BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――着順と機力

 

 

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 午後のピット。アリーナの前を通りかかったら、ベンチに誰か寝てる。起こさないように……そーっと通り過ぎようとしてその人を見たら、原田幸哉だった。今日はまさしく五月晴れ。アリーナには春の日差しが降り注ぎ、まさに昼寝日和。

 ……のわけがないのであった。これは8R発売中のこと。幸哉は10分後くらいには、9Rの展示に参加するのである。また、あと数分したら展示待機室に入らなければならない。その前の、幸哉流の精神統一なのである。

 レースが近づいた選手はピリピリし始める。レースに向けて精神を統一し、緊張感をまとって水面へと向かう。その方法は人それぞれで、幸哉は一人、自分の世界に没入することで気分を高めていくわけだ。そういえば、幸哉といえば乗艇前の敬礼が長いことも一部で有名かも。あれも、レース目前にもう一丁、精神統一する姿である。

 9Rは見事1着! ベンチの上で描いたとおりのレースぶりになっただろうか。

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 幸哉の精神統一の邪魔にならないよう忍び足で装着場へと向かう。足を踏み入れた瞬間、隅っこのテーブルに二人の背中があった。ここはどうやらゲージ擦り用テーブルらしく、他場では整備室内にあるのが普通なので、けっこう珍しい配置。で、その背中とは烏野賢太と丸岡正典で、その後も僕がピットを出るまで、二人が並んで作業に没頭する姿があった。

 ここで何度か書いてきたように、序盤のゲージ擦りはエンジン出ているの法則、というものがある。初日にレースを1度走って、違和感があればペラ調整なり本体整備に取り掛かるもの。それをせずに、ゲージ擦りに向かうということは、レースでの感触が良かったと考えられるのだ。

 丸岡は、2コースからまくり一撃で1着。内のスタート遅れはあったとはいえ、軽快な行き足だった。たしかに足は良さそうだ。一方の烏野は6コースながら6着。シンガリ負けである。それにもかかわらず、ゲージ擦りをしているということは……。初日の着順で人気が落ちるのなら、かえって買いかも! 明日の烏野の気配には要注意だ。

 

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 そのまま整備室を覗き込んだら、森高一真がいた。本体を割っている。おっと日高逸子も本体を割っていて、今日の後半は「●高が本体整備!」と見出しが浮かぶ。というわけで、平高奈菜の姿を整備室に探したわけだが、かわりに見つかったのは深谷知博で、予定稿みたいなものはそうそううまくはいかないのである。

 それはともかく、森高は今日1走で2着。まさに丸岡がまくったレースで、3コースに動いて、丸岡の攻めに連動したものだった。そういえば、深谷も似た展開だったな。2コースから峰竜太がまくって、3コースの深谷が差して2着。展開もよかったとはいえ、上々の発進である。

 しかし森高と深谷は本体をバラす。違和感があったのだ。忙しそうな森高を捕まえて「交換?」と尋ねると、「交換交換」とだけ言って去ろうとする。何を交換したのかも答えない。「足良くない?」「アカンやろ」。それだけ言って森高は作業に戻っていったのであった。話してる場合やないで、クロちゃん、ということだろう。

 6着の烏野がゲージ擦りで、2着の森高と深谷が本体整備。くれぐれも着順だけで判断してはいけないようなあ、と改めて思う。

 

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 ペラ室を覗き込むと、おぉ、ニュージェネコンビ、茅原悠紀と毒島誠が隣り合わせて、談笑しつつペラを叩いていた。いや、毒島は隣に座ってるだけみたいだな。茅原のペラ叩きを、会話を交わしつつ見つめている感じだ。この二人が一緒にいると、なんかときめきますね。時代の寵児コンビである。

 ただし茅原は正解を出せてはいないようだ。10Rに出走した茅原は、峰竜太、秋山直之と3番手争いを演じ、敗れたのだ。5着。仕上がっていれば、数艇身も前を走る新田雄史を捕まえちゃう茅原が、競り負けているのだ。

 ピットに戻った茅原は、苦笑いとともに「ダメだぁ~~」と声をあげた。つまりは、足色の問題である。津での大逆転劇が記憶に新しい今は、どうしても茅原の舟券、買いたくなりますよね。明日は立て直す可能性があるので何とも言えないが、所変われば足も変わる。イメージだけで判断するのもいけないわけです。舟券の基本ではありますが、そんなことを改めて考えた、初夏の大村ピットでありました。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)

 

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10R後の篠崎兄弟ツーショット。弟は真剣な目で兄の言葉に耳を傾けていました。揃って参戦するSGは、ともに気持ち的なプラスがあるでしょうね。