BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――実力者たち

 同世代の若者たちだけが集う新鋭王座。同期も多いし、年間を通して新鋭リーグで何度も顔を合わせている間柄だし、基本的には和気あいあい。しかし、やはり彼らは勝負師同士。レースはより激しくなるし、気合も入る。レース後に見られる感情の発露も、またストレートだったりする。  

 

 

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9R、平本真之が5着に敗れている。2~3番手争いに加わりながらも、2周1マークで桐生順平の突っ込みを受けて後退。絶対的主役と目されていたはずの平本だが、ここまでは流れに乗れているとは言い切れず、それを象徴するようなツキのない展開になってしまった。得点率も27位だ。 

チャーリー池上の目撃談によると、レース直後の平本はやや感情をあらわにしており、桐生に対して異議を唱える瞬間もあったという。すわ、トラブル!? 

いや、そうではない。

二人の間に遺恨が生まれたというわけでは断じてない。なぜならその後、二人で仲良さそうに語り合う姿も見かけているからだ。突っ込まれて着を落とせば悔しさや腹立たしさが生まれるのも当然で、それを隠すことができなかったのかといえば、それはちょっと微妙。そうとも言えるし、そうでない可能性だってある。 

かつて聞いたことがある。突っ込まれて敗れたとき、選手は別に腹が立っていなくとも、あえて突っ込んできた相手に異議を唱えるのだということを。いや、そうしなければならない、だったか。

なぜなら、もし何も言わずに許してしまったら、相手は「この人は突っ込んでも怒らない」と舐めてかかることになる。

またやられるかもしれないのだ。

だが、一言怒鳴ったりしておけば、相手は警戒する。この人を怒らせたらやばいと思うだろうし、萎縮してしまうこともあるかもしれない。いわゆる盤外戦なのだ。 

もちろん、あの好青年の平本のこと、桐生に対して怒鳴ったわけではないようだし、だからなおさらあえて一言異議を唱えたのかどうかは微妙なところだが、しかし礼儀正しく穏やかで、他人に気遣いばかりしているような平本が、激情を見せたのは確かである。

胸の内に秘めるものはグラグラと燃えたぎっている男ではあるが、それがあらわになったのであれば、むしろ好ましいことではないかと思うのだ。

というわけで、チャーリーの話を聞いて平本の様子を見に行ったら、いつもどおりに穏やかで、水神祭を果たした末永由楽を祝福したりしていた。あと、先述の桐生とのやり取りも。

あらら、ご馳走のようなシーンを見逃しちゃったか。

明日はやや厳しい条件の勝負駆けだが、ハートに火がついているのは間違いなさそうな平本が、全身全霊の戦いを見せてくれるであろうことは間違いない。

 

 

 一方で、なんだかわりと飄々として見える若武者もいたりするから面白い。

 

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まずは10Rを逃げ切った西村拓也。3年前のびわこ新鋭王座から彼のことを見ていて(一昨年は出場していないが)、もうお馴染みの選手であるはずなのに、彼のことをあまり書いた記憶がない。

こういうタイプはSGにもいて、ピットではあまり派手な動きを見せるわけではないので、どうしても他に目を奪われてしまいがちになるのだ。均等に扱えよとおっしゃるかもしれないが、ハナから誰のことを書こうと決め打ちしてピットに入るわけではないので……って、言い訳してるわけですが、ともあれ、決して派手とは言えない実力者なのである。

 10R後も、ことさらに歓喜を示すわけでもなし。ヘルメットを取っても、淡々とした表情があらわれるのみだ(こういうとき、派手に悔しがってる選手を目にすると、そっちに意識がいくわけです……言い訳その2)。ただし、今日ばかりは、ここまでもうひとつ突き抜けきれないレースが続いていただけに、安堵する気持ちはあったのではないかと推察する次第だ

JLCの勝利者インタビューを待つ間に、ということは、レース終了からは少し時間は経過しているわけだけれども、たしかに笑顔が見えたからだ。それが実に心に引っかかって、ようやく彼のことをここに記した次第。3日目を終えて予選11位。

ドリーム組では、茅原悠紀に次ぐ成績だ。明日からは当然、いやでも注目したくなる存在である。

 

 

 

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で、3日目を終えて予選1位はドリーム戦1号艇だった茅原悠紀。2位の永田秀二が8・00、茅原は9・20だから、後続を突き放したトップと言ってもいいだろう。よほどのことがない限り、準優で(優勝戦も?)白いカポックを着ているのは間違いないような気がする。

 とはいえ、茅原からそうした高揚感というのはあまり伝わってこない。飄々とも淡々とも違うのだが、しかし浮かれた様子が少しも見当たらないのだ。10Rを2着で終えたあと、モーター格納のためにピットに姿をあらわしたのは、11R発走も迫ったころだったが、そこに堂々たるシリーズリーダーがいるという空気を強烈に発散させるでもなく、しかし力強い足取りで、整備室へと向かう姿には静かだからこその迫力があった。 

トップで4日目を迎える者、ボーダー内で迎える者、勝負駆けで迎える者(西山貴浩もそうです)と、ドリーム組は決して全員が順調というわけではない芦屋新鋭王座(賞典除外が二人もいるのか……)。

この混戦模様が、発展途上の若武者バトルの醍醐味であり、象徴か。現時点での18位以内には、伏兵と目された選手たちも多数名を連ねている。彼らが波乱を巻き起こしつつ、現在の位置をキープしていくのか。それとも実力者たちが意地を見せて伏兵陣を蹴落としていくのか。実に面白い予選ロードになったと思う。

予選最終日、平本が持ち前の笑顔を見せるのか。西村や茅原が感情を爆発させる場面があるのか。それ以上に目立つ動きを見せてくれる伏兵陣がいるのか。ウキウキとしながら、明日もピットに入ろう。

 

 さて、最後は水神祭ラッシュを! 今日は2Rの末永祐輝、4Rの岩瀬裕亮、8Rの濱本優一、9Rの末永由楽の4本であった。傑作は、本日のトリとなった濱本ですかな。

 

 

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まずは末永祐輝! 前沢丈史(右)、池永太(右から3人目)と、集まってるメンツがなんか謎だな。もちろん、先輩の柳生泰二はいるけど。

100%男が水面に突き刺さる……。

続いては岩瀬裕亮! 登番がもっとも若い男が、初1着とはすごい。

末永とは対照的な投げられ方。このムーンサルトは武藤敬司を超えたな……。

 

 

 

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つづいては、F→1着と1日で天国と地獄を味わった末永由楽。あ、今日はダブル末永がともに水神祭か。

今日という日を笑顔で終われて良かったっすね!

そして、なぜか井上大輔が落とされちゃった! 完全に油断していたところを突き落されてなすすべもなく。ポケットにはタバコも入ったままだったようです。突き落した犯人は、某ジャニーズの人と同姓同名の人です。

 

 

 

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最後は濱本優一。………………………って、これでやるの!? 青木玄太がひとりで投げ込む?

近畿勢は遠巻きに眺めるのみ。濱本「投げてぇや」鶴本「大丈夫、ここで拍手してやるから」濱本「マジ?」

激しく横回転しながら水中へ。これは水神祭の新スタイルだ! 濱本優一、君がその第一号だ!

 

(PHOTO/中尾茂幸=平本、西村、茅原 チャーリー池上=水神祭 TEXT/黒須田)

 

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