BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット@シリーズ――GPジャンパー

 

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 昨日、グランプリ初出場選手とグランプリジャンパー、みたいな話を書いたが、そのグランプリジャンパーを着ているのは、なにもベスト18戦士だけではない。グランプリ出場経験者はすでにそのジャンパーを手に入れているわけで、シリーズ組にもこれを着用している選手は何人も見かけるものである。たとえば辻栄蔵。惜しくも19位でグランプリ出場を逃した、ということは、最もグランプリ出場に近かった選手ということになる。18位と19位の差はほんの僅かであって、だから辻の姿はごくごく自然に映る。

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 チャレンジカップ開幕時点では18位以内だったのに、そのチャレンジにはF休みで出られず、シリーズ回りとなった坪井康晴も、GPジャンパー着用組だ。チャレンジに出ていれば逃げ込みは充分ありえたわけで、F休みは自らが招いた事態とはいえ、限りなくベスト18に近かったということもいえる。その状況などについても、思うところはいろいろあるだろう。

 シリーズに回ったらGPジャンパーは着ない、というこだわりのある選手もいるだろう。それは非常に理解できる。3年前のグランプリで初出場を果たした桐生順平が、トライアル1stで敗退すると3日目からは普通のSGジャンパーを着るようになった、ということがあった。BOATBoy1月号のインタビューによると「なんか着たくなかったんでしょうね」とのことだったが、そこにさまざまな感情が生じるのは当然だ。

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 一方で、たとえば今垣光太郎や山崎智也、池田浩二といったグランプリ常連組がGPジャンパーを着用するというのは、本人に聞いてみれば「いつも着てるから」程度の答えしか返ってこないだろうが、自分が本来いる場所というものを意識しているように思えてしまう。意地とプライド、というか。逆にGPジャンパーを着ないとするなら、それこそそこに何らかの意識があるわけで、着用しているという点に彼らの(無意識かもしれないが)グランプリへの強い思いを感じるのである。

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 昨年が初出場だった平本真之、昨年が6年ぶりのグランプリ復帰だった岡崎恭裕もGPジャンパー着用組だ。彼らはもちろん、今年の連続出場を誓って年頭を迎えたはずで、それがかなわなかった屈辱を強く感じているだろう。平本はチャレンジカップにも出られなかったから、落胆もかなり大きかっただろう。そうすると、平本と岡崎には、来年は絶対にグランプリへ、という思いが透けて見えるような気がする。まあ、これも本人たちは「特に意味はないっす」くらいの返答になるのだろうが、僕は勝手にそう思うわけである。

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 出場12人で、グランプリ出場選手は2日目からピットに張っていた時代(今のクイーンズクライマックスシステムですね)、その2日目にピットの空気はガラリ変わったものだった。それまでシリーズ組に向けられていた関心、あるいはカメラマンのレンズが、手のひらを返したようにグランプリ組に集中したのである。まるでシリーズ組を無視するかのように。自分のその一員ながら、けっこう残酷な光景だな、と思ったものだった。それについて、石野貴之は「それがよかったんじゃないですか。来年は自分があちらに、と強く思える」と語っていた。今は一斉に前検日にピットに入るので、その光景は過去のものとなったが、しかしGPジャンパーに何か意味を見出したくなった、という次第である。まあ、かなり深読みですけどね。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)