午後2時過ぎ、記者の数も増え、ピットが最も活気づく時間帯の装着場中央で、瓜生正義と魚谷智之の76期コンビが笑って何かを話し合っていた。SGとしては日常的な光景のはずだが、ピット取材の機会が減っていることもあり、なんだかなつかしく感じた。
その後、試運転から帰ってきた平田忠則が、100万ドルの笑顔をふりまきながら、「これだけ試運転を重ねると腰が痛いです」と言って、現状のアシの具合を瓜生に報告していた。そんな場面を見ていると、SGのピットは、瓜生を中心に回っているようにも感じられる。
その後の8R。
松井繁と池田浩二という艇界の看板選手が揃ったレースで、後藤翔之のまくり差しが決まっても、それほどピット内は湧かなかった。意外なようにも感じられたが、この落ち着きがSGピットだといえば、そうかもしれない。選手にはあまり関係ないが、3連単は68,260円である。
別記事にもUPされているように、これで後藤は水神祭だ。
エンジン吊りも水神祭も瓜生が手伝っていたが、瓜生いわく「都民だから」とのこと。福岡支部の絶対エースであっても、現在は東京を生活拠点にしているので、東京支部の選手たちもフォローしているわけだ。
原田幸哉は、このレースで3着だった新田雄史に「ユーシーーー」と言ってボディブローを見舞おうとしていたが、そんな原田がいることでもピット内の空気は変わる。
弟子の柳沢一に対して、いかにも師匠としての顔をして指導しているところも見かけられたが、とにかくいろいろな顔をみせてくれるのが原田の楽しいところだ。
ストレスに悩む(?)という、あるキャスターに対しては「ギャバ(=アミノ酸の一種)がいいよ」とアドバイスしていた。76期はやはり素敵な期である。
続く9Rでは滝川真由子が勝ち、こちらも水神祭だ! それでもやはりピット内はほとんど湧かなかった。
「先ほどはおめでとうございました」「覚えてますか?」と声をかけ、一緒にレースを見ていた後藤が、「水神祭ですか?」と僕に聞いてきた。他の選手の記録などは細かく把握していないのも自然なことだろう(ちなみに後藤には09年にインタビューしているが、僕のことを覚えてくれているようだった。嬉しい)。
滝川の水神祭は、後藤のときよりも賑やかな気がした。それも選手心理というか男性心理のようなものなのだろうか。
水神祭のときには滝川を祝福していた川野芽唯が、レース直後には悔しそう表情を見せていたことには好感が持てた。
6号艇で同じレースを走って3着だったが、滝川に負けたというよりも、自分のレースに納得できないところがあったのだろう。こういう選手は強くなる。
強くなるというのは賞金女王に対して失礼にあたるだろうか。早ければ明日にでも、水神祭が見られるかもしれない。
「前日版」を見ると、明日の川野は9R1号艇の一回乗り。これは楽しみだ。見逃せない。
(PHOTO/池上一摩 TEXT/内池)