「正直、焦りはあります」
ドリーム戦記者会見で、峰竜太が言う。賞金ランク2位で何を焦ることがあるのか、とも思うのだが、それは峰が心に決めた「今年もSGを1つは獲る」という“ノルマ”による。グランプリまでに、残されたSGは3つだけである。「残り少なくなってしまった」という感覚が強い、というわけだ。
もちろんSGを1つは獲る、はグランプリを見据えてのものでもある。そう、グランプリロードを考えれば、このメモリアルはすでに終盤戦に突入しかかっていると言っていい。峰はすでにチャレンジカップ当確だが、そうでない者にとっては10月末まで、あと残り2カ月で賞金ランクを引き上げなければならないのだ。つまり、そろそろ勝負駆けに差し掛かっている! メモリアルに参加する以上、まずはここを優勝することを目指すのが当然だが、頭の片隅には年末のことがよぎるのがこの時期でもある。ピットのヒリヒリ度合いも、ここから高まっていくことだろう。
事実、前検日からいきなり本体整備をしている選手が通常より目立った。赤岩善生が整備するのはいつものことだが(それでも今日は、いつもより断然早く切り上げている!)、深川真二、今垣光太郎、池田浩二が早くも本体整備に取り掛かっている。また、毒島誠も前検航走を終えるとすぐさま本体を割った。まあ、これもやっぱりグランプリうんぬんを取り沙汰するのはややズレた話になるのかもしれないけれども、早々に本体を扱う選手を多く見ると、どうしてもそちらに結びつけたくなるというものである。
ペラ室も大盛況だ。ドリーム会見で茅原悠紀が気になることを言った。「(児島のお盆開催では)今までの僕なら絶対にやらなかったことをやってみた(優勝!)。今回も失敗してもいいという気持ちで、(調整を)攻めに攻めたいと思ってます」。茅原は2カ月後、児島ダービーを控えている。そこに照準を合わせてという意味でも、また自身をさらに高みへと願う意味も含めて、今までの枠を超えようとしているのだ。そして、会見を終えるとペラ室にこもった。エンジン吊りには当然出ていくわけだが、ペラ室とボートリフトの間は駆け足。明日も12Rまでたっぷりと調整をすることになるだろうが、前検日からその姿勢をとり続けているのである。
ペラ室では、前検航走後に石渡鉄兵もこもって調整。これも長い時間に及んだ。また、中野次郎と柳沢一が並んでゲージを当てている。時折会話を交わしているあたり、情報交換もあったことだろう。
整備室の隅に、臨時のペラ調整所も設けられている。ここは西山貴浩と仲谷颯仁がほぼ独占するかたちとなっていた。ふたりとも前検航走前からペラを叩き、終了後もまた叩いた。向かい合って座っている両者は、若松代表。西山は仲谷を公私ともにかわいがっている。お互いがお互いを鼓舞しながら戦う一節となることだろう。
さて、エース34号機を引いた中村亮太。通りすがりにOKサインを向けたら、亮太はOKサインを返してきた。さらに、右手の親指と人差し指で作ったマルに、左手の親指と人差し指で作ったマルを重ねた。さらにさらに! 右手の親指と人差し指で一回り大きなマルを作って重ねる。三重マル! そしてニヤリ。やはりめちゃくちゃ出ているのだ! 明日の1号艇はド人気だろうなあ。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)