BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

鳴門グラチャン準優ダイジェスト

 

スタートのチカラ

 

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10R

①赤岩善生(愛知) 14

②辻 栄蔵(広島) 23

③平田忠則(福岡) 19

④岡崎恭裕(福岡) 08

⑤谷村一哉(山口) 13

⑥田中信一郎(大阪)15

 

 4カド岡崎の目の覚めるようなまくり差しハンドルが、逃げる赤岩の内フトコロをえぐった。最大の勝因は、スタートだろう。ただひとりのコンマゼロ台。2・3コースが凹んだために、その破壊力がさらに倍増した。今節の岡崎のスタート力には目を瞠るものがものがある。2日目からコンマ09、06、08、05ときて、今日が08!! F持ちの身の上でこの快ショット連発は、鳴門水面でのスタート勘を完全に掴みきっているのか。はたまた、久々のSG制覇への気合と度胸のなせる業なのか。インの赤岩もほぼ全速の1艇身でスリットを通過したが、岡崎の踏み込みと不利なスリット隊形が相まって、2着をキープするのがやっとだった。

 

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 1着・岡崎、2着・赤岩。

 予想欄で岡崎の総合パワー評価をAとしたが、これは初日から変わっていない。ただ、前検~初日の「ストレート系が強い」という印象とは趣を異にしている。今日の足を勝手に分類すると「出足系統がA、行き足~伸びがB+、乗りやすそうな雰囲気がA+」というところか。ここまでスリットで踏み込めるのも、出足系統がしっかりしている証だろう。明日はセンター筋からどんなレースを目指すか、で調整の方向も変わりそうな気がする。自力で攻め切る(それでもまくり差し狙いか)ためには、できればもうひと伸びが欲しいところだろう。ただ、その不足分をカバーして余りあるだけのスタート力は、明日も内の選手にとっての大きな脅威になりそうだ。

 

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 2着の赤岩の足は、「すべての足が中堅上位くらいでまとまったバランス型で、ストレートがAに近い足」と勝手に評価している。優勝戦に入るとややパンチ力に乏しい気もするが、センター勢が仕事をしてくくれば連動して突き抜けるだけのパワーはあると思う。それに、初日(前検段階?)に電気一式を交換するなど、独自の整備スタイルを貫くのが赤岩だ。明日も豊富な引き出しを自在に開いて、「優勝戦5号艇仕様の“手術”」をする可能性もあるだろう。足色には十分の周囲を払いたい。

 

行き足のチカラ

 

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11R

①篠崎仁志(福岡)22

②峰 竜太(佐賀)18

③丸岡正典(大阪)16

④桐生順平(埼玉)16

⑤坪井康晴(静岡)15

⑥松井 繁(大阪)18

 

 驚くほどに素晴らしいターンだった。2コース峰のお株を奪うような、丸ちゃんのスピーディかつ鋭角なスーパーターン。まず、このターンが生まれた布石はやはりスタートか。ほぼ横一線に見えたスリットの中、インの仁志だけがわずかに凹んでいた。さらにスリットからすぐに伸び返す雰囲気のなかった仁志は、先マイを目指してかなり早めに初動を入れたように見えた。そして、早すぎたがゆえに、ほんのわずかだがハンドルを切り直したのが見て取れた。当然、そのインモンキーは横へ流れる。

「しめたっ、差せるっ!」

 2コースの峰は、そう思ったはずだ。峰もまた内に艇を寄せるのも、差しハンドルの初動を入れるのも早いように見えた。あるいは、インの仁志との一騎打ちだけを想定していたか。外の丸岡の動きをもう少しだけ警戒していれば、峰の2コース差しは明日の12Rへと向かったかもしれない。

 

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 嗚呼、それにしても、丸岡のターンは本当に見事だった。スリットから伸びなりに直進して内の2艇より半艇身ほど抜け出し、峰が動いた瞬間に外(と言うより上。写真でわかる通り、丸岡は内ふたりの動きを見下ろすように凝視している)から一気に艇を被せた。あまり見たことのない、垂直の強ツケマイ?? 一瞬にして峰を引き波にはめ、流れる仁志を2艇身ほど千切り捨てていた。チャンスと思った峰にとっては、晴天の霹靂のような奇襲に思えたかもしれない。

 

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 1着・丸岡、2着・仁志。

 前検で「久しぶりに爆発の予感!?」としてAランクに推した丸岡27号機。今節はその期待に応える活躍を見せているが、パワー的には不安定というか、日替わり定食のように変わっている印象がある。特に、ゴキゲンだったスリット付近の行き足~伸びが日に日に落ちていったような……私の勝手な推測(今節、ほぼまったく選手のコメントを読んでいないので、違ったらすいません)では、伸びよりも乗り心地を求めていたのでは? で、準優の今日は前検と同じような伸び主体の仕上げにしたのではないか。そして、その“作戦”が見事に当たって、あの上から叩きつけるような一撃必殺のスーパーターンが生まれたのではないか。うん、とにもかくにも今日の丸ちゃんのスリットからの行き足は格別だった。2号艇の明日は、どんな足を目指すのか、行き足~伸びがどうなるのか。同県の後輩への攻め方を脳裏に浮かべつつ、最終調整に向かうことだろう。

