賞金女王決定戦出場選手たちのボート12艇が、
装着場にずらりと並べられていた光景は圧巻だった。
ただ、1R前の時点では12選手たちは整備室の中にいて、
モーターのチェックをしていたので、昨日までと比べて、
それほどの変化は感じられなかった。
その時間からペラ小屋ではすでに20人近い
シリーズ出場選手たちが作業をしていた。
最初に目に入ったのは佐々木裕美だ。
少し怖いくらいに真剣な表情となりプロペラと向かい合っていた。
そんな顔つきの彼女はまた美しい。
1Rが始まると、選手たちはやはり、レース観戦の特等席といえる
アリーナに何人か出てくる。 そこで気になったのは池田浩美だ。
装着場では“12ボート”と並んで、彼女のボートが並べられていた。
10Rの一回乗りなので、やりたい作業を落ち着いてやれる立場と
いえる。 アリーナでは最初、岩崎芳美と肩を並べて、
まるでアベックのようだなというムードで腰をかけていた。
すると中里優子がやってきて、私も入れて、
というように無言でベンチの狭いところに腰かけた。
そういう場面が見られるのもアリーナの楽しみだ。
その1R。アリーナの目の前となる2マークで
大瀧明日香が転覆してしまい、選手たちからは悲鳴があがった。
池田浩美も心配げにそちらを見ていたが、一拍おいて、
小さく拍手した。おそらくそれは、その転覆に茶谷桜が巻き込まれず、うまくかわして大事にいたらなかったからなのだろう。
大瀧と茶谷は83期の同期。呼吸を合わせて
それができたのかもしれない。それを読み取り、
小さく拍手をする池田浩美は素敵なひとである。
減点こそあったものの、大瀧は無事だったようで、
すぐにピット内を駆けていくところが見られたので、
ひと安心だ(写真は昨日のもの)。 また、昨日の記事では、
今節は「永井聖美とのツーショットは見られないかも」と書いていた
茶谷だが、今日の1R後、整備室内の“絨毯スペース”で
永井と並んでプロペラ調整をやっていた。
2人とも無言で、それぞれの作業に集中していた。
同期で仲が良く、一緒にいることが多いといっても、
基本的にはそうなのだ。
1Rが終わったあと、エンジン吊りのために、
整備室から飛びだしてきたのは、“決定戦出場選手”の宇野弥生だ。 その後には日高逸子らも続いて出てきたが、
エンジン吊りなどの作業に関しては、決定戦もシリーズも関係ない。
そうして普通に仲間たちの作業を手伝っていくことになる。
エンジン吊りのあとに池田明美が、宇野が縛っていた後ろ髪の
ぼんぼりを「さわさわ」と触っていたが、
それも一種のエールなのかもしれない。
言葉などはなくても伝えられるものはある。
その後、決定戦出場選手たちは装着場のボートに
モーターを取り付けての作業に移行していったが、
そこでもまた、少しずつ交流は生まれてくる。
最初に装着場での作業を始めていた平山智加のそばを通る際、
目だけで激励の気持ちを伝えたのは高橋淳美だ。
そうすると平山も笑みを浮かべて、ぺこりと頭を下げる。
もちろん、直接、言葉を交わしあう選手たちもその後には
増えていったが、そういう場面が見られるのも、
この「特別な2日目」の楽しみといえるだろう。
2R前、決定戦出場選手たちが装着場にほぼ出揃い、
作業を始めたころ、空気がぴんと張りつめた。
(PHOTO/中尾茂幸+内池=ラストの1枚のみ TEXT/内池)