BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット@グランプリ――“本番”が始まった!

 

 

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 やはりここからが本番なのか。11Rを前に、ピットの緊張感が一気に増大した。先入観だろうか? 雨模様の中、薄暗くなっていたからだろうか? だが、たしかに昨日までとは何かが違う。12人で戦うトライアル3戦、やはりグランプリ(賞金王)はこれが本番である。

 レース前の選手の表情も、なんとも鋭い。昨日や一昨日にはもっとのびのびとしていたように見えた茅原悠紀ですら、目つきが違う。いよいよ頂点へと向かう険しい山道が本格的に始まったのだと実感しているのか、明らかに昨日よりは緊張していたと思う。

 

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 こうなると、やはり百戦錬磨の男たちに分があるのだろうか。太田和美の自然体は、かなり際立って見えるのだった。もちろん気合は入っている。目つきが鋭くなっている。だが、肩に力が入った様子はまったくない。3日間待ったレースで、1号艇に乗る。しかし前のめりになりすぎている雰囲気もない。やはりこの男の強さは、こうしたメンタルのブレなさではないかとしか思えない。

 12Rには、ボートリフト前で生観戦する若者の輪の中に、グランプリ組でただ一人、加わっていた。「ああ、これなら(レース)できるなあ」。雨を落とす厚い雲が空を覆っていた今日、12Rの時間帯には相当に暗くなっていた。平和島ではそのため、照光装置を用いてそれに対処。しかし、やはりナイター場に比べれば、明るさが少ないのは否めない。太田は、もし自分がこの状況を走るときのために、それを確認しに来たのだろう。そして結論は「これなら大丈夫」。その一連の動きに、太田のクレバーさを思う。技量だけが太田和美の強さではないのだ。

 

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 そういえば、白井英治もどちらかといえば自然体に見えた。必要以上に気合を入れ過ぎず、もちろん闘志は燃やしながら、それでいて穏やかさも保つ。これまでの大一番前の白井とは、どこかが違う。やはりタイトルをひとつ獲ったことは、メンタルの面で白井に力を与えているのかもしれない。

 ただし、快勝後の様子はいつも通り! 笑顔を見せ、充実感たっぷりの表情になる。満足感がありありとわかり、実にクールなたたずまいになるのだ。ピットに上がった直後にはガッツポーズも出たぞ。第2戦の枠番抽選では、1号艇をゲット! ここでもひっそりとニヤけて、拳を握りしめている。こういうときに感情を隠そうとする(でも隠し切れない)あたりも、いつも通りの白井英治だ。

 

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 それにしても、やっぱりレースも熱い! 12R、白井にまくり差しを決められた菊地孝平は、2マークで渾身の差し返しを敢行した。しかし、その瞬間、リフト前で観戦していた太田が、「キクちゃん、行くとこはそこやない!」と呟いている。プロの目から見て、差せるタイミングではなかったのだろう。それでも、菊地は行った。菊地だってある程度は理解していただろうに、それでも行ったのである。多少無理をしてでも上の着順をもぎ取りにいく。それがトライアル! 結果的に3着にまで落ちてしまった菊地は、レース後はなんとも複雑な、カタい表情を見せていた。僕は一人の観戦者として、ナイスファイト!と言っておきたい。

 

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 番手争いがアツかったのは、11Rも同様である。太田-松井繁のワンツー態勢は出来上がっていたが、3~4番手争いが激しかった。超絶スピードターンで先輩たちを置き去りにしていく毒島誠が、ここに加わっていたのだ。井口佳典の、「絶対に前には出させない」という走りっぷりがとにかく印象的。さらに、4番手争いとなったときには、吉田拡郎が毒島を激しく外に弾き出している。これもまさにトライアル! 毒島は、ボートレースにおいてはスピードが決して万能ではないという真理に、唇を噛み締める結果となってしまった。

 

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 そのレース後の毒島が、とにかくカッコ良かった。負けた選手にその言葉を贈るのは無礼かもしれないが、「いい悔しがり方」だと思ったのだ。うつむいて、険しい目つきとなる。といっても、何かを見つめているわけではないだろう。脳裏には、たった今戦ったレースが渦巻いているはずだ。そして、まるでブリンカーをかけたかのように、他者をシャットアウトする。足早に控室へと戻っていく。つまりは、とことん悔いているのである。

 若者はそれでいい、と思う。そうした巨大な後悔が、また毒島の糧になるのだろう。1st連勝の勢いを止められたことも屈辱のはずで、先輩たちの壁の厚さも感じただろう。それも大きな大きな糧である。

 この男、さらに強くなるだろうな。月並みだが、そう思った。一人悔しさをかみしめることのできる男は、間違いなく強者の資格を持つからである。

 

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 で、いちばん落胆していたのは丸岡正典。見せ場も作れない6着敗退、さらに明日の枠番抽選では6号艇となった。ラストの抽選で、もう緑しか残っていなかったのだ。それが確定した瞬間、井口が「プププ」と笑っていたぞ。さすが銀河系軍団である(笑)。

 その丸岡に、桐生順平が「明日は明日の風が吹きますよ」と慰めの声をかけていた。そう、桐生の言うとおり! 丸ちゃん、明日は天気が変わるそうです。きっと風も変わります。落ち込んだ顔の丸ちゃんは見たくない。6号艇でも奮起を期待します!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)