準優組は非常に静かに準備を進めている。
なんかもう、その一言で原稿を終わらせたくなるくらい、特に大きな動きもなく、しかし着々とペラ調整などをこなし、静かな時を送っているのである。
整備室にただひとり、長田頼宗の姿があり、準優前の一発整備中か、と思いきや、特にそういうわけでもなさそうだった。長田のボートにはプロペラがついたモーターがしっかりと装着されていたのだ。どうも深い思索にふけっているようではあって、その後ボートのもとにやってきて、カウリングにもたれかかってじっと一点を見つめる姿があった。今日は天候が変わったので、それを含めて、調整の方向性を考えていたのだろう。
１Ｒ発売中には、魚谷智之が装着場に登場。ゆったりとプロペラを外し、落ち着いた足取りでペラ室に向かった。覗き込んでみると、準優組がずらり。茅原悠紀、笠原亮、毒島誠、平本真之といったあたりの顔が見えた。もちろん一般戦組もいて、ペラ室はなかなかの混雑ぶりだ。
まだ本格的な作業を始めていない準優組もいるようだった。たとえば菊地孝平は、２Ｒのエンジン吊りで初めて顔を見た。今日も実に余裕のある顔つきで、てきぱきと動いていた。今日は５日目。レースを終えた艇の洗浄作業もある。菊地は今村豊のグループに率先して参加。洗剤のついたスポンジを両手にもって、こしこしと汚れを落とす。動きは素早いが、雰囲気は落ち着き払っている。
準優組の何人かが着水準備を始めたのは、２Ｒ発売中。瓜生正義がその一人で、物静かにペラを装着していた。１艇置いて隣に同期の魚谷のボートがあり、魚谷も２Ｒ発走直前くらいにペラ室を出て装着を始めていたが、お互いに特別口も利かず、作業に没頭する。魚谷も静かに淡々と作業をしていたわけだ。ほかに毒島も魚谷とほぼ同じタイミングでペラを装着。こちらも黙々と手を動かしていた。
で、２Ｒが終わって瓜生らが水面に飛び出していくのかと思いきや、そうではなかった。カポックやヘルメットを用意してからになるのは当然でも、着水に移るまでには思いのほか時間がかかっている。ということもあって、３Ｒ発売中の早いタイミングでは装着場ががらーん。壁際に報道陣が連なっているのみという時間帯が出現したのだった。
今、これを書いている最中では、水面を走る準優組が何人もいる。２～３Ｒというのが、ちょうどアクティブな時間のスイッチを入れるタイミングだったわけだ。全員がドタバタせずに、粛々と仕事を進める。早い時間帯のその様子を僕はむしろポジティブなものと見たい。準優はそれぞれが力を出し切ってくれるだろう。
さて、今節は一味違うぞ、の西山貴浩。報道陣に相変わらず軽口をたたいたりして入るのだが、やはり今日も気合のようなものを感じる。僕に対してもなんかジョークを言ってきたので、それには返さず、「スイッチ、入ってるでしょ」と振ってみた。西山はニヤリと笑って「入ってます、入ってます」と認めた。ほら、やっぱり。今日の準優は勝負どころ。一味違う走りを期待しよう。（ＰＨＯＴＯ／中尾茂幸 池上一摩 ＴＥＸＴ／黒須田）
