BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――明日は勝負駆け!

 8Rは5コースから伸びる中辻崇人に先んじようと、4カドから出ていく気配の鈴木博が抵抗する格好。それでも中辻に振り切られてまくりを浴びてしまったが、なんとか3着に粘り込んだ。ここまでオール6着と苦しい戦いが続いていたが、再度のセット交換で臨んだここで明るい兆しが見えたか。レース後はさらにプロペラ調整に励んでいたが、その隣に寄り添う金田諭の表情が明るく、鈴木の顔つきにも精気が戻ってきているように見える。

 鈴木と同期の服部幸男は3コースカド受けで、もろにWまくりを浴びる格好となり6着大敗。服部もまた、即座にプロペラ室にこもることとなった。9R発売中には帰宿の1便が出発するので、今日はその1回乗りだった服部は帰ろうと思えば帰れたわけだが、そんなつもりは毛頭ないようだった。ペラ室の奥の角っこに陣取って、懸命にペラを叩く服部。明日は勝負駆けになるだけに、調整にも力がこもる。

 9R、池田浩二が4着。ドリーム戦を逃げ切ったものの、その後は大きい着も獲っており、やや苦戦気味と映る。池田自身、機力に満足はしていないだろう。ピットに戻った池田は、思い切り顔をゆがめる。息も荒く、疲労感も漂いながら、それが同時に憤怒の表情にも見えてくる。着替えを終えると、池田は整備室に直行。本体を割った。この9Rはキャブレター交換で臨んでいるが、いよいよ本体のほうにも手をつけようということだ。明日は6号艇も回ってくる勝負駆け。ドリーム男としては予選落ちは許されない。懸命な立て直しで明日に向かう。

 その9Rで明るい表情を見せていたのは市橋卓士。初日の不良航法はやや不運なものと見えたが、その後はきっちり2連対を続けている。エース機との呼び声高い52号機を、しっかりと活かすレースを見せているという印象だ。そして、この2着で予選突破の望みも出てきた! その見通しがついたこともまた、市橋の心を軽くしているか。減点を巻き返してみせるかどうか、明日も注目!

 10Rでは守田俊介が逃げ切り。今節はすべてのレースで部品交換を行なって登場。大きな着を並べつつ、ようやく勝利を手にすることとなった。また、勝負駆けにもつながった。レース後の守田はわかりやすい安堵の様子を見せており、もやもやしたままここまで戦ってきたことは明らかだった。

 その守田に寄り添ったのは、2着の萩原秀人。なかなか感慨深いワンツーなわけだが、萩原もまた昨日は1号艇で敗れるなど、消化不良のレースが続いていた。6号艇6コースの2着は、勝利こそ掴めなかったものの、やはりホッと一息つけるものではあっただろう。守田と萩原は言葉を交わしつつ、そこには妙に柔らかな空気が漂っていた。お互い胸を撫で下ろしているというか。本人たちも感慨深いワンツーでもあった!? 萩原も勝負駆けはつながったので、明日は爽快なレースを期待しよう。

 さて、今節、試運転の最中に大時計の12秒針が回りっぱなしなのに気づいた。試運転はおおむね、ホームストレッチもバックストレッチも選手たちは全速で駆け抜けていくものだが、進入の際のスロー水域のあたりで艇を流している選手が頻出。スタートの起こしと同様にレバーを握り込んで、スリットから1マークへと駆け抜けていくのだ。よく見れば、大時計が回ってる! ひたすら12秒針が回り続けていて、次には別の選手がタイミングをはかったようにレバーを握り込んで発進。スリット写真は出ないようだが、まるでフリースタート練習の様相を呈しているのである。
 元群馬支部のスターレーサーだった廣町恵三さんに尋ねたら、昔から桐生ではよくやっているとのこと。マジか。桐生には何十回も来てるのに、今節初めて気づきました。これ、全国的にやったらダメなんでしょうか。スタート事故の罰則が厳しくなっている昨今、予防のためには効果的だと思うんだけど、いかがでしょう。いろいろ事情はあるかもしれませんが、桐生はいい試みを行なっていると思った次第です。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)