終盤に差し掛かったところで、ボーダーが怪しくなってきた。それまで6・00なら準優OKの様相だったものが、9Rで6・00に4人が並び、うち2人は19位以下に後退することになったのだ。
この状況を作ったのが、9Rの川野芽唯と落合直子。川野は2着なら6・00という状況で、きっちりと逃げ切り。得点率を6・40まで伸ばし、19位以下から浮上。落合が攻める気配だったものを、しっかり封じて先マイ逃走はお見事なハンドルだった。
落合は攻め切れずに3番手となったのだが、2番手先行の野田彩加を競り落として2着に。3着では5・80だったから、かなり冷や汗をかいただろうと想像されるが、格上の捌きで6・20の得点率としたことでやはり19位以下からの浮上となっている。レース後には野田と、おそらくその競り合いについて振り返り合いながら(いや、落合が若手の後輩にアドバイスをしているようにも見えた)控室へ。その視線には充実感が漂っていたのだった。
10Rで魅せたのは土屋南だ。チルト3度! スリットから1マークまでの中間あたりからグイグイと伸び、まくり一閃。これをがっちり受け止めて逃げた清埜翔子もたいしたものだったが、土屋はバックでも伸びて2番手確保。得点率6・33として準優に駒を進めることとなった。実は6・00四人衆のひとりだったレース前、そこから一歩抜け出す2着でもあった。土屋は清埜と笑顔を交わしながら、肩を並べて凱旋。2着ではあったものの、チルト3度にチャレンジしたことが奏功した、そんな満足感もあったようだ。
11Rで注目はやはり堀之内紀代子。2着で6・17、3着で5・83という状況での出走で、前半同様のチルトマイナス、4カドから伸びていったが……インの渡邉優美を叩けずにまくり差し。それでも、5コースからまくり差した藤原菜希の2番手を追走したのだが、2周1マークで渡邉に抜かれ、惜しくも3着……。準優であの伸びを見ることは絶望的となってしまったのだった。その後も必死に前を追い、それもあってか顔が紅潮していたレース後の堀之内。こうなったら明日明後日と一般戦をおおいに盛り上げてもらおう。
12Rは、遠藤エミが冷や汗ものだ。2コースの今井美亜にのぞかれ、その今井はツケマイ敢行。遠藤はこれに抵抗する格好となったのだが、開いたふところを差されてしまっている。遠藤は2着条件。ズブズブと差し込まれれば予選落ちの可能性もあったわけだが、なんとか2番手確保。ギリギリで勝負駆け成功となったのであった。遠藤と今井は一緒にレース場入りすることもある仲の良さ、しかしレースとなれば真っ向勝負! 今井も遠藤の2着条件を忖度することなどないし、遠藤も今井の攻めを容赦なく弾いていくのである。そして、レースが終わると肩を並べて引き上げ、その戦況を語り合う。仲がいいからこそのガチンコ勝負!
それにしても、展開が向いたとはいえ、遠藤を差し切って予選突破を確定させた戸敷晃美に拍手! 序盤2連勝から始まった予選道中、着を落としはしたけれども、ラストを遠藤撃破で飾ったのだから素晴らしい。しかも1号艇なしでの予選突破は称えられていいだろう。準優でもおおいに沸かせるレースを見せてほしいぞ。
さて、上位勢。10Rでは西橋奈未が3着。しかし、チルト3度の土屋南に大外からまくられただけでなく、道中は大きく流れて4番手に後退する場面も。3周1マークで日高逸子を捌いたのはさすがだったが、得点率は7・83にやや下がっている。準優1号艇がピンチとなったのだ。それが胸につかえていたか、あるいはレースでの失敗を悔やんでいたか、西橋はかなりカタい表情で戻ってきている。いずれにしても、自分を責めるかのような雰囲気で、痛恨の敗戦であることは間違いないようだった。結果的に、予選3位で準優は1号艇に。今日の悔しさは逃げて晴らすしかない。
そして、守屋美穂の連勝はついにストップ。11Rで締めた堀之内、まくり差した藤原に連動できずに後方に置かれ、それでも香川素子らをきっちり捌きはしたのだが、4着が精一杯であった。それでも予選トップは確定。あと2回逃げれば、大会史上誰も成し遂げていない複数回優勝を果たすことになる。守屋にしても完全優勝ならずは残念な部分もあるだろうが、レース後は意外とサバサバしており、むしろ余計な呪縛なく準優を戦えることになるのではないだろうか。優勝に最も近いのは、変わらず守屋であることは間違いない。(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)