BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――勝負駆けのラチ外でも

 大苦戦中の中村日向。今日1着を獲っても、準優行きは絶望的で、もはや勝負駆けとは関係のないポジションにいる。しかし今日は早くから本体整備に取り組んでいる。4日目ともなれば、ほとんどの選手は仕上げを煮詰める段階。勝負駆けで一発勝負、という場合に本体にカツを入れることはあっても、多くはプロペラ調整に励むもので、なかにはステイという選手だっていたりするわけだ。そんななかで中村は、何としても最悪を脱するのだと本体整備に着手した。もはや意地のレベルであろう。12R1号艇。プライドにかけても逃げる。そんな闘志が伝わってくる。

 ナイター4日目の12R1回乗り、というのは、ようするに実質的には勝負駆けのラチ外にいるということである。中亮太もその一人。初日の減点が響いて、早々に苦しい立場に置かれた。そして12Rは6号艇。そんな中もまた、大きな整備をしているわけではないけれども、早くから動いている。6コースから回っただけの6着だろうと、大駆けの1着だろうと、勝負駆けという意味では大差はない。しかし、可能であれば後者とせんとばかりに、たっぷりある時間を無駄にはせずに、明るいうちから全力投球なのだ。今日は勝負駆けの選手に目が向きがちだけど、中村や中にも頑張ってもらいたい!

 1Rの安河内健にしたって、逃げ切ったものの、準優進出は奇跡が起こらない限り難しい。ボーダーは6・00よりを下回りそうな気配があるとはいえ、4・40でフィニッシュでは厳しい。それがわかってはいても、安河内は渾身の逃げを放った。見事に逃げ切ったのだ。目の前の戦いには全力を尽くす。それが彼らの矜持だ。レース後、やっと結果が出たとばかりにホッとした笑顔を見せていた安河内。こういう勝利が先々へとつながっていくものだ。

 勝負駆けで準優を目指す選手たちは、そういう決して勝負を投げることのない選手とも対峙し、勝ち抜いていかなければならないわけだ。準優行きが厳しい選手たちは往々にして機力劣勢だったりするわけだが、勝負は簡単ではない。もちろん、モーターが出ている選手たちとも戦うわけだから、多少条件が緩かったとしても気まで緩めるわけにはいかないのである。とりわけ、パワーは劣勢に見えながらも地力で準優圏にとどまる仲谷颯仁など、今日もピットを走り回っている。しかも今日は6号艇での勝負駆けだ。どこか悲壮感すら漂っているように見える表情で、パワーアップのため懸命に奔走している。

「仲谷さんと足合わせしても一緒くらいなんですよ」とは宮之原輝紀。昨日12Rは6コースからまくり差し一閃。あざやかなレースを絶賛しようと話しかけたら、「いや、奇跡ですよ。だって、エンジン出てないですから」。どちらかというと自分を低く見積もることで己を鼓舞するタイプでもあるから、ネガティブな言葉は想定済み。だから、いろいろな言葉を投げかけているうちに、宮之原は仲谷さんと一緒、と言った。うむ、それはわかりやすい(笑)。たしかに満足できるパワーではなさそうだ。その仲谷とも話をしながら調整を続けているという宮之原。落水失格(と減点)はたしかに痛かったが、今日の勝負駆けでなんとか巻き返すべく、諦めることなく調整に励んでいるというわけだ。

 さて、そうしたなかでも比較的余裕を感じるのは、やはり小池修平だ。予選首位に立つ小池は、今日は6号艇。トップキープのためには簡単な枠番ではないわけだが、逆にそれを意識しすぎてどうこう、ということはなさそうだ。たたずまいは自然体と見え、それが実に好ましい雰囲気に思えてくる。多くの選手がピリピリし始めているだけに、かえって目立つ小池の淡々とした表情。なにか秘策あるのかな……。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)