BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット……怪物くんが……

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171221145247j:plain

「回転が上がらない」という言葉を随所に耳にした。前検だからだろうか。夏のように気温が上がっているためという可能性もある(尼崎のモーターは初下ろしから間もないうちにSGを迎えたため、30℃に迫ろうかという気温の中、まだ温水パイプが装着されたまま)。松井繁はドリーム会見で「回転が合っていなかった」と口にしたが、いずれにしても選手の望む回転数にはなっていないということだ。

f:id:boatrace-g-report:20171221145259j:plain

f:id:boatrace-g-report:20171221145311j:plain

 というわけで、前検航走後には、多くの選手が調整に走った。実際に装着場を駆け足で移動している選手をちらほら見かけた。下條雄太郎もその一人。ペラ室からペラを手にして、整備室へと駆け込んでいる。瓜生正義は、エンジン吊りが終わるたびにペラ室へと走っていた。その時点で前夜版は出ていないから、ドリーム組以外は明日走るレースを知る由もない。もし早い時間帯のレースであるなら、今日のうちに少しでも調整を進めておきたいのが必定。かくして、選手たちは慌ただしい前検日を過ごすのである。

 

f:id:boatrace-g-report:20171221145325j:plain

 毒島誠も、ドリーム会見を終えると、さっそくペラ室へと飛び込んでいる。会見では、「ドリーム組は全員(足色は)変わらない」と誰もが口を揃えながら、山崎智也は「ブスのほうが行き足はよかった」と言い、茅原悠紀も「2が良さそうに見えた」と証言。大差はないが、毒島がやや良さそう、という推論が成り立つ(松井は「智也が良くなさそう」と言っていたけど)。かといって、毒島は満足していないわけで、他者との比較というよりは「回転が合っていない」のである。明日はレースまでたっぷり時間はあるが、しかしそのことに甘えるつもりのない毒島は、今日の限られた時間内で少しでも調整を先に進める。前検日の、まさに象徴的な光景を毒島は見せていたというわけだ。

 

f:id:boatrace-g-report:20171221145339j:plain

 少し異質な動きをしている選手をあげるなら、西島義則だ。西島は早くも本体を割って、整備を始めていたのだ。前検日に本体整備に取り掛かる選手は多くない。ギアケース調整は山ほど見るし、プロペラ調整も当たり前。たいていはいわゆる“外回り”から始めるのであって、いきなり本体に手をつける選手は珍しい部類と言ってもいい。ただし、西島にとってはまったく珍しくもない光景で、マスターズでも同様だったし、過去のSGでも頻繁に見かけている。これが西島のルーティンなのだ。山口剛が前検航走を終えて戻ってきたときにも西島は整備中で、エンジン吊りには出遅れている。慌てて整備室から飛び出して、山口のもとに辿り着いたときにはエンジン吊りはほぼ終わっていた。「剛、ごめん!」。山口に頭を下げて、エンジン吊りが終わるのを見届けると、西島は踵を返して駆け出し、また整備に取り掛かるのであった。

 

f:id:boatrace-g-report:20171221145349j:plain

 で、もう一人、異質と言っていいだろうと思うのは太田和美である。早々に作業を終えて着替えを済ませて、ゆったりと過ごしていたのだ。姿を見るのは、ほぼエンジン吊りのみ。こうした選手は何も太田一人ではないけれども(守田俊介もそのようでした)、太田の場合、「ゆっくりしている太田和美」には意味がある。前検で手応えを感じたら、あとはほとんどノーハンマーでレースに集中する、というのがスタイル。そして、こういうときの太田は軒並み、好結果を残してきているのである。ピットにいれば前検での足色はわからないけれども、ピットを見ていての感触では、太田がかなり脅威ということになる。個人的に舟券では狙ってみるつもりである。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)