやや後手を踏むことに。そして3番手争いは原田と吉川元浩に絞られた。内に原田、外に吉川。コーナーで握る吉川に、内で粘る原田という構図だ。結局、原田はなんとかしのぎ切って3着! 辻は準優争いからも後退することになってしまっている。原田は疲れたような表情で戻ってきており、そこにはやはり安堵のようなものもうかがえた。ただし……上位着順差で原田は19位なのである。嗚呼……。それを把握していたかどうかは遠目にはわからなかったが、落ち着かない状態で12Rの結果を待つことになっている。
12Rは菊地孝平がイン逃げ快勝。あっさり、といっては失礼かもしれないが、しっかりと予選トップ通過を決めている。目標はここではなく優勝なのだから、トップに立ったことで満足するわけにはいかないということもあるのだろうか。レース後はやけにあっさりとした雰囲気の菊地なのだった。
対照的に、待ち構えるカメラマンたちに向かった諸手をあげてみせたのは2着の金田諭だ。最低でも4着が欲しいところだったが、展開を突いて2着という結果。悪くないレースぶりでもあったし、手応えも良かったということもあるだろう。そして、決してGⅠ常連ではない金田が、この大舞台でベスト18に残ったのだから感慨もひとしおのはず。素直に喜んでみせたその姿は実に微笑ましいものだった。
同じ4着条件で出走していた瓜生正義は、まさかの5着だ。そう、予選落ちを喫することになってしまったのである。林美憲とレースを振り返りながら控室へと戻った瓜生だが、表情は終始曇りっぱなし。予選落ちを把握していただろう、その様子は痛々しくもあった。そして、この瓜生の陥落により、原田幸哉が18位に浮上。同期同士、同支部同士がこういうかたちで明暗を分けるシーンがけっこう多いように思えるのは気のせいか。原田自身はそれを把握していたかどうか、まったく淡々としていたものだが、明日は盟友の分までと燃えるはずだ。
さてさて、勝負駆けとは関係ないけど、展示準備に向かう森高一真とすれ違った。「おぅっ! クロちゃん」を凄んでくる森高、うむ、元気そうである。転覆後は初めての接触だったので、「大丈夫?」と身体を気遣ったのだが、森高は「楽勝じゃっ! 何年やっとると思っとるんじゃっ!」と凄みながらすれ違っていった。そして、11Rは元気いっぱい逃げ切り快勝。楽勝でしたね(笑)。お見事。明日も明後日も元気いっぱいのレースを見せてくれるだろう。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)