BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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勝負駆け濃密!の4日目後半ピットから

 9Rで早々に予選トップが確定した。遠藤エミだ。3着以上ならトップという条件で、2着。選手も含めて多くの人が認識していた様子ではあるが、遠藤がトップという事実はまるで驚くに値しないものなので、ピットの雰囲気は意外にも静かなのであった。遠藤自身も特に歓喜をあらわす様子もなく、ただ表情は柔和なレース後であった、という感じ。ようするに、順当、なのである。

 まあ、なにしろこの9Rは、他の5人は勝ってもボーダーに届かないという状況だったので、勝負駆けの悲喜が起こらなかったというのも、静かなレース後になった要因ではあろう。それでも勝った小芦るり華は笑顔を見せており、勝利の快哉は垣間見えたが。すぐ右隣に遠藤がいるというレースだったので、安堵も大きかったかもしれない。

 8Rでは宇野弥生が“私らしく”4カドまくりを決めて快勝。大敗なら予選落ちだっただけに、気持ちのいい勝利だっただろう。というわけで、笑顔笑顔のレース後。公開ウィナーインタビューから戻ってきたときにも実に穏やかな表情で、選手たちに声をかけられるとさらに笑顔を振りまくのであった。準優も4カドになりそうで、“私らしく”戦って2年連続の優出を目指したい。

 10Rでは海野ゆかりが逃げ切り、準優1枠を確定させた。それをはっきりは把握していなかった様子ではあったが、ただレース後のテンションは高かった。實森美祐や寺田千恵らと会話を交わしていたのだが、目を丸く見開き、声色は力強く、そこには逃げた会心がはっきりと見て取れたのだった。

 一方、3着で勝負駆けには成功した魚谷香織は深刻な表情。渡邉優美、次いで川野芽唯と長めの会話を交わしていて、どうやら仕上がりについて、あるいは調整の方向性について話していた模様。目を丸く見開いていたのは海野と同じなのだが、そこに笑みのようなものは皆無で、時に眉間にシワを寄せていたのだから、あまり納得のいくレースではなかったのだろう(実際、2番手競りを田口節子と演じて競り負けている)。選手間では足色が評判になっていたという魚谷だが、準優を前に修正の必要性を感じているか。

 あとこのレースでは、勝負駆けには関係なかったが(1着でも準優は厳しかった)、堀之内紀代子がチルト3度で登場。しかしスタートを行けずに不発に終わり、レース後は暗い表情で装備をほどいていた。チルトを跳ねてのまくりがファンからの投票につながったのだと心得ている堀之内だけに、期待に応えられなかったことに責任のようなものを感じてしまっていたのかもしれない。そのチャレンジだけでも尊いと僕は思うぞ。

 11Rは、西村美智子が守屋美穂に競り勝って2着。これで得点率は6.17! 12Rの結果次第ではまだ19位以下に落ちる可能性はあったものの、この時点では18位に浮上している。前半の6着大敗で表情を暗くしていた西村だが、ここはさすがに明るさが戻った。12Rの展示から戻ってきた平山智加と顔を合わせると、午前中とはまったく正反対の、笑顔を向けあっている。平山にとっても、背中を押す笑顔だったかも。

 ……と思われたのだが、その12Rで平山はイン戦を活かせなかった。このレースの発走直前に、岩崎芳美が工務店ジャンパーを着て水面際にあらわれているのだが、岩崎が思わず「嘘やろ……」と呟いてしまった、まさかの取りこぼしであった。岩崎は同支部の後輩の西岡成美の声援だったとも思われるのだが、レース後はまず平山のもとに向かっていた。それくらい、平山がこのイン戦で敗れるとは想定外だったのだろう。平山は思わず苦笑いをこぼしている。

 平山を撃破したのは香川素子。本日連勝! いやはや、お見事。さすが地元、とも言える。これで得点率6位まで浮上し、準優はあろうことか遠藤エミとの地元対決ともなったわけだが、当然ワンツーでともに優出という意気込みで戦うことだろう。レース後は思いのほか淡々としていた香川だったが、むしろ貫禄が感じられたのだった。

 残念だったのは日高逸子。3着以上で予選突破という条件だったのだが、4カドからまさかのスタート後手。というか、ダッシュ勢が揃って遅かった。装着場のモニターに映し出された競走成績を目にした日高は「ワーッ!」と悲鳴。「5と6が遅いと思ったのにぃ」と苦笑いだ。たしかに5も6もコンマ36、コンマ28と遅かったのだが、自身もコンマ26。痛恨のスタートだったわけだ。

 で、2番手の目がありながらも竹井奈美を2マークで交わす間に平山に差し返されてしまった西岡成美。3着では西村美智子を上回ることができず、2着条件だということが頭にあったか、レース後は暗い表情で装備をほどき、その表情のまま控室へと戻っていっている。自身の条件は把握していたとしても、他の選手との相対的な関係まではなかなか認識し切れないというのが当然だと思う。そう、日高が大敗したことで両者の順位は逆転、西岡が18位で予選突破! それを控室で知らされたであろうときの様子はもちろん伺い知れないが、いちどは予選落ちを覚悟していただろうから、明日はもう失うものはないと思い切った戦いを見せてください!(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)