BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――帰らない!

 10Rが終わってピットに向かおうとすると、池上カメラマンが「もう選手、あんまりいないんじゃないっすか」と言う。なんでだよっ! と恫喝すると、「だって、1便で帰る選手がいるでしょ」。なるほど。多くの場では、帰宿に1便、2便(場によっては3便)まであって、たいがい10Rが終わると1便が宿舎へと出発する。

 でも、バスで宿舎に帰る場はそのケースが多いけど、丸亀は宿舎へは徒歩移動。こういう場では、全レース終了後に全員揃って帰るところと、バスと同様1便2便に分かれるところの2種類がある。丸亀って、1便あったっけ? 3年ぶりのSG取材だけに、記憶が曖昧だ。

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 ともあれ、ピットに急ごうと記者席を駆け出る。幸い、今節の記者席はピットに至近の場所にあるので、あっという間にピット着だ。ちょうど10Rのエンジン吊りが終わったところで、濱野谷憲吾がふーっと息を吐き出す場面に遭遇。1号艇を活かせて、ほっと一息といったところか。ざっと見渡したところ、選手の数は大量で、まだ帰宿した選手はいないようだった。

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 こちらもほっと一息。ふーっと息を吐き出したら、げっ、王者とすれ違った。展示準備のために係留所に降りていくところ。レースが近づいた時間帯の王者は、やっぱりド迫力である。

 そうこうしているうちに、アナウンスがピットに響いた。「1便で帰る選手は集合してください」。やっぱり1便、あったか! 池上、ナイス助言。帰っちゃったから後半のピットでは姿を見かけませんでした、の事態は避けられた。やがて、管理の係の方の姿が見えて、ようやく思い出す。選手たちはピットを突っ切って、奥にある出入り口から宿舎に向かうのだった。だから、1便組は作業している選手や報道陣の前を、列をなして通過するのである。この光景は、たしかに以前見た記憶があった。

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 で、山崎智也&川北浩貴の71期コンビを先頭に、1便組が颯爽とあらわれた。仲良し智也&川北は、談笑しながら粛々と歩を進める。その後ろには服部幸男と菊地孝平の静岡コンビ。

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服部は帰宿のときでも、哲人の表情ですな。ピットにいる間は仕事中、ということだろうか。石橋道友、深川真二、峰竜太ら、福岡以外の九州勢もいる(赤坂俊輔がいたかどうかはメモし切れなかった)。

 

 

 

 

 

 

 

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石渡鉄兵も断固たる表情で続いているぞ。おっと長髪の萩原秀人に中島孝平の福井コンビも。あとはあとは……えっ、これだけ!? 1便、少なっ! もっとたくさんの選手が帰ると思っていたため、メモを取るのが遅れたため、はっきり確認できていない選手もいるのだが、後姿を数えると、1便組は11人。4分の1以下、である。11、12R組の12人が残るのは当然だが、普段はもっと多くの選手が1便で帰っているのだ。感覚としては、半分は1便組、である。それが今日はたったの11人。

 そう、それだけ整備、調整作業のためにピットに居残った選手が多かったのである。

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 たとえば、1R1回乗りの齊藤仁も最後まで残った。まあ、これはいつものことか。仁ちゃんが1便で帰ることのほうを見たことがない気がする。3R1回乗りの池永太が残ったのは、若手だから? いや、池永は整備を続けてもいて、11R発売中にギアケース調整をしている姿を見かけている。6R1回乗りだから、作業を切り上げて鉄兵先輩とともに帰ってもおかしくなかった中野次郎も、遅くまでペラと向き合い、正解を探し出そうと奮闘していた。

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 そういえば、平石和男も残っていたな。しかも乗艇着でもある迷彩服を着替えることなく、だった。桐生順平のドリーム戦を見届けようってところだろうか。

 

 

 

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山川美由紀も、整備の手を止めることなく、作業に没頭。10R出走の烏野賢太は、急いで着替えや片づけを済ませれば1便に間に合ったと思われるが、悠然とペラ室に向かう姿が。時間いっぱい使って、調整をしようという心づもりのようだった。1便には通常、ベテランの姿が多く見られるのが普通だが、今日は彼らもとことんピットに留まった(烏野は通常でも最後まで残ってる姿をよく見るが)。「誰もができる限り整備調整を続けたい」、そんな空気を象徴しているのがベテラン勢の動きだったかもしれない。

 

 とまあ、ずいぶんと文字を費やしていろいろ記したが、ようするにいつまで経っても整備室、ペラ調整所には選手の姿が絶えることはなかった、ということだ。それほどまでにみな、調整に必死だったのである。前半記事で書いたような理由もあって、気がかりな部分を感じ取った選手がそれだけ多くいたということだろう。むしろペラ室の人数が減るほうが整備室より早いほどであって、モーターと向き合う選手が多かったようにも感じた。

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 赤岩善生はいつもどおりの妥協なき整備をしていたし、それを優しく見守る仲口博崇という構図もあった。抜群機を引き当てた前田将太も、なんだかんだと調整していたし、先述のとおり池永太もギアケース調整に余念がなかった。

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 選手の間を徘徊する茅原悠紀、という光景もあった。徘徊していた、は失礼か。マグネットを手に、鉄くず集めをしていたのだ。いわゆる新兵仕事で、登番が下から3番目の茅原の任務である。仕事に精を出しながら、平本真之ら世代が近い先輩と笑顔で言葉を交わしたりもしていて、ハツラツとした様子は微笑ましいものであった。

 

 

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 で、そうしたなかに先述した王者や池田浩二、桐生順平といったドリーム組が緊張感を漂わせながら存在していて(瓜生正義は実に淡々としていましたが)、その空気感に背筋が伸びる。そんなこんなで、初日終盤のピットはなんとも濃密な空気が漂っていて、それはそれでなかなか心地がいいものだったのだ。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)