生き残ったふたり
9R 並び順
①瓜生正義(福岡)16
⑥江口晃生(群馬)17
⑤松井 繁(大阪)19
②守田俊介(滋賀)13
③中岡正彦(香川)F+01
④中澤和志(埼玉)16
ある意味、大波乱だ。5カド中岡がコンマ01だけハミ出した痛恨フライング……レース展開そのものも、Fの煽りをモロに受けてしまった。
アクシデントの布石は、待機行動中に芽生えたか。スタート展示は【126/345】で内3艇だけが極端に深い90m起こし。艇を引いた中岡にとっては、スリット同体からでもまくりきれそうな絶好の4カドだった。
だがしかし、いざ本番はまったく景色が違った。江口のオラオラ前付けに、一度は身を引いた松井がスーーッと追随して3コース侵入。逆にスタ展で突っ張った守田が身を引き、【165・2/34】という変則隊形ができあがった。4カドから5カドへ、しかもカド受けの守田がたっぷりの助走となれば、中岡の心に熱いものが増幅する。自力で攻めるにはもっと早く、もっと前へ……そんな気持ちの逸りが、わずか数十センチだけ舳先を前に押し出した気がしてならない。
一方、他の5艇は中岡よりほぼピッタリ1艇身遅れの横並びだからして、赤い暴走モードを止めようもない。人気のイン瓜生はじめ内の3艇はあっという間に引き波に呑まれ、さらに松井×守田が激しく接触している間に、ブッチギリの③-④隊形が出来上がった。あくまでフェイクの隊形だが。
バック中間で中岡の欠場が宣告され、ここからは2番手だった中澤のひとり旅。もちろん、展開一本のマーク差し~「恵まれ」での1着浮上ではあったが、運も実力のうち。6コースから1等を取りきった流れは、明日の大一番でも中澤の背中を押すパワーになるだろう。ただでさえ相棒の29号機が背中を押してくれるのだから。
準優としてとても重要な2着争いは、まくられながらも内水域でしぶとく残した瓜生が命からがら生き残った。地元の大エースにとって準優2着=最低限のノルマではあるが、あの展開では盤上この一手の最善手と言えるだろう。ただ、相棒7号機の現状のパワーは、優勝戦に入るとかなり劣勢と見ているのだがどうか。
一騎討ちのパワー差
10R
①濱野谷憲吾(東京)16
②魚谷智之(兵庫) 15
③吉川元浩(兵庫) 12
④平尾崇典(岡山) 16
⑤林 美憲(徳島) 16
⑥原田幸哉(長崎) 09
4カドの平尾42号機がどこまで伸びるか、どこまで内3艇を攻め潰せるか。それがこのレースの最大の焦点、と見ていたのは私だけではないだろう。強いホーム追い風と安定板、そんな逆境にもメゲずに4カドから突出する。伸びフェチの私はそんな淡い夢を見ていたのだが、スリット隊形で涙を呑んだ。
カド受けの元浩が1/4艇身ほど突出し、完璧なまでの防御網を敷いたから。そこからの伸び足はさすがに平尾が圧倒して見えたが、まくりきるだけの余力はない。少しだけ舳先を突き出してから、平尾は頭を垂れるように二番差しに構えた。
こうなってしまっては内寄り決着。あっという間にインから逃げる憲吾vs一番差し魚谷のマッチレースができあがる。2艇は周回ごとにずんずんと後続艇を引き離し、「ふたりの世界」とも呼ぶべき濃密なランデブー態勢に突入だ(笑)。
つまり、準優として明確すぎるワンツー決着だったわけだが、明らかにパワー上位に見えた人機は逃げる憲吾51号機ではなく、追っかける魚谷52号機だった。このレースを観た方なら、誰もがそうと分かるほどの差。たとえば、ふたりの立ち位置が真逆だったら、両者の間隔がどんどん開いていくのではないか。そう思わせるほど、魚谷52号機のレース足は力強かった。
リハーサル完了!
11R
①井口佳典(三重) 15
②今垣光太郎(福井)12
③赤岩善生(愛知) 11
④柴田 光(群馬) 04
⑤後藤正宗(静岡) 04
⑥山本隆幸(兵庫) 01
盤石の本命決着。スリットラインはダッシュ勢が突出して見えたのに、いざ1マークを回ったらそう表現するしかない銀行レースだった。スタートで劣勢だった内2艇が伸び返すわ伸び返すわ!
↑上記のタイミングが嘘のように、1マークのはるか手前で6艇の舳先はぴったり横並び。そして、そこから内2艇の舳先だけがにょきっと飛び出していた。枠よし足よし地力よし。こうなってしまうと、外の攻撃はまったく届かない。ダッシュ勢も渾身のターンで内2艇ににじり寄ったが、その矢は一本も届くことなくバック直線で水を開けられた。
うーーーん、実力もパワーもあるふたりが難なく勝ち上がったので、さらに書くべきことは少ないな。10Rの濱野谷vs魚谷のようなパワー比較をしたくても、井口⇔今垣の差がじわじわ順当に開いて行った感じで「レース足の差はほとんどないか、井口のほうか少しだけ上」という見え方だった。
さてさて、2日連続で11Rを逃げきった井口のアドバンテージはあまりにも大きい。つまりは「3戦連続メインレース逃げ圧勝」という必勝形に持ち込んだ気もするのだが、老婆心として気になる点もある。明日はここ2日間より気候が穏やかになり、安定板が外れる可能性が高い。そうなると、怖いライバルである3号艇の中澤29号機や5号艇の魚谷52号機のパンチ力が増幅しやすい。
おそらく、イン戦の井口40号機よりも、ライバルたちの上り幅の方がはるかにでかい気がしてならないのだ。まあ、そのあたりは明日の特訓やスタート展示などでしっかりチェックするとしよう。もちろん、6号艇・今垣の待機行動についても。(photos/シギー中尾、text/畠山)