BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――オールスターの生き方

 

 

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「大手術をしています」

 ドリーム戦共同会見で、毒島誠はそう言った。大手術!? ペラを大幅に叩き変えている、の毒島流の表現だ。その前のコメントは「もらったまま乗って重かったが、直線は良さそうだった」である。どちらかといえば好感触の部類だ。それなのに、ペラの大手術を施している、というのだ。つまり「自分の形に叩き変えている」ということ。明らかに、確信をもっての行動だろう。

 すぐに思い出すのは、先の丸亀周年。毒島の足は強烈でしたね。もう手がつけられないくらいの強さだった。丸亀はノーマルモーター、大村は出力低減モーターと違いはあるが、毒島はペラの形をつかんだ可能性が高い。だから、今日も躊躇なく叩いたのだ。艇界を席巻するニュージェネレーション・スーパースターズ。今節もその風が大村湾に吹き荒れるのかなあ、と予感させられる毒島の言動である。ドリーム戦は6コースもありうるわけだが(松井繁が「動くことを前提に」とコメントしている)、侮れない存在だぞ。

 

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 コメントといえば、瓜生正義がファン投票1位の感想を聞かれて「生き方が間違ってなかったのかな、と思います」と語った。生き方! 大仰とも思える言葉に、ちょっと驚いてしまった。生き方がどうであろうと、瓜生くらい強くて強くてたまらない男なら、しかも九州地区のオールスターで、ファン投票1位は当たり前だと思えるのだが、同時に人柄もあっての人気であろうことも間違いないところではある。個人的には、瓜生はもっと威張ったっていいと思うくらいですけどね。とはいえ、たしかに瓜生の人柄は素敵すぎます。

 一方で、瓜生はレーサー人生も含めての生き方、という意味で言ったのだろうとも思う。コース不問で強く、無謀なレースはせずに、己の技術力のみで勝ち抜き、毀誉褒貶を生もうとはしない。それはたとえば今村豊や、先ごろ引退された加藤峻二さんにも通じる“生き方”だろうか。個人的には、毀誉褒貶ぜんぜんオッケー、なんですけどね。しかし、瓜生のような存在は、一服の清涼剤であることもまた間違いないことだ。

 さあ、明日はドリーム1号艇。もっともたくさんのファンの思いを背負って、瓜生はどんな生き方を見せてくれるだろうか。

 

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 ドリーム組がスーパースターの中のスーパースターなら、このオールスターでSG初出場を果たす者は、未来のスーパースター候補、ということになろうか。江崎一雄と竹井奈美だ。

 江崎はさっそくSGカッパを着込んでおり、SGレーサーとしての自意識充分。バリバリの新兵だから当然、山ほどの雑用仕事もあるわけだが、それをキビキビとこなしつつ、若手のなかではかなり早い時間帯にボートを着水している。いきなり気合満点。あるいは、SGの雰囲気にも物怖じすることがない。もしかしたら、この舞台をおおいに楽しんでいる? スーパールーキーともてはやされ、当然この舞台に立つことを意識してレーサー人生を送ってきたはずの江崎だ。4年が早いか遅いかは評価が分かれるところだろうが、江崎にとっては「ついにたどり着いた舞台」であろう。そこでしっかりと己のやるべきことをやり通す。これを一節間貫けたら、たいしたものだと思う。それができるだけの、強気男であることもたしかだけれど。

 

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 一方、竹井の表情はちょっと硬く見えましたね。まあ、当然でしょう。今の女子レーサーはどうしても女子戦が主戦場になってしまう。全員が初めて一緒になる選手ということはないだろうが、しかし周囲がすべてトップ級という状況は初体験のはずだ。昨年のレディースチャンピオンに届いていれば、SGの雰囲気も垣間見ることができたんでしょうけどね(次点に泣きました)。優勝候補として女子戦に参戦するのが日常に近くなっている者が、今日の雰囲気に怯んだとしても仕方がない。もっとも、すでにSGを経験している6人のレディース先輩がいるのは心強いはず! 7人と限定されてしまった女子選手に、僕はおおいに肩入れしたいと思っているのだが、先輩の後押しも受けながら、竹井には持ち味を思い切り発揮してほしいと思う。

 

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 赤岩善生に会うのはけっこう久しぶり? というか、グランプリのあとSGは3カ月開いて、それからまた2カ月開いているから、クラシックにいなかった選手とは半年近く会わなかったということになる。整備室を覗いたら、赤岩がいつも通り、モーターをきっちり点検していた。そう、これがいつも通りの赤岩で、SGの前検日にこれを見るのが普通のことなのだが、今日は「やっぱりSGではこれを見ないとねえ」なんてことを感じてしまったのだった。SGでも一般戦でもやるべきことをやるのみ。赤岩の信条は、時に爽快に映る。

 

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 今垣光太郎が走り回っているというのも、前検日のいつもの光景である。モーターを受け取って徹底的に点検。その間にほとんどの選手がモーターを装着して水面に飛び出して行って、光ちゃんが装着場にポツン、ということは多い。で、今や光ちゃんはSGでは登番は上のほうだし、ということは前検では2班や3班、ドリームに乗るときには1班だから、もう時間がない! 走れ走れ! というのが恒例になっているわけだ。モタモタしているわけではなく、むしろキビキビ動いているのに、かたちとしては出遅れているように見えるという。それほど、光ちゃんの前検はとことん、なのだ。今日ももちろん、そうでした! つまり、今日の今垣光太郎はまさに平常心だったわけである。

 

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 で、光ちゃんが走り抜けたすぐそばを、湯川浩司がゆったりゆったり歩いてました。湯川はそのときすでに着水を終え、試運転も何周かしたあと。いったん切り上げて、陸に上がっていたという次第。なんか、いい雰囲気だぞ。少しも慌てる様子がなく、ペラを叩くつもりもなさそうで、のんびりとした歩様を見せていた湯川。10年グラチャンを当地で制したことを思い出せば、今節、大仕事の予感も漂ってくるわけである。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)