BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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平和島ダービーTOPICS 3日目

良い山口、悪い山口

 

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 こぼれ話。昨日、山口達也が2連勝を飾った瞬間、ピットのモニターで観戦していた山口剛がこう呟いたそうな。

「うん、あれは、良い山口ですからね~」

 ってことは、ツヨポン、お前は悪い山口なのかーーー!!??

 はい、確かに優等生じゃありませんわね。今日の4Rの直接対決でも、“白山口”=達也と“黒山口”=剛が色濃く反映された。勝ったのは、5コースの白山口。コンマ09のトップスタートから強引にまくり気味に握って、最後の最後で割り差しのハンドルを突き刺した。教科書に図解入りで載せたいくらいの、美しいまくり差しだ。

 

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 これで、昨日から差して、まくって(決まり手は「抜き」)、まくり差しての3連勝。明日の12Rで逃げきれば、もちろん準優1号艇=白カポックが約束される。5・6号艇の瓜生正義の結果次第では、予選トップも十分にありえるだろう(12Rは直接対決だ!)。昨日は半信半疑で書いたものだが、本当に白山口が『新王者、生まれる。』のキャッチコピーを現実のものにするかも知れないぞ~。

 

 

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 一方、今日の4R3コースの黒山口は……白山口に軽々と頭を叩かれて、バック3番手。が、このまますんなり3着確保に専心する男ではない。1周2マーク、突進気味の切り返しで、さらに前を攻めに行った。この強気一辺倒の得意技が、2番手・吉村正明を弾き飛ばしてしまう。もはやSGでは“お約束”とも言うべき不良航法、マイナス7点……。やはり今日もブラック山口の烙印を押されてしまった。

 だがしかし、悪い山口は凄まじい武器を持っている。不屈の勝負根性。減点で勝負駆けになった11R、ツヨポンは全身に気迫を漲らせてインの王者・松井繁に立ち向かった。3コースから強ツケマイ。惜しくも届かない。その差は1艇身。王者の外に付けたまま、1周2マーク。再び全速の強ツケマイ。王者の艇が引き波でわずかに揺れ、黒山口は一気に先頭まで突き抜けた。王者を力でねじ伏せてしまった。

 

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 勝負掛かれば掛かるほど、この男は命懸けで敵に襲い掛かる。スリットでも臨界点まで突っ込む。だから、事故も多い。反感を抱くファンも多々いるかもしれない。今日も1号艇の吉村&松井で勝負したファンは「山口ィ、何してくれるんじゃーー!!」と叫んだことだろう。それでいい、と私は思う。賛否が入り乱れてこそのブラック・ツヨポン。何度か書いてきたが、今日も書こう。全身全霊、身体を張ってひとつでも上の着順を目指し続ける黒山口を、私は常に支持し続ける。今節で例えるなら、良い山口と悪い山口がいるからこそ、スリリングで面白いのだ。

 予選トップ勝負駆けの白山口と、ボーダー勝負駆けの黒山口。明日のふたりの明暗は、どうなることだろう。

 

 

 

 

 

 

瓜生ストッパー

 

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 闘志がはっきり水面に投影される選手は、もちろんツヨポンだけではない。田村隆信と桐生順平。このふたりも、「超・闘魂レーサー」として艇界の10本指に入るだろう。だからして、今日の12Rは実に楽しみなカードだった。1号艇が田村、3号艇が桐生、そして4号艇に怪物級の伸びを誇る瓜生正義がいるのだ。

 こりゃ、一筋縄で行くわけがないな。

 出走表を見ての第一勘であり、それから様々な妄想が膨らんだ。まずは、4カドから伸びる瓜生を、カド受けの桐生が必死にブロックする光景だ。私の脳内では、それが掛け合い漫才のようになった。

瓜生「瓜生でーす♪」

桐生「桐生でーす♪」

ふたり「ふたり合わせて、瓜生桐生でーす♫」

瓜生「艇を合わせたらあかんがな。ブッ飛んでまうやろ。わしが勝手に伸びきるまで待っときーー」

桐生「なんでやね~ん」

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 ドンッと瓜生の艇をドツイて、2艇が消波装置へと流れ去っていく。つまり大競りの妄想なのだが、桐生の気性なら十分にありえると私は踏んでいた。さらに、瓜生が桐生の頭を超えたとしても、インには阿波の闘魂ボーイが控えているのだ。さしもの瓜生でも、この2大山脈を超えるのは至難の業だろう。そう考えていた。

 いざ本番、ドツキ漫才にはならなかったが、やはり、瓜生の動きを牽制しながら、桐生が先に動いた。凄まじい強ツケマイを田村に浴びせた。さらに、最内からスルスルと瓜生が伸びる。展示タイム6秒40という往年のアワカツ級の伸び足で、田村の内に舳先を突っ込む。「ならん!!」とその舳先に艇を当て、田村がまた抜け出す。ところが、また内からスルスルと瓜生が伸びる。2艇がもつれて2マークに向かう間、桐生はその間隙を狙っている。瓜生を強引に叩き潰した田村と、機敏に差した桐生が舳先を並べる。スリットから2マークまでの一連の攻防は、実に迫力のあるものだった。やはり、ふたりの闘魂プレーが瓜生の4連勝を阻止したのだ。

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 そして……ふたりの闘魂プレーはまだ続く。一歩も譲らず舳先を並べたまま迎えた、2周2マーク。外の桐生が例によって、恐ろしく早い初動から田村に強ツケマイを浴びせに行った。今節、何度も目にした桐生ならではの奇襲戦法だ。が、こんな変則ターン(やがては主流になるかも??)が、100%の確率で成功するわけもない。ターンの途中、サイドが妙な塩梅で掛かってしまって、桐生は大きくバランスを崩した。身体が外に飛び出し、片手だけでなんとか落水を防ぎきった。これまた、凄まじい根性だ。失速している間に、桐生は瓜生と作間に抜かれた。必死に作間を追い上げたが、惜しくも届かなかった。この猛追も、見どころ十分だったなぁ。

 結局は1-4-5という人気サイドで決着したこのレース。怪物パワーと闘志むき出しの人間がガチで戦う神話の如き3艇の姿は、配当をはるかに凌ぐスリリングな名勝負だった。(photos/シギー中尾、text/畠山)