BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――勝負駆けが終わってしまったとしても

 

 

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 やはり沈痛である。10Rで太田和美がフライングを切ってしまった。真っ先にピットに戻ってきて、他艇を待つことなく陸に上がっているが、やや閑散としている分、その痛々しさが大きくなったように感じてしまう。ペナルティの重い、また責任の重い、優勝戦や準優勝戦ではない。予選のなかのひとつのレースである。それでも、やはりフライングは痛い。その心中を、他の選手たちも他人事でなくわかっているから、どうしても空気は重苦しくなってしまう。誰も太田にかける言葉もない。太田もひとり、この痛みに耐えている。見ているこちらとしては、どうしても溜め息が出てしまう。

 ただ、太田の闘志については否定するべきではないと堅く信じる。このレースには行き足から伸びが強烈だった選手が2人もいた。昨日も太田はそんなカードに登場し、そこでは3カドという戦略できっちりと止めた。今日は1号艇。できることといえば、スタートを踏み込んで先に回ること。そしてそれをきっちりと実践してみせた。たまたまコンマ01だけはみ出してしまっただけである。今回は紙一重で痛みを強いられたが、相手をどう攻略して1着をもぎ取るかを徹底して追求する太田の姿勢は、まぎれもないプロフェッショナルである。これこそが、強さ、である。

 

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 太田はこれで終戦となってしまったが、実質的に終戦を迎えてしまった選手が出てしまうのが3日目である。

 ドリーム発進の毒島誠は11R6着。4日目は好枠デーとなっているが、それを連勝してもボーダーには届きそうにない。昨日はパワーアップに懸命な様子を記しているが、それは実らなかった。ドリーム発進ながら、その点増しを活かせずに好枠デーを迎えなければならないことは、痛恨の極みであろう。

 レース後の毒島の動きは早かった。エンジン吊りのあとに着替えを終えると速攻でピットにあらわれ、すぐにプロペラ調整室へと向かったのである。パワーアップをまだまだ諦めていないのだ。もしかしたら今節は、機力が劇的に変わることはないかもしれない。だが、こうした姿勢が、次につながる。昨年のMB優勝以来、毒島は一皮むけた。そう言われるが、きっとSG初制覇だけが彼を上昇気流に乗せたのではない。もちろんそれも含めたうえで、こうしたトコトン頑張る姿が実を結んできたのである。

 

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 峰竜太も、予選突破はほぼ絶望である。F2で臨み、スタート勝負ができないなか、それでも初戦は逃げ切ってみせたが、そこから這ってしまった。本来の走りを表現できないのは、実にじれったいはずだ。それでもなんとかしのぎたいとの思いも強かったと思う。だが、10R5着のあとの峰は、さすがに力ない表情だった。今までにあまり見たことがない表情と言ってもいい。悔しさでいっぱいになったときの峰は、時に涙を見せるほど、思い切り悔しがる。今日は違う。もしかしたら、「あのFがなければ……」なんてことも思っただろうか。この状況で戦わねばならないという現実の重さを痛感したかもしれない。予選敗退の悔恨というよりは、消化不良の悔恨。あの脱力しているようにも見えた顔つきは、そういったものを表わしているように思えた。

 

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 もう一人の竜太=中田竜太も予選突破は厳しい。今日は1号艇を活かすことができず、機力劣勢は明らかである。だから、レース後には整備室にこもった。本体整備だ。11R発売中まで続いた整備。なんとしても一矢報いたいという思いは強い。

「最近、SG初出場で水神祭できずに帰った人っていますか?」

 整備を終えたらしい中田に、いきなりそんなふうに話しかけられた。すぐに名前をあげることができなかったが、別に珍しいことではないだろう。ただ、中田自身、未勝利で一節を終えることを覚悟してしまったフシがある。パワーを考えれば、弱気になってしまうのも仕方ないが……。そんなこと気にしないの! と肩を叩いたら、中田は笑ってはいたけれども、今節はあと3日も残っているのだ。だいたい、なんとしても勝ちたいから本体整備に取りかかったはずである。余計なことを考えずに、ただただ突き進め! 常滑本場においでの方は、この若武者にぜひともご声援を!

 

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 さてさて、一方でゴキゲンっぷりが目立ったのは井口佳典だ。水面での気配も超抜級だが、陸での気配も超抜級と言える。10Rで1着となった菊地孝平には、「ヒューヒュー!」と煽る。もともと仲のいい二人ではあって、楽しげな絡みもよく見るわけだが、それにしても井口の表情は明るかった。

 その井口、素肌にジャージを羽織っていて、胸元を大きくはだけさせていた。セクシー!というのはともかく、午後のピットは風が非常に心地よかったから、そんな恰好がちょうどよかったのかもしれない。そしたら、目ざとく見つけた守田俊介が「涼しくていいでしょ~?」とイジった。すると井口は「ありがとうございますっ!」。なんで礼を言う?(笑) ちょっと恥ずかしくなったのか、その後はファスナーを上げていたけど、その絡みもまたなんとも楽しそうだった。

 明らかに井口がノッている! こんなときの井口は突っ走るんだよなあ。明日は好枠デー。爆走モードに入ってもおかしくないと思う。(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)

 

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色違いのおそろいTシャツ姿。篠崎兄弟です。「POLISH UP」とは、仕上げるとか磨き上げるの意味ですね。ブランド名か何かでしょうか?