BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット@シリーズ――優しい先輩!

 

 

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 竹井奈美が走り回っていた。いや、本当に走ってばかりだったのだ。まず、水面を走り回った。遅い時間帯まで試運転を繰り返し、明日への手応えを探る。いちばん遅くまで試運転を続けていたのは山下友貴だったけれども、その次に遅かったのが竹井だった。

 陸でも走り回っていた。試運転をいったん中断してペラ調整に向かう際に走り、ペラ調整から係留所に向かう際にもまた走り。午後のある時間帯、竹井はペラ調整をしているか、走っているかだったのである。元気いっぱい!

 そんな竹井が歩いていたのは11Rが始まる直前。ボートリフト前でレース観戦しようと、控室から歩いて向かっていたのだ。僕も報道陣が入れるギリギリのところあたりで観戦しようと移動しているところで(毎年決めている「賞金王観戦ポジション」があるのです)、竹井にあっさりと追い抜かれているのだが、その追い抜き際に竹井がこんなことを言った。

「やっと、ですね~」

 ようやくトライアルが始まりますね~、という意味だろう。でも、いろいろ考えてしまった。竹井はこの瞬間を待ちわびていた? 盟友と言うべき小野生奈が出場しているし、女子最高レベルの戦いでもあるし、観戦するのを楽しみにしていた可能性はある。一方で、すでにシリーズは34レースを消化しており、トライアルこそがメインだと考えれば、長い長い前座を戦ってきたのだという感覚もあるのかもしれない。そのあたりが掴み切れなかったが、ともあれ僕はこう言った。「来年の今日この時間は、水面ですね!」。

 竹井の顔がぱっと明るくなった。「はいっ!」。そうだ、来年は竹井の地元でこの戦いが行なわれる。竹井にとって、このトライアルが大きな刺激となるのだけは、絶対に間違いないことである。

 

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 その前の10Rでは中谷朋子が4コースから差して1着。バックでは逃げた大瀧明日香に舳先がギリギリかかる程度だったが、2マーク手前で大瀧が落としたところにねじ込んで先マイ。力のこもったレースを見せている。

 それだけに、レース後の中谷の顔は明るい! ちょっと首を傾げるシーンもあったのだが、やはり会心の勝利に気分が良さそうだった。対戦相手に頭を下げる様子も、実に清々しかった。

 ところで、今節は住之江初という公開勝利者インタビューが行なわれている(本場に来られる方は2マーク寄りの会場にぜひお越しを)。1着選手は装着場の真ん中あたりで勝負服とカポックを脱ぎ、管理の方に会場まで連れていかれる、ということになっている。だから中谷も当然、そこで装備をほどいてインタビューに向かった。

 

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 その勝負服やカポック類をすかさず受け取って、着脱場に運ぼうとしていたのは倉田郁美だった。たまたま通りかかって、率先してその役割を引き受けたのだ。先輩に雑用をさせてしまうということで、中谷も恐縮気味。しかし倉田はまるで意に介さずにカポックなどを抱えていた。

 それを見て、もっと恐縮したのが、やはりたまたま通りかかった平山智加である。今、この場にいる選手でもっとも後輩なのは自分である。先輩にそんな仕事をさせるわけにはいかない。平山は慌てて倉田からカポックらを受け取ろうとした。すると倉田は言った。

「ダメダメ! 本番がある人はいいの!」

 12Rを控えている平山にこんなことさせるわけにはいかないと倉田は言うのである。たまたま通りかかった直接の大先輩である山川美由紀が「智加ちゃん、本番あるんだから」と倉田を援護。平山は頭を下げて、展示の準備へと向かうのだった。

 倉田の優しさに感動しました! 明日は舟券買って応援します!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)