う～ん、王者がいきなり王者だなあ。
松井繁の雰囲気がとにかく良く見えるのである。共同会見にあらわれた瞬間に、王者モードがビンビン。会見での受け答えも歯切れよく、コメント自体も「足自体は悪くない」「少し分がいい感じ」と前検日としては上々のものだった。
会見を終えた松井は、作業も早々に終わらせたようだった。６班以降のスタート練習＆タイム測定が始まる頃にはすでに着替えもすませており、仕事はエンジン吊りのみという雰囲気である。服部幸男との魅惑のツーショットも見かけたが、ペラ調整に向かう服部に対し、松井はボートリフトで後輩の帰還を待ち受ける態勢。前検からドタバタする必要はないとばかりに、柔らかな笑顔を見せるのだった。
う～ん、王者だなあ。今節は王者らしい王者を一節間見せつけられそうな予感がする。
一方、ドリーム戦１号艇の瓜生正義は、会見では冴えない言葉が並んだ。口調や雰囲気は普段と変わらぬ艇聖だが、こぼれてくる言葉が力弱い。「正直、分が悪いですね」はもちろん本音だろうし、会見後も休むことなく調整を始めて、時間を費やしていた。
とはいえ、瓜生の前検のコメントは意外にあてにならないのも事実。ドリーム戦までに立て直して、気配を一変させてしまうのを何度見せられたことか。福岡での調整方法は知り尽くしているはずだし、明日の夕刻を迎えるころにはまるで違う動きになっていてもおかしくない。本場に来られる方はレース間の試運転などもチェックしたほうがいいかも。
そうそう、早くも本体をバラしていたのが濱野谷憲吾だ。前検から本体に手をつける選手がいないわけではないが、数は多くないから目立つ。そして、今日の手応えに不安があるのではないかという推測も成り立つ（西島義則の場合はそうとも言い切れないんだけど）。たまたま畠山シュー長と一緒に見ていた足合わせの一発目。濱野谷の気配は一息と見えた。で、ピットに行ったら本体整備をする濱野谷。う～む。そろそろファンタジスタの逆襲を見たいというファンは山ほどいるはず。ＳＧ初制覇の舞台である福岡は格好の一戦と思えていたんだけどなあ。
昨年の賞金王で一足早い逆襲劇を演じた山崎智也は、対照的に余裕がありそうだった。足合わせでは白井英治より強めだったといい、その白井が一息の様子なので油断はできないものの、前検の手応えとしては上々。それもあってか、ピットでの智也は笑顔が多く見られていた。
突然、ピットに笑い声が響いて、何事かと声の方向を見ると、そこには智也の姿。毒島誠と大爆笑しているところなのであった。いい雰囲気だ。濱野谷もこうであってほしいんだけど……。
さて、ＳＧ初出場の篠崎仁志だが、この人、気持ちが強いのかもしれないな。仁志とピットで会うのは、これまではもっぱら新鋭王座だったわけだが、その様子も、動きも、表情も、ＳＧでも新鋭王座でもまったく変わっていないのだ。レース始まればどうなるかはわからないけど、ＳＧの雰囲気に物怖じすることなく、自然体で過ごしているように見えるのだから、大物である。地元、同支部勢たくさん、お兄ちゃんもいる、と心の支えもあるんだろうけどね。
一昨年の尼崎笹川賞、ＳＧ初出場だった桐生順平もまた同様に見えていたのだったが、あとで聞くと実は「フワフワしてた」のだという。まったくそんなふうには見えなかったけどね。もしかして仁志も内心は緊張しているのだろうか。で、その桐生はさすがにＳＧの雰囲気にも慣れたはずで、力強さとリラックスが巧みに同居した表情を見せながら、凛々しく動き回っていた（新兵仕事もこなしてました）。思えば昨年の笹川賞は優勝戦に進出。今年はもう一丁上を狙いたいところだろう。近況絶好調だけに、一気の大仕事も充分にある！（ＰＨＯＴＯ／中尾茂幸 ＴＥＸＴ／黒須田）
