準優の朝ということで、ピットは報道陣でにぎわっている。準優進出選手に取材をかけているメディアも複数見られたりする。なかには、わりと長い時間話し込んでいる選手もいるわけだが、そういう選手は間違いなく、足色に余裕がある選手だ。調整を急がねばならないような選手は、水面なりペラ調整所なり、そこで時間を過ごしたい。取材よりもそちらが優先になるのは当然である。
なるほど、エース機19号機を駆る飛田江己がそのひとりだ。圧倒的な成績で予選を突破したわけではないけれども、レースで見せてきた足は明らかに上位。飛田自身もエース機としての手応えを感じている。本格的な調整は、もっとレースが近づいてきてからでいいということだろう。
登玉隼百も同様だった。彼もまた、レースでは好気配を見せてきた一人で、6号艇での6着以外はオール3連対にまとめている。朝に乗ったようだったが、そこでも変わらぬパワーを感じたのだろう。なにしろ人懐っこく、またサービス精神も旺盛なキャラクターだから、次から次へと報道陣に声をかけられていた。登玉パビリオン、大賑わいである。予約は不要のようですが。
そして、新開航である。予選トップ通過を果たした新開は、上位級のパワーではあると思うが、決して図抜けた足ではないとも思う。それでも、インから逃げるには充分ということだろうか。おそらく、昨日の12R1号艇で高憧四季にまくられたことは、むしろ彼のなかで重要なデータになったのではないかと推察する。二の轍を踏まないだけの技術はあるはずだから、むしろ万全の態勢で臨めるだろう。
パワーは間違いなく上位のはずだが、井上忠政は早くも試運転と調整に忙しく走り回っていた。こうなるとメディアもさすがに声を掛けるスキはない。機力を考えれば、また彼の力量もあわせて考えれば、5号艇での準優出はむしろ意外。どこか上積みしなければならない部分はあるだろう(たぶん出足系)。そこをしっかり仕上げれば、外枠でももちろん怖い存在となる。そのための作業に早くから余念がないわけである。
やはり上位級と見える澤田尚也も、早々にボートを下ろして試運転に励んでいた。昨日までと比べると、少々ピリピリしているようにも見えたりするわけだが、万全で準優に臨む意欲の強さだと思われる。
澤田と同じ2号艇の吉田裕平も、早々に水面に出ている。こちらはパワー的には中堅と本人も証言しており、そこをどう引き上げていくかが準優に向けての課題ということになるだろう。ただ、表情は明るく、悲愴感のようなものは感じられない。仕上げに自信があるのか、それともSGファイナリストの風格か。やはりここでは格上なのだと、改めて感じたりもする。
最も大きな動きを見せていた準優組といえば、板橋侑我だ。正直、準優組ではパワー的にはやや劣勢とも感じるわけだが、彼もまたそういう手応えなのだろうか。18人のなかで唯一、本体整備を行なっていたのである。整備士さんが心配そうに見守るなか、けっこうな時間をかけての整備となっていた。大きな部品の交換もあるかも!? 板橋にとって最後のヤングダービー。一片の悔いも残さず戦うべく、レースまでに懸命な調整が続くことだろう。(PHOTO/中尾茂幸 池上一真 TEXT/黒須田)