BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

多摩川女子王座 準優ダイジェスト

女王の誇り

 

10R 進入順

①横西奏恵(徳島)03

④日高逸子(福岡)02

②宇野弥生(愛知)08

③中里優子(埼玉)07

⑤三浦永理(静岡)06

⑥水口由紀(京都)06

 

 

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横西、日高。歴代女王コンビが、他を圧倒した。

まあ、横西奏恵の逃げは「当然」の一語で片付けていいだろう。

コンマ03まで踏み込み、男子レーサー顔負けの

光速インモンキーで押しきった。 

観衆を唸らせたのは、日高逸子の勝負根性だ。

進入であれよあれよの2コース奪取。

行く気満々の前付けなら、宇野や中里が抵抗したかもしれない。

日高はごくごく普通に艇を流しつつ、

そのままスーーーーッと音もなく2マークを超えて舳先を傾けた。

百戦錬磨の呼吸、円熟の芸。枠なりを決め込んでいた

宇野弥生と中里優子は、なす術なくコースを追いやられた。

 

 

 

 

 

 

 

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そして、日高のスタートは……臨界点をも恐れぬコンマ02!! 

スタート展示は4カドだったのに、

スローの2コースでも怯むことなく突っ込んだ。

23年前、2代目女王に君臨した女傑の心意気、

グレートマザーとなった現在も色褪せることなし。

トップSから焦らず騒がず、日高は横西を先に行かせて

静かに差しハンドルを入れた。動と静、

準優の尊さと走り方を知り尽くした、心憎いばかりの1分間だった。

 

 

 

 

 

 

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3着に敗れた宇野も、死力を尽くした。

1マークは日高が落とした瞬間に、豪快な握りマイ。

これが日高に届いたかに見えたが、

今日の多摩川・追い風水面はまくりがまったく利かない。

さらに、日高の出足が昨日までとは一変していた。

今日になって本体を割った整備が、功を奏したのだろう。

外から迫る宇野と三浦を、強烈なレース足が一喝した。

 

 

 

 

 

 

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それでも、宇野は諦めない。日高と三浦が艇を並べた2周ホーム、

宇野は3艇身ほど後方の4番手だった。

宇野の勝負手は、大きくふたつ。

2艇の競りに期待して外に振り、全速差しを狙う。

さらに過激なのは、自ら1マークに突っ込んで先マイを狙う。

宇野は、迷わず後者を選んだ。真っ直ぐブイに向かって、

日高へのダンプを試みた。これを日高がギリギリ交わして

大逆転にはならなかったが、男顔負けの勝負ターンだった。

今節、もっとも男前なレースを魅せ続けてきた宇野は、

準優でも観衆を大いに沸かせた。 

ただ、宇野が日高よりも優勢だったのは、この道中だけなのだ。

日高はエンジン整備、待機行動、スタート、1マーク……

すべてにおいて、若い宇野を凌駕した。準備段階から、

心で25歳を圧倒していたのだ。宇野は、まだ足りなかった。

いや、それは言いすぎだろうか。今日は、相手が素晴らしすぎた。

グレートマザーが、グレートすぎた。

 

 

 

 

節イチの証明

 

 

11R

①池田明美(静岡) 07

②永井聖美(愛知) 05

③香川素子(京都) 10

④向井美鈴(山口) 11

⑤片岡恵理(山口) 11

⑥海野ゆかり(広島)11

 

 

 

 

 

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49号機があまりに噴きすぎて、スタート勘を見誤るのでは? 

などと不安視していたのだが、それは杞憂だった。

コンマ07の絶品スタート。こうなっては、

コンマ05トップSの永井聖美でも叩ききれない。

池田明美がシャープに伸び返して1マークを制圧した。

 

 

 

 

 

 

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もちろん、2コース永井は差しハンドル。

日高と同じような隊形から同じような差しに見えたが、

こちらは引き波でバウンドした。レース足が足りなかったか。

池田の先マイを待って待って、減速しすぎたか。

代わって、3コースの香川素子のまくり差しがしっかり伸びた。

1-3だ。この舟券を持っていた私は、ちょっと安堵した。

大した金額ではないけれど、明日への弾みになる。

 

 

 

 

 

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が、バック後半の香川の足が、どうにも頼りない。

明美の引き波を避けて、内に艇を寄せている間に、

はるか後方にいたはずの向井美鈴がぐんぐん追い上げてくる。

香川はさらに内へ内へと艇を寄せて、向井を絞りはじめた。

明らかな変調ムードだ。向井が艇を外に開いた。

マイシロのないまま2マークを先取りした香川に、

スッと差しハンドルを入れた。

それだけで、3艇身ほど香川を置き去りにしてしまった。

何がどうなってこうなったのか……

私にはさっぱりわからない逆転劇だった。

香川のモーター(かペラ)に

何らかの変調があったのかもしれないが、

明日は人気の盲点になるだけに向井の回り足は要注意だ。 

とにかく、節イチ候補(おそらく間違いない)49号機を駆る

池田明美の強さだけが際立つレースだった。

 

 

チェックメイト

 

 

12R

 

①田口節子(岡山)  11

②山下友貴(静岡) 09

③細川裕子(愛知) 10

④藤崎小百合(鹿児島)12

⑤武藤綾子(福岡) 15

⑥佐々木裕美(山口) 15

 

 

 

 

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3コース細川裕子のツケマイ気味のまくりは、

10Rの宇野よりはるかに峻烈だった。これで届かなきゃ、

誰が届く?という強襲だった。

が、それでも逃げる田口節子の影を踏むのがやっと。

これが、12R1号艇=シリーズリーダーの強さなのだ。

ターンスピードは横西奏恵と双璧で、

出足中心にパワーも十分。

イン戦で怖いのはスタートの凹凸だけで、

揃ってしまえば誰も鈴を付けられない。

 

 

 

 

 

 

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それを、証明してみせた。完璧な“予行演習”だった。

連覇への、最終リハーサル。 

もう、これ以上このレースに関して書くべきことが見当たらない。

私は田口の一人旅をぼんやり眺めつつ、

ボー誌の女子バンM記者が何年も前から公言している

データを反芻していた。

「偶数年イン逃げ決着の法則」というデータを。

 

 

99年 まくり

00年 逃げ

01年 まくり

02年 逃げ

03年 まくり

04年 逃げ

05年 まくり

06年 逃げ

07年 抜き

08年 逃げ

09年 まくり差し

10年 逃げ

11年 まくり差し

 

 

 

 

 

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実に、13年連続で<逃げ-逃げ以外>のテレコが続いている。

2012年の今年は……書くまでもないだろう。

そして、その確勝の指定席を主張できるレーサーは、田口節子だ。

優勝へ、連覇へのチェックメイト。

今日の完璧なリハーサルを終えて、もはや王手ではなく、

即詰みの形まで生まれてしまったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

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ただ、ルーレットでも赤黒赤黒のテレコが

何十回も続くことがあるが、その法則はいつか必ず崩れるときがくる。法則どおりに買うか、あえて流れに逆らうか。

今晩の酒の肴は、白か、白以外か。これに尽きる。

 

(Photos/中尾茂幸、text/H)