新風満帆
12R優勝戦
①佐藤隆太郎(東京)08
②西山貴浩(福岡) 13
③馬場貴也(滋賀) 16
④塩田北斗(福岡) 17
⑤宮地元輝(佐賀) 21
⑥池田浩二(愛知) 21
新しい風を巻き起こせ!
この大会のキャッチフレーズにぴったりの男が頂点に立った。佐藤隆太郎。初日にも書いたが、去年の一般シリーズでコツコツ積み立てた7つの優勝を今大会のチケットに転換。若松に来てからは30号機という隠れ優良モーターをケタチの節イチパワーまで引き上げ、一気に頂点まで駆け昇った。クラシックというSGに相応しい“わらしべ長者V”とお伝えしていいだろう。
レースを振り返る。隆太郎の第一の勝因は、絶品スタートだ。優出インタビューでは「西山さんが分かってるんで、西山さんを見ながら合わせて行きます」と謙虚に言ったが、なんのなんの、コンマ01のスタ展もコンマ08の本番も西山には一瞥もくれずに己の道を突き進んだ。
今節の隆太郎30号機ならこれだけのアドバンテージで十二分としたものだが、スリットを越えて不気味なダークホースが現れる。4カドの塩田北斗12号機! カド受けの馬場と同体だったのに、伸びるわ伸びるわ。必死に抵抗する馬場とともに西山パイセンを攻め潰し、さらに馬場をもツケマイで沈めて隆太郎ににじり寄る。その迫力は凄まじく、並のイン選手なら北斗の百裂拳で木っ端みじんに吹き飛んだだろう。
だがしかし、北斗がイン水域まで辿り着いたときには、もう隆太郎はいなかった。スタートのアドバンテージのみならず、回った直後の押し足が半端ない。
「うぬの力は、その程度か!?」
そんなセリフが聴こえるような超抜パワーで、一気に北斗を5艇身ほど突き放した。恐るべきラオウ逃げ!(笑)
あとはもう、後続をぐんぐん引き離しての一人旅。逆に2~4着争いは熾烈を極めたから、全国の観衆と視聴者の視線は早々に隆太郎から離れたことだろう。ひとりだけ、次元の違う水路を疾駆しての優勝だった。おめでとう!
で、隆太郎のSG制覇は、東京支部にとっても待ちに待った「新しい風」と言えるだろう。何十年にも渡って「東都のエース」と呼ばれ続けている濱野谷憲吾。東京のファンは「ケンゴの後継者は誰だ?」と探し続け、それなりの候補者が現れては消え去り、ついにはSGタイトルからも遠ざかる支部になった。2000年以降のSG覇者を挙げてみよう。
2000年以降の東京支部SG制覇
★2000年5月 蒲郡オールスター 熊谷直樹
★2000年11月 住之江チャレカ 濱野谷憲吾
★2001年12月 住之江GPシリーズ 濱野谷憲吾
★2002年3月 平和島クラシック 野澤大二
★2007年3月 平和島クラシック 濱野谷憲吾
★2007年10月 平和島ダービー 高橋 勲
★2015年12月 住之江GPシリーズ 長田頼宗
★2021年7月 芦屋オーシャンC 濱野谷憲吾
★2025年3月 若松クラシック 佐藤隆太郎
直近10年で勝ったのは4年前の憲吾のみ。「やっぱ東京支部は憲吾しか勝たん」みたいな風潮が当たり前になっていたが、ついに東都のニュースターが誕生したわけだ。もちろん、今回の快挙は118期の宮之原輝紀や栗城匠などなど才能あふれる後輩たちに多大な刺激と影響を与えるだろう。与えると信じたい。そして、隆太郎自身も今日の結果を自信に換えて、東京支部の若きリードオフマンになっていくだろう。「東都のエース」をスイッチするには尚早すぎるが、かつてない有力な候補者が現れたと言っていいはずだ。今日の隆太郎の優勝を、深い安堵とともにいちばん喜んでいるのは、他ならぬ濱野谷憲吾かも知れませんな。
敗者についても少々。やはり、西山貴浩だ。今日も今日とて、SGの大輪にわずかに手が届かなかった。西山のSG挑戦は、今日も含めてこんな感じだ。
西山貴浩のSG挑戦
出場=59節
準優進出=20回
優出=6回
★2015年 GPシリーズ 3号艇5着
★2019年 GPシリーズ 5号艇5着
★2020年 グランプリ 2号艇5着
★2021年 GPシリーズ 2号艇・妨害失格
★2024年 GPシリーズ 5号艇3着
★2025年 クラシック 2号艇3着
ちょいと意外なことに、これまでのSG優出はほとんどGPシリーズのみ。他の季節のSGでは準優入りがやっとだったのだが、今節はようやくファイナル2号艇まで突き進んだ。
優良エンジンと手を組めば、SGタイトルに手が届く!
何日目だか本人も言っていたが、今節はガチでそれを証明してみせた。今節は東京の若造に寝首をかかれたが、今度こそ。そんな気概でこれからのSG戦線を駆け回ってもらいたい。(photos/シギ―中尾、text/畠山)