BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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笹川賞・準優勝戦ダイジェスト

“ミスター新ペラ”圧倒!

 

10R

①坪井康晴(静岡)  06

②湯川浩司(大阪)  08

③峰 竜太(佐賀)  11

④重成一人(香川)  07

⑤佐々木康幸(静岡)  08

⑥笠原 亮(静岡 10

 

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 一瞬、讃岐の勝負師・重成一人が、4カドから飛び出したように見えた。が、今節の重成がそれを実現するには、行き足~伸びが重すぎた。行き足強烈な坪井康晴と湯川浩司がぐんぐん伸び返して、ダッシュ勢の脅威を完全に打ち消す。坪井が先マイ、湯川の差し。

 1-2で決まりか!?

 

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 と思ったところ、3コースの峰竜太がツケマイ気味に湯川に襲い掛かった。外から引き波を浴びた湯川の艇が、たまらん、という体で流れる。全速マイの峰が、湯川を置き去りにした。が、その峰をさらに一方的に置き去りにしたのが、新プロペラ制度になって3戦3Vの坪井だった。どれだけ相性がいいのか、“ミスター新ペラ制度”は今日もスタートから1マークから、文句なしのパワー&テクニックを見せつけた。

 1着・坪井、2着・峰。

 

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※坪井の足は、井口よりも上。パワー比較だけでいうなら、今節のVモーターだ。予選トップ通過だったら、9割がた優勝できただろう。が、明日は3号艇。スリット~1マークで、この節イチパワーをすべて引き出せるかどうか、がすべてだ。

 

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 峰はバランスのとれた上位級。今日も追いすがる重成以下を、危なげなく退けてバランスの良さを証明した。ただ、突出した部分はなく、明らかに坪井や井川には劣る。明日はカドまくりの自力Vにこだわるより、坪井マークで展開を突くなどの臨機応変な心構えで臨んでほしい。

 

驚くべき逆転

 

11R

①渡邉英児(静岡)  18

②瓜生正義(福岡)  09

③石渡鉄兵(千葉)  10

④菊地孝平(静岡)  12

⑤今垣光太郎(石川) 19

⑥山口 剛(広島)  20

 

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 スタート展示は146523。今垣光太郎が凄まじいピット離れで内を攻め潰すわ、さらにその外から山口剛と菊地孝平が全速で今垣を追い抜いて行くわで、もうしっちゃかめっちゃか。記者席でこの光景を見た私は、眼下の観衆のどよめきにシンクロした。「本番もヤバイかも??」とわくわくしながらスタンドに向かったものだ。

 

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 が、いざ本番は、今垣のピット出も普通、菊地、山口も動く気配だけで、ごくごく穏やかな枠なり進入に。まぁ、よくあることで、スタンドのファンも「やっぱりね」という表情で2マーク方向を見ていた。また今日も「スタート展示がなければなぁ」としみじみ思う。

 実戦で観衆が沸いたのは、スリットを過ぎた瞬間だ。2コース瓜生正義が、インの渡邉英児を半艇身以上も出し抜いている。

「瓜生だ!」

「瓜生じゃーー!!」

 誰もが同じような言葉を発した。もちろん、2コースの瓜生は直まくりに行った。じりじり絞って、渡邉をツケマイで沈める態勢に。かつての持ちペラ制度で、好調時の瓜生の足なら難なく決まっていただろう。

 

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 が、その態勢から、絶体絶命の渡邉が息を吹き返す。瓜生を撥ねつけるようにして伸び返し、窮屈ながらも先マイを実現させた。決めきれなかった瓜生は、やむなく差しに構えた。こんな場合、インは流れ、2コースは差し遅れて、ズブズブに差されることが多い。

 が、渡邉自慢の回り足は、流れるどころか前へ前へと加速していく。瞬く間に一人旅。「くるくる回る、回り足の英児」は、今節も今日も絶好調だ。2番手は混戦で、併走する瓜生と菊地に外から石渡鉄兵、内から山口がじわじわ迫る。2マーク、全速マイで一歩抜け出しのは、瓜生だった。1艇身差の外に菊地。他の2艇は、完全に千切れた。こうなれば、相手が誰であっても負けないのが瓜生だ。2周1マーク、完璧なターンで菊地を置き去りにした。その差、4艇身ほど。さらに縦長になるべく、瓜生が2周2マークを回る。かなり遅れて、菊地がもはや差しとも言えないハンドルを入れる。

 

