「嬉しい~~~っ」
1Rで逃げ切った篠崎仁志が、笑顔を押さえきれない。ひたすらニコニコと顔をほころばせ、敗れた山口達也も思わず頬がゆるむ。素直に歓喜をあらわにする篠崎を見て、江口もニコニコっ。優しく仁志を祝福していた。仁志はさらに笑みを深めてペコリ。若者が上気しているのを見ると、やっぱり気持ちいいですなあ。
喜びはなお止まらない。2R、装着場に設置されているモニターを見上げていると、仁志がやってきた。
「ぃやったぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
唸るように言って、拳を握る。本当はかける言葉に困るのですよ。この1着でも予選突破はほぼ絶望。そんな仁志に、おめでとうと言っていいのかどうかわからない。でも、仁志はめっちゃ喜んでいる。でも、おめでとうでいいんだろうか……。よかったね、が無難なところだろうか。
「6が3つ並んでたから、もぉぅ、嬉しい~~~」
いやあ、かわいいですなあ。元志も意外とこんなところがあったりするが、こんなふうに無邪気に喜んだりはしないわけで、イケメンで強い兄弟の違いが感じられて、また楽しい。あと2日、またその笑顔を見せてね!
エンジン吊りに向かおうとする平石和男が、整備室から出てきたのを見かけた。本体整備か。平石と本体整備、というのはなんとなくミスマッチ。整備室にいるイメージがまったくないのだ。常にプロペラ調整を主体にしている、という印象があるんだけど。
調べてみた。やはり、だった。過去1年間、部品交換はたったの2回。ともに一般戦でのことだから、SGで見たことがないのは道理なのだ。その平石が、本体を外して整備をしている。異常事態とも言えるし、ペラだけでは御し切れない不安があるということだろう。表情はそれほど暗くはないが、ここまでの這っている成績に不満があって当たり前。すでに予選突破は絶望的であるが、このままで終わらせるつもりはないのだろう。
で、そのすぐ近くで、桐生順平がゲージ擦りをしていた。埼玉勢の明暗くっきり、という感じだが、なにしろ桐生は3日目終了時点で予選トップである。足色にも余裕があるだろうし、レースに臨めば「平石さんの分まで」という思いもあるだろう。
というわけで、今日の埼玉勢に応援ヨロシク!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)