BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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新鋭王座TOPICS 4日目

平本が、西山が……

 

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 今日も、ドリーム組のV候補ふたりが、芦屋水面に散った。 まずは7R、2走で16点が必要だった平本真之が、5号艇のピットアウトから気合のイン強奪。100mを切る深めの起こしから抜群のトップSを決めたかに見えたが……

なんとなんと、+コンマ06!!の半端ない勇み足。バック直線、超抜・深谷知博とのデッドヒートも空しく、スッと艇を引いてピットへと帰還していった。06のはみ出しは驚きだが、機力不足を気力で補おうとしたことは間違いない。

SG常連の意地と「96期のプライド」が、平本の背中を激しく押した。果敢なイン奪取も、このフライングも、ベクトルの方向はまったく同じ。今節、平本は負けられない思いを孤独に背負い、孤独に散った。そんな気がする。

 

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 続く8Rのスタート展示で、今度は西山貴浩がインを奪ってみせた。西山には地元エースの意地がある。前半でよもやの5着に敗れ、準優に残された道は1着のみ。

 もちろん、西山は本番も動いた。が、内2艇の抵抗にあって、3コースまで。ならば!

 2コースを1艇身千切り捨てるトップスタートから、ド迫力のまくり差しを繰り出した。決まった。完璧なまくり差しに見えた。

 が、先マイした渡邉和将の艇に舳先がかかりそうで、かからない。バック中間で、逆に渡邉がスッと伸びた。突き放された。昨日までの西山の伸びがあれば、この光景は大きく変わっていただろう。今日の西山は、伸び足を捨てて、イン戦も想定した出足型にシフトした。この足の差を見て、私はそう思った。西山の1着獲りの“ギャンブル”はターンの出口まで成功し、直線で失敗に終わったのだ。

 死力と秘策を尽くした末、ふたりのV候補が消えた。前検日のモーター抽選で、西山は明らかに平本を強く意識していた。今節の主役は、平本と俺。そんな気持ちが、言葉の端々から感じられた。

だが、準優を待たずに平本が消え、主役の座を譲り受ける間もなく、西山もV戦線から去っていった。

 

 

 

 

唯一のモンスター

 

 ドリーム組が次々と脱落する中、恐ろしく順調にポイントを稼ぎ続ける男あり。ブッチギリの予選トップをひた走る、茅原悠紀。もう2日目あたりから、「誰が茅原に鈴を付けに行くのか」というムードが漂っていた。  

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今日、アンチ独裁政権に名乗りを挙げたのが、前沢丈史と深谷知博だ。どちらもピンピン2連勝。10Rの前沢は「2着間違いなし」というポジションから、先頭の水摩敦を捕えきった。凄まじい回り足で、準優1号艇を決めてしまった。

 

 

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 一方の深谷は、12Rで茅原との直接対決に臨んだ。そして、インからきっちりと先マイを決めた。このまま逃げきれば準優1号艇になるが、あくまでも予選3位通過。1位の茅原と2位の前沢も大差で、茅原が6着にならない限りトップ当選となる。

その茅原の1マークは、非常に危ういものだった。強引にまくりに行って3コースの若林将にブロックされ、窮屈な空間に差しハンドルを入れるしかなかった。艇が上下左右にバウンドする間に、6コースの藤田靖弘が最内を突き抜けた。

1-6をそれなりに厚く買っていた私は、狂喜乱舞した。人気の茅原が飛び、1-6-2態勢で130倍!! 勝手にそう決めつけていた。

 

 

 

 

 だがっ!!!!!

 

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 1-6-2隊形の死角というか、2号艇の外側に、なんだかもう1艇がへばり付いていた。青いカポック。1マークで揉まれに揉まれたはずの茅原が、なぜかそこにいた。

ただ、私はちゃんと1-6-4も買っている。130倍がちょうど半分の65倍になるが、関サバを食うくらいの儲けは約束される。

でも、できれば1-6-2のほうが…… そこで思考が停止した。背筋を氷水が走り抜けた。2マーク、断然優位だった藤田の内に、茅原の舳先がズッポリと突き刺さっている。

藤田は、前検から私が節イチ候補に推奨してきたレーサーである。本当は茅原が上?とか思いつつ「そんなに大差はないさ」とお茶を濁していたのだが、眼前で私の見立ては完全に否定された。2マークで藤田が握りすぎた、という点を考慮しても、この逆転はパワー差抜きには語れない。2艇があっと言う間に並び、交わされ、突き放された。

 そして……茅原は、大差の先頭をひた走る深谷の首根っこを捕まえに行った。相手はハナから藤田ではなく、先頭の深谷だった、そんなド迫力の追い上げだった。藤田は、はるか彼方へ…… 

結局は逃げきった深谷だが、彼もまた背筋に冷たい物を感じたのではないか。鈴を付けに行った鼠が、逆に猫に追い回されている。そんな光景だった。どっちが勝者? 私はちょっと眩暈を感じた。

 レースが終わって、予定調和の準優1号艇レーサーが決まった。前沢の回り足も、深谷のバランスも上等だが、ひとりだけ別次元の怪物がいる。 切り札を破り捨てられた私は、もう、それを否定することはできない。

 

 

 

今日の水摩クン

 

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 水摩敦が、散った。前半3Rは絶好の4カドから、今日もスタート負け。3コースに先手を奪われ、らしくない2番差しを強いられた。

が、そこから頑張って頑張って、同県の先輩・奈須啓太を競り潰して2着入選。わずかながら準優への希望を残した。

 迎えた後半10R、3コース水摩はコンマ11とそれなりのスタートを決め、渾身のまくり差し。これが見事に突き刺さる。1着なら5・50の20位、奇跡の準優入りもありえる割り差しだった。が……2艇身差で追いすがる前沢丈史の足が、ヤバい。ターンマークごとにじりじりじりじり水摩の艇尾ににじり寄り、ついに2周2マークで舳先を突っ込んでしまった。3周1マーク、水摩は開き直りの強ツケマイを放ったが、真横に流れて万事休す。5・17で予選を終えた。まぁ、結果論で言うなら、5・50でも19位次点ではありました。

 

 

 

 

 

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 勝負どころのスタートは不甲斐なかったけれど、2着2着と意地は見せてくれた水摩クン。とにもかくにも、お疲れさん!! もっちろん、明日からもアタマ決め撃ちで応援するどーーー!

 

(Photos/中尾茂幸、text/H)