BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――早い始動

 装着場の奥のほうに、優勝戦用のカウルをまとったボートが並べられている。艇番通りに並んでいるわけではなかったが、緑、青、黄、白、黒と艇番カラーに染められたカウルが着いているボートだ。………………ん? 赤がないぞ。赤といえば3号艇。優勝戦3号艇は白井英治。白井のボートがそこにない!
 取り立てて騒ぐことではないと言うかもしれないが、白井といえば、どちらかといえばゆっくりと始動する選手である。特に優勝戦や準優勝戦の賞典レースに登場するときには、モーターを装着することが最後ということもままあるほどで、朝から装着場にボートがない=水面に出ているというのは、かなり珍しい。しかも、他の5人がまだ下ろしていない段階で、というのは驚かされるばかりなのだ!

 本当に水面にいるのかと探していたら、試運転をいったん切り上げて、リフトで陸に上がってくるところに遭遇。凛々しい表情は明らかに優勝戦モードに入っているもので、早くからスイッチを入れているというわけだ。今日は1R発売中頃に雨が落ちてき始めていて、当然湿度も上がっている。それだけに早めに下ろして、優勝戦公開インタビュー(5R発売中です)の前に感触を確かめておきたかったというところだろう。

 その頃、菊地孝平はプロペラ調整室にいた。優勝戦組で姿があったのは菊地のみで、しばらく観察していたところ、ハンマーを手にする瞬間はなく、いくつかのゲージを当てて、えんぴつで印をつけたりしつつ、点検確認をしているといった様子であった。気候も変わった中で、優勝への一手は何か。とにもかくにも、インタビュー後に本格化するであろう調整の方向性を模索していたであろうことは間違いない。菊地もまた、早々に動き出しているというわけだ。

 あとの4人はゆったり目の動き出し。といってものんびりしていられない人もいるわけで、登番が下から4番目の益田啓司、5番目の杉山正樹はいわゆる新兵の部類に入るから、そちらの仕事もこなしていかなければならない。今日は最終日ということで、今節の戦いを終えた選手はモーターを返納する。その前にモーターを真水で洗い、海水を抜いて、エアーを吹きかけて水を飛ばすのだが、水抜きとエアーを選手が担当して行なわれていた(モーターに真水を吹きかけるのは整備士さん)。選手が、といっても、ここはやはり新兵の出番。益田も杉山もそこを受け持って、他選手のモーター返納までの一連の作業をヘルプしていた。調整はやはりインタビュー後にピッチが上がることになりそうだが、それ以外の仕事にも励みながら、優勝戦の準備を進めていくわけである。

 瓜生正義は、言わずと知れた選手会代表である。最終日には選手会の職員さんが代表随行のようなかたちでレース場にいらっしゃるのだが、職員さんの顔を見た瞬間に、瓜生は代表の顔になってくる。今日も装着場の隅で割と長い時間、打ち合わせを行なっていた。昨日、YouTube「展望BOATBoy」の生配信を行なって、コメント欄に「代表を務めながら、この舞台で戦う瓜生はすごい」という書き込みがあった。まったくもってその通り! しかも優勝戦1号艇なのである。もちろん、レースが近づけば戦士としての瓜生正義にスイッチは切り替わる。本当に感服させられるし、応援もしたくなるというものだ。

 石渡鉄兵は、まあそうした類いの仕事はないのであるが、早々にモーター装着してボートまわりの点検も済ませて、マイペースの午前中である。もちろんエンジン吊りには精力的に駆けつけて、3Rがラスト走だった濱野谷憲吾のモーター返納にも立ち会った。というか、東京支部の後輩もいるのにかなり甲斐甲斐しく動いていたのだった。午後になれば、調整作業に忙しく動き回ることだろう。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)