 

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 エース37号機を駆る仁志のパワーは……昨日あたりから伸びに迫力が付いた(展示タイムも秀逸)ものの、「やや後伸びではないか」という印象を抱いていた。今日も6秒69という時計をマークしつつ、スリットからすぐに伸び返していく勢いは感じなかった。先月までの37号機は、スロー起こしからでもスリット付近で俊敏に加速していたのだが(今節、何度同じ愚痴をこぼしただろう)。

 ただ、だとするならば、今日の2着で4号艇(ダッシュ想定)になったことは、「後伸びっぽい37号機にとって逆に大きな武器になるのでは?」などと思ったりもしている。怪我の功名ってヤツだな。明日も展示時計が抜群で後伸び気配だとしたら、私は迷わず舟券に絡めるだろう。頭にするかどうかはともかく、「4カドの37号機」は石野にとって危険な強敵になると確信している。

 

鋼鉄のチカラ

 

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12R

①石野貴之(大阪) 07

②茅原悠紀(岡山) 11

③下條雄太郎(長崎)05

④湯川浩司(大阪) 07

⑤白井英治(山口) 07

⑥原田幸哉(長崎) 07

 

 うーーーん、強い、強すぎる!って、最近、こればっかり書いてるな。昨日のイン戦もコンマ07で、今日も07。3コース下條のまくり差しを封じたのも一緒だし、勝ち時計も昨日が1分47秒3で今日が1分47秒4!! こと石野の航跡だけを追うなら、昨日のそれとぴったり重なりあうのではないか、と思ってしまう。それはイコール、何物にも動じない鉄の精神力ということなのだろう。まさに鉄人。うん、石野のレースについてはこれで十分だろう。ただただ強かった。

 

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 最後の最後にありえないことが起こったのが、2着争いだ。このポジションは、1周1マークから最終ターンマークまで茅原がガッチリと守りきっていた。準優では弱めの足だった茅原は、道中でもかなりふらふらした足色に見えた。逆転優出を狙う幸哉に絡まれ下條に食い下がられとターンマークごとに猛攻を食ったが、それでもしっかり凌いで安全圏に持ち込んだ、と思っていた。そう、一時は下條らを5艇身ほども突き放したのだ。それが……3周1マークの下條の全速マイで、その差は2艇身ほどになった。まだ茅原のスピードからすれば、セイフティーと言うべき差だ。が、バック直線でそのアドバンテージが徐々に削られてゆく。最終ターンマークの手前、茅原はおもむろにガバッと振り返って背後を見た。明らかに、下條の追撃を警戒(あるいは畏れ?)していた。下條の位置を確認し、それから最後のターンマークに向かったが、その旋回にいつものスピードはなかった。はるか前方の石野の引き波で少しバウンドし、減速している間に下條に並ぶ間もなく交わされていた。もちろん、最大の敗因はパワー負けなのだが、最後のターンだけは茅原悠紀のターンではなかった。これがSGの準優なのだ、と感じた。

 

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 1着・石野、2着・下條。

 石野28号については昨日も書いたし、今日も予想欄でチラホラ触れた。持論は変わっていないので、これ以上は書かない。

 下條だ! これは書かねばなるまい。昨日、私は石野28号の視点から「12Rはまくり差した下條雄太郎にやや詰め寄られ、バック中間から突き抜けるほどの迫力を感じさせなかった」と書いたのだが、どうやら訂正が必要なようだ。石野28号が頼りなかったのではなく、下條54号機のパワーが強烈だったのである。ある記者さんの話では、昨日のレース後に石野が下條に「めっちゃ出てるなぁ、やられるかと思った」ってなことを言ったとか。うん、今日のあの大逆転劇を見て、私はやっと一方通行の誤った視点に気づいた。気づかされた。

 

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昨日も今日も下條はB+なんかではなく、Sあたりの超抜パワーだったのだ。茅原がガバッと振り向き、いつものターンをし損なうほどの畏るべきパワーだったのだ。いや、それすらも、「2本の引き波をまったく苦にせず飛び越えて、茅原を並ぶ間もなく交わし去った」と言うべきか! 2連率29%の54号機のどこにそんなウルトラパワーが……今もまだ驚きつつ、遅ればせながら「明日の下條も絶対に軽視禁物!」とお伝えしておく。たとえ6号艇の6コースでも。(TEXT/畠山、PHOTOS/シギー中尾)