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 再びスタンドがどよめいたのが、スリット付近に差し掛かったあたりだ。菊地の舳先が、瓜生を捕えようとしていた。歓声と悲鳴。どちらの叫びにも「信じられない!!」という驚きの色が混じっていた。正確には、まだ菊地の舳先は入ってはいない。が、彼我の勢いが、そうなることを約束している。ここでも瓜生は、まずは握って攻め潰そうした。が、そうする間にも、グイグイと菊地の舳先が食い込んでいる。瓜生が諦めて、差しに構えた。1周1マークとよく似た光景。菊地の先マイに、瓜生が千切れた。

「うわーーーーーーっ!!」

 比喩ではなく、このまんまの声をあちこちで聞いた。その後に続くべき「まさか瓜生が……」という声なき声まで聞こえた気がした。瓜生のモーターは、GW開催で坪井がオール2連対で優勝した評判機だ。それをそのまま引き継いだ瓜生が、なぜ?? 理由はまったくわからないが、とにかく瓜生は明らかなパワー負けでV戦線から消え去った。 

 

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 渡邉のパワーはすでに書いたとおり、くるくる回る回り足~すぐに加速して行く出足(レース足)が節イチ級。選手の特性にフィットしているだけに、武器としての価値も高い。2号艇なら、もちろん決め差し。井口を凌ぐターン回りで、舳先をねじ込むシーンも十分にありえる。

 

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 菊地はバランス型で、どの足もトップ級に及ばない。瓜生を逆転したシーンは圧巻ではあったが、あれをもって「抜群」とするのは早計だと思う。重要な伸びも含めて、今日の足が今節でいちばん良かったのは間違いなさそうだが。

 

闘魂・田村

 

12R

①井口佳典(三重)18

②桐生順平(埼玉)18

③横沢剛治(静岡)24

④魚谷智之(兵庫)24

⑤西山貴浩(福岡)14

⑥田村隆信(徳島)17

 

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 待機行動で田村隆信が動いたが、西山貴浩がガッチリとブロックして枠なりに。こうなれば、楽イン井口の圧勝かと思いきや、波乱を想起させるスリットになった。3、4コースが凹んで、5コース西山貴浩がトップS。勢い、西山は一気に絞りはじめた。ここで西山にもうひと伸びのパワーがあれば、井口まで攻め潰せたかもしれない。

 

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 が、わずかに舳先を残した魚谷智之が、絞られながらもジリジリ伸び返した。レースの行方は、この舳先を抜けきるかどうかに託された。さらに絞る西山、舳先半分で耐える魚谷。抜けきれなかった。西山~魚谷~横澤~桐生まで、玉突き状に接触する。この余波が及ぶ前に、井口は1マークを旋回していた。間一髪は言いすぎだが、井口にとっても楽な先マイではなかった。まぁ、西山の一気まくりよりはマシだけど。

 

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 1マークを回って、井口の優勝戦1号艇がほぼ確定した。凄絶を極めたのが、2着争いだ。玉突きから立て直した桐生順平と魚谷、さらに大外からまくり差した田村が、団子になって2マークに向かった。この先は……まさに死闘。特に目を奪われたのが、田村のハッスルぶりだ。

 

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 まず、2マークでは、全速のまくり差しで2艇の間を突き抜けた。それでも内から追いすがる魚谷には、2周1マークで全速の強ツケマイを浴びせた。またまた抵抗する魚谷。いわゆる大競りになり、外に開いた桐生が注文どおりのズボ差しを決めた。彼方にぶん流れた田村は置き去りに……桐生とは4、5艇身ほども千切られたのだが、それでも諦めない。

 

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 2周2マークの手前、大外からターンマークまで真っ直ぐ向かいはじめた。一気に桐生と魚谷の内に切り込み、この3艇での先マイを狙ったのである。あれほどの大差からこれほど気迫のこもった突進、なかなかお目にかかれないぞ(VTR必見!!)。惜しくもこの奇襲は不発に終わったが、闘魂・田村の心意気、胸にぐぐぐっと響いた。

 

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 1着・井口、2着・桐生。

 井口は初日から豪快な伸びが売りだったが、ここ2日はやや落ち気味か。1号艇での連勝を見据えて、出足型にシフトしているのかも。いずれにしろ、全体のパワーでは坪井が上だと思う。伸びでも負ける。明日のコースの利を生かして、坪井の攻撃を封じる展開になるだろう。

 

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 桐生の足は……まだよくわかっていない。今節はコンマ01の気合S勝ちだったり、今日のようなごっつぁん差しだったり、度胸と運のが多分に介在している。明日、いちばん注目したいのは、まだまだ未知数の桐生パワーだ。

(Photos/中尾茂幸、text/H)