BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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準優ダイジェスト

 

スリットの勝利

 

9R 進入順

①山口 剛(広島)17

②赤岩善生(愛知)16

③三角哲男(東京)22

⑥鎌田 義(兵庫)38

④寺田 祥(山口)15

⑤齊藤 仁(東京)22

 

 

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 ホームは追い風でも、ツヨポンにとっては逆風のスリット隊形になってしまった。演出したのはカマギーだ。ゴリゴリ前付けして4コースを選択し、ドカッと遅れた。5カドに引いた寺ショー(カマギーが来たら、ハナからダッシュに行くつもりだったらしい)にとって、これほど美味しい隊形はない。1艇身のスタートから全速のままカマギー、三角の頭を軽々超え、伸びなりにインのツヨポンまで攻め潰した。今日の勝利はパワー勝ちというより、明らかに展開の勝利。スタート展示の寺ショーには、昨日までの迫力はなかった。本人も「しっかり合ってなかった」と吐露しているが、スタート同体だったらまくりきれなかっただろう。明日は12Rの環境にどれだけしっかり合わせきれるか。それがSG初Vへの分岐点になりそうだ。

 

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 2着は大ベテランの三角。素晴らしい粘り腰で後輩たちの追撃を退けた。くるくる小さく旋回できる回り足と、出口からシュッと押して行く足がいい。出足型の仕上がりで、明日はどこまで展開を突けるか、というレースになるだろう。自力で他の5艇を攻め潰す足ではない。コースに頓着するタイプではないが、一世一代の前付けに……ないだろうなぁ。とにもかくにも19年ぶりのSG優出、おめでとさんです!

 1着・寺田、2着・三角

 

王手!

 

10R

①谷村一哉(山口)09

②辻 栄蔵(広島)14

③田村隆信(徳島)11

④桐生順平(埼玉)11

⑤吉川元浩(兵庫)11

⑥石渡鉄兵(東京)14

 

 

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 谷村君、見事なイン逃げだった。あるいは直前に寺ショーが勝ったことで、精神的にもいい感じに仕上がったか。スタートも1マークのターンも、文句の付けようのない横綱相撲だった。私の現在のパワー評価はAランクど真ん中。節イチ級とは呼べないものの全部の足がいいバランス型だと思う。直線もソコソコあるので、インコースでも十分に持ち味を発揮できるはずだ。獰猛に攻めてくる伸び型の敵がいなければ、だが……。

 メンタルの部分では、身近な先輩がいることはかなりのプラス材料になると思う。正月開催やお盆開催の優勝戦程度の感覚で、肩に力を入れすぎずに走れることだろう。あ、これも、先輩のあれやこれやの“思い”を考えすぎなければ、だが……。

 

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 2着は、辻栄蔵が賞金王の貫禄で石渡鉄兵との凄絶な競り合いを制した。ふたりともバランス型で似たタイプの機力だったが、わずかに石渡のほうが分が良かったと思う。2周1マークで力が入り過ぎたか、ターンマークを漏らしたのが痛かった。そのわずかなミスを的確に突き、しっかり差しきった辻はさすがと言うしかない。では、やはり同タイプの谷村VS辻ではどちらが強いか。今日は接点がなかったので明言はできないけれど、ほんの少しだけ谷村のほうが強い気がする。明日の辻は、これに伸びを付けるのか、さらに展開を突ける足へと強化するのか……悩ましいところではあるな。

 

逆王手!

 

11R 進入順

①毒島 誠(群馬)18

②池田浩二(愛知)19

③白井英治(山口)11

④松井 繁(大阪)21

⑥平山智加(香川)17

⑤篠崎仁志(福岡)17

 

 

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 英治が、絶望の淵から返り咲いた。3日目に落水して減点を喰らったときには、正直「またなのか、またダメなのか、英治師匠(将棋の師匠なのです)!?」とちょこっとだけ思った。が、すぐに思い直した。

「あのパワーさえ変わらず元気ならば、絶対に巻き返せる!」

 

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 あのパワー=節イチの行き足は、今日も元気いっぱいだった。もちろんスタートで半艇身覗いたのもでかいが、そこから1艇身抜け出すまでが早かったこと。スーーーッと艇尾を抜ききってから、今日はじっくりと時間をかけて内2艇を料理した。私が昨日から何度も描いた脳内レースと、ほぼまったく同じスリット~1マークだった。やはり、この行き足はケタチだ! 間違いなく優勝できる足だ。インコースなら他の5艇に影すら踏ませないだろう。ただ、あの痛恨の落水があったために、明日は2号艇なのである。2号艇でこの足は……ビミョーなのである。まくるか差すか、悩ましい足なのである。スリット同体から半分覗いたら、どうする、俺? なのである。

 とはいえ、この凶暴な行き足は同県の後輩・谷村にとって凄まじい脅威にもなる。谷村が王手をかけたようでいて、実のところ主導権を握っているのは英治。「逆王手」(将棋用語。王手をかけたはずが、相手がひとつの駒を動かして防御したらば逆に自分が王手をかけられてしまったという状況)なのだ。どちらが真に有利なのかは微妙だが、とにかく明日の優勝戦は白井の攻めが炸裂するか不発に終わるか、で勝者が決まる。私はそう思う。

 

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 2着は、1マークで恐るべき高等戦術を見せた池田だった。白井に真っ先にまくられた池田は、差しハンドルを切らなかった。まくられた2コース選手は「まくられながらの差し」を選択することが多い。「インとまくり選手がやりあってくれればズッポリかも」という淡い期待を抱きながら(←ごくたまに決まるが、ほぼ引き波にはまって大敗する)。

 ところが池田ときたら、そんな苦し紛れの差しには構えず、まくった白井が通過する瞬間にすぐに自分も握って二段で毒島をまくりに行ったのだ。まくられてまくる、いわゆる「換わり全速」。おそらく、池田は「白井にまくられる」という状況を、起こりうるべきものとしてすでに脳内にインプットしていた。で、この作戦も事前に想定していた。1着は難しくても、それで2等は確保できる。そう考えていたとしか思えない、超スピーディな対応だった。これにはさすがの王者・松井も意表を突かれたか、「池田が差す」と想定して握ったところで、その理想の航跡を池田に奪われた。やむなく差しに切り替えたが、すでに優勝戦に通ずる勢いはなかった。今日のところは、完全に池田の作戦勝ちだった。今節の池田は、パワー的にも上位レベルを保っている。SG初制覇に燃える長州軍団を、一刀のもとに分断するだけの腕と刀を持ち合わせている。

 1着・白井、2着・池田。

(photos/シギー中尾、text/畠山)