BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

桐生・新鋭王座TOPICS 初日

翼ポッキリ

 

f:id:boatrace-g-report:20171207163909j:plain

 去年のリベンジに燃えていた翼が、初日の桐生の水底に沈んだ。

 2R、2号艇の好枠を得た佐藤翼は、コンマ08でスリットを通過した。翼の自力をもってすれば、大崩れの考えにくい隊形だった。が、すぐ外から埋伏の兵が襲い掛かる。同じ105期の菅章哉。ワースト級のパワーを自覚する菅は、「1マークの一撃決着しかない」と意を決していたのだろう。鬼気迫るツケマイを、同期の翼に浴びせた。

 

f:id:boatrace-g-report:20171207163940j:plain

 そして、翼は張った。張ったというより、張り飛ばした。ツケマイを打った時点ですでにバランスを崩していた菅は、簡単に転んだ。同期に引導を渡した翼自身も、もんどり打つように倒れた。艇尾から、ゆっくりと舟が落ちてゆく。沈没、失格。選手責任はもちろん、不良航法の罰則も喰って一気にマイナス12点。予選を突破するには、残り5戦=ほぼオール1着という法外な成績が必要になった。

f:id:boatrace-g-report:20171207163955j:plain

 3時間40分後、それは訪れる。崖っぷちの状況に気づいているであろう翼は、9R、5コースからトップスタートで攻めた。渾身のまくり。が、4コースの後藤翔之に舟を合わせられ、はるか彼方に流れ去ってしまう。この瞬間、翼の新鋭王座での“1000倍返し”リベンジVは、事実上消滅した。まさかまさかの、初日9Rで……。本人もさぞや悔しいだろうが、明日からまた前を向いてほしい。持って生まれた彼の巨大な両翼は、新鋭王座を勝つためだけに存在するものではない。来年のヤングダービーで、そして向こう数十年に連なるSG戦線で、思う存分に羽ばたけばいい。

f:id:boatrace-g-report:20171207164004j:plain

 嗚呼、それにしても、華々しいまでの同期大競り。11Rでも、我々はそれを目の当たりにした。福岡100期の松尾昂明が4カドから絞りまくり、福岡100期の松崎祐太郎がインから豪快に張り飛ばした(松崎にマイナス7点)。泣く子も黙る同県同期の大競り。かつて、準優で松尾VS桐生も凄絶な大競りをやらかしたし、「100期競り」はもはや新鋭王座名物に認定してもいいだろう(今年で最後だけど)。張られた松尾はたいそうご立腹だったらしいが、私個人としては、同期も同県もない仁義なきガチンコ競りは大好物だとお伝えしておく。血の気の多い若いモンは、やっぱこうでなきゃ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三十路の決意

 

f:id:boatrace-g-report:20171207164027j:plain

 自称「オッサンレーサー」谷川祐一31歳、違いのわかる男の逆転差し。

 ダバダーーーー♪ってな感じの、いぶし銀の差しハンドルだったな。翼の折れた9R、3コースの谷川は人知れずまくり差しを打っていた。一瞬突き抜けるかに見えたが、艇が浮いて3番手に後退。内から渡邉俊介、外から末永祐輝に挟み撃ちにされる、息苦しい展開になってしまった。が、そこは人生経験の差?? 2マークの手前で慌てず騒がず舳先をすっと抜き、両サイドが握るのを尻目に絶妙の逆転差しを決めたのだった。

「すでに来年のヤングダービーの権利がない男ですから」

 今節、何度か聞いたセリフが、また勝利者インタビューでも飛び出した。そうなのだよ、27歳の佐藤翼よりも“後輩”の106期なのに、ヤングダービー=30歳未満という年齢制限でお払い箱なのである。だから、谷川はこう続ける。

「今年で最後なんで、思いっきり暴れるつもりです」

f:id:boatrace-g-report:20171207164052j:plain

 今日の逆転差し300メガトンパンチは、まだまだ軽いジャブのようなもの。足はかなりいい部類だと思うので、外枠でも人生経験の滲み出るようなハンドル捌きでスタンドをあっと言わせてくれるだろう。谷川祐一、31歳。日々年々自力を付けてA1目前というレベルに達したが、私は佐藤翼にするような楽観的な未来図をここでは書きはしない。今後、さらにスキルアップして記念の常連レーサーになるかも知れないし、今回の新鋭王座が記念Vの最後のチャンスなのかも知れない。谷川自身もその未来図は瑶として計り知れないものだろう。

 だからこそ、一期一会の走り。31歳にしか魅せることのできない新鋭王座のファイナルランを、最終日まで楽しませてもらおう。本人に届くわけじゃないけど、随所にこの欄でも応援するつもりだ。

f:id:boatrace-g-report:20171207164101j:plain

 それから、もうひとり。小坂宗司32歳、違いのわかる男のF2……つーか、F2&事故パンの身で桐生にやってきたのが非常に残念だが、今日はスタートから道中から、それなりに“レース”になっていた。ほぼ同じ境遇だった去年の末永由楽より、はるかにレースをしようという意志が感じられた(今年の由楽も去年とは別人です!)。で、桐生名物の半周ラップからしても、小坂33号機のパワーは間違いなく上位級でもある。つまり、「F2・事故パンなら這いまくりだろ、666のオーメンセットだろ、1銭もいらねーや」なんて思ってると、どこかで10万メガトン級の大爆発をやらかす可能性があるのだ。ここで宣言しておくが、私は小坂の出るレースは必ず舟券に絡めます!

 とにもかくにも三十路の新鋭王座ラストバトル、悔いなきように頑張れーーー!! あ、106期の谷川&小坂は、来年以降も新鋭リーグに参戦するんだけど、ね(笑)。

(photos/シギー中尾、text/畠山)