「ターン回りがまったく気に入らないですね」
中島孝平は、語気を強めてそう言った。2着3着とまとめた初日、足色は悪くないように見えるし、中島には珍しく直線の気配がいい。それを伝えると中島は一瞬だけ怪訝な顔をして、冒頭の言葉を口にしたのだった。
たしかに、中島の武器は安定して力強い旋回。この足が仕上がる分、直線はやや分が悪いというパターンが多い。今回は逆のパターンであり、しかも「今のレース(10R)ではそれほど目立たなかったでしょ」と直線に関しても不満気だ。ただし、プロペラの形は自分のパターンとそれほど変わらないそうで、「だから考えちゃうんですよねえ。どうしようかな……」ということにもなる。
ただし、明日は11R。調整の時間はたっぷりとある。今夜から考えると言っていたが、明日は試行錯誤を繰り返して、レースに臨むことだろう。
「放っても出ていく」
それはすごい。たしかに白井英治の足は、かなり噴いている。11Rは4カド一撃! コンマ03というスタートの分も大きかったが、それとて「勘より相当早いんですよ。今だって、けっこう放ったのに出ていくんだから」とのこと。足がいいからこその、鋭いスタートだったのだ。
とはいえ、なにしろF持ちで、休み明け。スタートは慎重にならざるをえない。コンマ03はある種やりすぎという面もあるわけで、白井もこの数字を見て思うところはあるだろう。ただ、足が良くての早いスタート、というのは、白井にスリットをより強く意識させる分だけ、むしろいいのではないかという気がする。入れておきさえすれば何とでもなる足だと思われるのだから、少なくとも不安材料にはなるまい。
こうなると、外野としては「今節こそ!」という気分になるわけだが、そんなふうに気をはやらせるこちらを見ながら、白井は頬をきゅっと引き締めた。そう、まったく浮かれていない! その姿を見て、僕は「今節こそ!」という思いをさらに強くしたのだった。
「えっ、そうなの!? ぜんぜん知らなかった」
9Rの逃げ切りで、赤岩善生はSG通算100勝目に到達した。赤岩自身、それを知っていたのかどうかと訊ねたら、まったく気づいていなかった様子。まあ、通算1000勝とか1500勝ならともかく、ひとつのカテゴリのなかの区切りについては意識していなくて当然か。その意味では、予想しえた回答ではある。
ただ、気分を悪くするようなお話であるはずがなく、赤岩の声は明るかった。ちなみに、若松19連勝とか。こちらのほうが、むしろ意識される数字かもしれず、連勝を伸ばした喜びはあったことだろう。
そんな赤岩に「水神祭!」と声をかけると、「やらないよ」とニヤリ。そらそうか。100勝なんて、通過点中の通過点。水神祭するほどおめでたい数字ではない。ただ、ニヤリに赤岩の気分の良さを見たと思った。気持ちで走る男だけに、このメンタリティが怖いと思うぞ。
さてさて、初日のレースを終えて、それぞれに感触を得て、それをもとにしての調整作業が進んでいくことになる。本格的になるのは明日か? まずは明日の前半戦の様子は注意して観察したい。
早くも動いていたのは徳増秀樹だ。本体整備を行なう姿があった。モーターの数字的にはエース機とも言われ、おおいに注目されていたわけだが、初日の動きは決して満足のいくものではなかった。むしろ、数字がある分だけ、そのギャップが徳増を悩ませたことだろう。エース機は手をつけづらい、とよく言われる。数字があるだけに、自分が手を入れることで調子を落としてしまうのが怖いわけだ。しかし、数字通りの動きがまったくないモーターなら、話は別か。エース機の本体整備、という、ある意味珍しい光景を徳増は作り出していた。これが明日の動きにどう反映するのか、ちょっと楽しみだ。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)
公開勝利者インタビューにあらわれた峰竜太。昨日紹介したTシャツを今日も誇らしげに着ていた。情報を修正すると、「作ろうと言い出したのが新田雄史。作ったのが峰」(桐生談)とのこと。現在これを所持しているのは、峰、新田、毒島、桐生、篠崎兄弟、茅原、平本、岡村仁……あと誰だっけな? 早口で12人ほどあげていたぞ。LINEでグループも作ったとか。あ、あと正確には「ニュージェネレーション・スーパースター」だそうです。彼らがSGのど真ん中にどっかりとすわる時代は、いつ訪れる!?
白井英治の足色の話を書いたが、それを濱野谷憲吾も証言していた。4Rは白井のひとつ内からレースをしており、「外から伸びてこられた」。その分、自分のターンができなかったということらしい。後半は見事1着! 1号艇・濱野谷、2号艇・中島は10年賞金王の枠番と同じでしたね。今度は逃げ切った!