BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――勝っても弾けず

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 1~8Rまでインが8連勝。「イン強すぎっ!」「勘弁してくれよ~」「まさか12連勝!?」などという声がちらほら聞こえてきたところで、9R、インが敗れた。撃破したのは、井口佳典だ。4カドからの激まくり。内3艇をなで斬りにし、同期の田村隆信を沈めてしまった。

 

 

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 レース後、井口はまず5号艇の松井繁のもとに歩み寄って、一礼。井口は松井を尊敬し、目標としており、その王者の目の前でカドまくりを決めたのだから、感慨深いものがあっただろう。松井が井口に声をかけると、井口の目がすーっと細くなる。充実感あふれる顔つきだ。松井は井口のまくりに乗って2着に入っており、展開を作れたことも喜びとなっていたか。いずれにしても、今日もっとも印象に残る勝ち方をしてみせたのだから、井口としてはしてやったりだ。それでも、その後はぐっと表情を引き締めて、次へと目を向けていたのだから、明日からはさらに期待がもてるというものだ。

 

 

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 もうひとつ、印象に残った場面といえば、なんといっても8R、峰竜太の3カドだろう。4号艇ながらピット離れでやや遅れた山口達也を叩いて3コースを獲ると、果敢にもカドに引いた! 記者室の隣の席で見ていた長嶺豊さんも声をあげていたし、もちろん僕もうぉーっとか唸っていた。もうそれだけで、価値がある。

「でも、情けないレースしちゃって……」

 峰はそう言った。そう、峰がとった戦法は3カドから二番差し、なのだ。3カドということは当然、まくる気マンマンだったのだろう。見ているほうもそれを期待する。インが反応してきたとしても、豪快にまくり差し。それが3カドに対するイメージだ。ところが、峰は差した2コースの吉田俊彦のさらに内を差した。結果2着とオール2連対キープだが、峰としては「情けないレース」ということになる。

 

 

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 攻め切れなかった理由はひとつ。「スタートがぜんぜんわからなかったんですよ」。さよう、多くの選手が証言している。3カドはスタートが難しいのだと。起こしの目印になるものが遠くに見えて、位置が定まらない。しかも最近ではめったに3カドは出現しないから、選手自身が慣れていない。本人も戦前に3カドは想定していなかったから(スタート展示は4コース)なおタイミングがつかめない。それでもコンマ13のスタートを決めているのだからたいしたもんだが、おそらく全速ではなかった分、攻められなかったというわけだ。

 だが、ナイスチャレンジでしょう! そう言うと、峰はちょっとだけ頬を緩めたが、それでも完全には納得できない様子。ならばこれを糧として、明日は思い切りのいいレースを見せてもらおう。2号艇だから差し濃厚かもしれないが、強烈な一撃を一丁!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩=井口2枚目 TEXT/黒須田)