山崎智也が通算1500勝! おめでとう! 水神祭だ!
下関の出走表にはデカデカと「山崎智也 あと1勝で1500勝!」と載っているので、みんなが偉業達成の瞬間だと知っている。だから、太田和美が即座に「おめでとう! 水神祭やな!」と声をかけたし、松井繁も「おぉ、やるぞぉ」と笑った。3着に敗れてしまった田中信一郎も、悔しさを浮かべつつも祝福。がっちりと握手を交わしている。水神祭ムードは一気に高まった。
ところが!「ないない! やらない!」と苦笑いで逃げる智也。えぇぇぇっ、王者もやるって言ってるのに、それってアリ? さらには同期の海野ゆかりが寺田千恵や水口由紀を引き連れて、装着場で待機。勝利者インタビューに向かう智也に「やるよ!」と言っている。それでも智也は「ないない!」。海野が「あるある!」と返しても、首を横に振って断固拒否の構えである。
インタビューから戻った智也は、即座に通勤着に着替えてしまって、もはや完全に水神祭は不発のムードだ。こうなったら……「やらないんですか?」と後ろから声をかけたワタシであります。目を見開いた智也は「やらないよ~~~~」。
「えーーーっ。見たいですよ~~」
「ヤだよ~~~~」
「1500勝ですよ~~」
「死んじゃうよ~~~」
死ぬとまで言われたら、ゴリ押しはできない(笑)。「ともあれ、おめでとうございます!」と祝福したら、「ありがとございまーす」とニッコリ笑ってくれた。水神祭を見られなかったのは残念極まりないが、記念の勝利に立ち会えたことを嬉しく思います!
あ、その後の智也は、11Rに出走した松本晶恵に優しくじっくりとアドバイスを送ってました。この人がそばにいるのはデカいっすね、彼女にとって。
10R発売中、松井繁が係留所のほうから歩いてくるのが見えた。今日は12R何号艇だったっけ、とぼんやり思いながら、今日は7R1回乗りだったではないかと思い出す。ということは、試運転をしているということか! 係留所を覗きに行くと、松井と書かれたプレートがついているボートがたしかにそこにあった。この時間まで試運転をしている王者というのは、なかなか珍しい光景だぞ。
思い出すのは09年多摩川総理杯。レースを走った直後、松井はいったん上げたボートをふたたび着水して、速攻で試運転に飛び出したのだ。その姿勢に王者の王者たるゆえんを見た思いになったものだ。それからしばらく経って、松井にそのときのことを訊ねたら、まったくたいしたことじゃないと言って、「やる必要があると感じたらやる。それだけ」と付け加えた。その“当たり前”感にまた、王者たるゆえんを感じたものである。
今日もやる必要があると感じたからやっただけなのであろう。だが、そう感じたこと自体が、ひとつのトピックのようにも思う。やっぱり王者は王者、なのである。
で、ちょっとしたトピックがその後にありました。松井は11R発売中にボートを上げたのだが、エンジン吊りには装着場にいた女子選手が駆けつけている。すると、誰だったか確認できなかったが、整備室に向かって声を張り上げたのだ(写真を見ると、智加ちゃん?)。「岸さーーーーん!」。呼ばれた岸恵子はダッシュでエンジン吊りに参加! やっぱり王者ファンでしたか、岸さん! ニコニコと作業を行ない、王者のモーターを大事に大事に架台に乗せて、大事に大事に整備室に運び入れていたぞ。うーん、いいシーンだった、はい。
で、松井と入れ替わるように、小野生奈がボートをリフトへと運び入れた。えっ、今から降ろすの? 繰り返すが、11R発売中である。すでに試運転を終えた人がほとんど。係留所には魚谷香織のボートがあったが、小野はいったんボートを陸に上げていたわけである。それなのに、このタイミングで着水して、残された12R発売中の時間を試運転に使おうとしている。その姿勢もまた素晴らしいと言うべきだろう。
実際、12R出走の毒島誠が展示ピットにボートを移したあと、リフトの前を通りかかって目を丸くしていた。足を止めて小野を凝視し、これから試運転に向かうことを確認。そばで見ていたこちらに向かって、「すごい! こんなに仕事するなんて! 僕には無理!」と感嘆した。いや、毒島もかなりのとことんっぷりをよく見せるような気がするが、とにかく毒島を感心させる小野生奈、なのである。きっとその姿を見ている人は見ている。勝利の女神だって、見ているかもしれないぞ。
さて、山口剛が帰郷となって、明日から谷村一哉が追加参戦することになった(谷村はチャレンジカップ予備1位)。なにしろ、谷村は下関は正真正銘のホーム。追加が決まって即座にレース場に駆けつけ、15時くらいにはモーター装着作業を始めている。明日から参戦ということは、谷村にとって今日は前検日にあたる。というわけで、一人前検! もろもろが整った12R発売中にスタート練習とタイム測定をたった一人で行なった。
谷村がやって来たことを歓迎する顔も多く、同期の菊地孝平は装着中の谷村のもとに歩み寄って、楽しそうに話し込んでいた。同支部である白井英治も、「お前、太ったんじゃない?」とジョークを飛ばす。まさかこうなるとは思わなかっただろうから、減量とかしてないのかもしれないですね。
もちろん、明日が予選最終日であり、谷村は賞典レースへの出走資格はない。それでも、地元SGへの出場には変わりないのだ。心残りのないレースを見せてもらいたい! 追加補充選手がポンと勝って大穴、なんてこともありますからね。皆様、くれぐれも谷村一哉をすんなりと軽視しないほうがいいですぞ!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)