本日も水神祭! 9Rの東本勝利だ。
昨日は転覆でずぶ濡れになった東本だったが、
今日はSG初1着で嬉しいずぶ濡れである。
原田篤志と同様にピットにアナウンスが響き、
10R終了後に多くの選手を集めて行なわれた水神祭。
そのおかげで、ある選手が憂き目にあってしまうわけだが……。
水神祭に参加したのは、
東海勢と同期の86期勢。もちろん井口佳典が中心となって
儀式は執り行なわれたわけだが、最前列を受け持ったのは
平本真之だった。地区の最若手が隊形の要となったわけだ。
東本がえいやっと持ち上げられると、
その輪の最後尾に不穏な男が近づく。
しれっとした顔をして、明らかに何かをたくらんでいるような顔の
森高一真だ。井口らの掛け声で、東本を水面に放り投げると、
森高はその勢いに乗じて陸に残った選手たちの背中を
思い切り押した! 急に後方から圧力がかかって、
バランスを崩す選手たち! さらにしれっとした顔をして
報道陣の陰に隠れる森高! そして、あぁ……
水中に落ちてしまった平本真之……。
で、もちろん主役は東本で、
すでに暗くなった水面にずぶ濡れの笑顔が輝いていた。
JLCのカメラに囲まれるのを眺めながら待ち続けていた井口と、
満面の笑みでハイタッチ! そして、抱擁!
ま、ずぶ濡れ東本と抱き合うのを井口は相当に躊躇していたようではありましたが。直後には、10Rに出走していたため
水神祭には参加できなかった池田浩二が、仁王立ちで
「勝利、来い!」。
東本は池田に猛然と駆け寄り、抱擁! 池田もやっぱり「あ、ずぶ濡れじゃん。やめときゃよかった」てな顔をしてましたが(笑)、東本をがっしと抱き留めて、美しいハグの光景を作り出していたのであった。 東本選手、おめでとう! これを機に、さらなる躍進を!
さて、元気いっぱい、今村豊。
今節もピットでは笑顔を振りまき、周囲の笑いを誘ったりしている。
今日は、トゲトゲのついたピンクのボールを手に、あたりにちょっかいを出しまくっていた。
これが何かと言うと、頭や顔にすりつけて、ツボを刺激する道具。
ただ、このトゲが実に鋭利で、
しかも硬質プラスチックでできているから、かなり痛い。
今村は、通りすがりの選手などを「ツボ刺激してやる」かなんか言って呼び止め、おもむろに頭にこすりつけて、大喜びしていた。
もちろんやられた選手は「ギャーッ!」と悲鳴。
それを見て、今村は大笑いしているわけである。
犠牲になった選手は、たとえば峰竜太。10R前あたりにレースの準備を終えて控室へと向かっているところを呼び止められ、トゲボールでぐりぐりぐり。「うわーっ!」と大声をあげて、よろめきながら控室へと消えていくのだった。
田口節子も犠牲者の一人。整備室前で
突然トゲピンクを頭にこすり付けられ、「キャーッ!」。
ピットに女性の悲鳴とは、知らずに聞いた人なら事件でも起こったかと錯覚しそうだ。節ちゃんも頭を押さえてよろめいており、
「いったーい……」と泣き顔に。今村さん、女の子いじめちゃダメでしょ!
で、最大の標的となったのは西山貴浩。そりゃニッシーニャだよなあ、その役割は。
通りすがりにトゲピンク攻撃を受けた西山は、
まず「うおーっ!」と悲鳴。さらに今村は西山を追いかけて、
ヘッドロックで固定した頭に、思い切りグリグリグリグリ!
「うがっ! うごっ!」と断末魔の喘ぎのごとき声をあげて
なんとか逃げ出した西山は、その後もしばらく頭をさすりながら
「いってぇ」とつぶやいていたのだった。
その後も今村は西山をつけ狙い、逃げ場を失った西山は
僕を盾にして、背中に隠れたのだった。それを見た川上剛、
「やばい、血が出る……」。ええ、ええ、そりゃ、ハゲですからね、
あたしゃ。地肌に直接トゲピンクされたら、もう、痛いのなんのって……。 そう、実は西山の前に、私も犠牲になっていたのでありました。今村さんのもとにわけもわからず連れて行かれた私。
今村は満面の笑みで出迎え、嬉しそうにトゲピンクをぐりぐり。
それを見ていた記者さんたちも大笑いで、
ミスターにいじられた私はすっかりご満悦。
でも、やっぱりハゲにぐりぐりはやばいと思ったのか、
なんとなく攻撃が優しいように感じましたよ。う~ん、一生の思い出です!
そんな和やかなピットだが、もちろんここは勝負の場。
凛々しい勝負師の顔もたくさん見かけるのは当然のことだ。
11R前、出走待機室の外で、原田幸哉が座り込んでいた。桐生の待機室は出走ピットの奥で、水面に向かって座ればホームストレッチをはるか見晴るかす格好となる。
原田はじっと前方に目を向けており、風を見ているのか、
それとも1マークの展開をシミュレーションしているのか。
やがて、原田は首をうなだれて、じっと目をつむって
身じろぎもしなくなった。脳内コンピュータをフル回転させている?
それとも原田なりの精神統一か。
09年チャレンジカップ優勝戦の直前、
原田に声をかけられて20分ほども話し込んだことがある。
優勝戦1号艇の選手のリラックスぶりにおおいに驚かされたものだ。
レース直前でも、まるでピリピリとすることなく、
普通に雑談を交わせる肝っ玉。それが原田幸哉だと思っていた。
だが、今日の幸哉の姿は少しばかり違っていた。
自分の世界に没入し、他の風景や雑音をシャットアウトするかのような姿。もしかしたら、幸哉はまたひとつ脱皮して、
強さを増したのかもしれない。
で、幸哉が待機室に入ると、入れ替わるように佐々木康幸が
同じ場所に座り込んで、水面をじっと眺め入った。
その場所は、闘志を注入するのに最高の場所なのかもしれないな。
最後に、前半で転覆を喫した中野次郎が途中帰郷となった。
今年はどうも波に乗れずにここまで来てしまった次郎だが、
ついには無念のリタイア。これで厄を落としたのだと吹っ切って、
今年の終盤は力強いレースを見せてください!
(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩=水神祭 TEXT/黒須田)