BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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TOPICS4日目

THE勝負駆け①ボーダー争い

生奈、散る。

 

 これがSGの厳しさか……昨日まで予選6位と大健闘した小野生奈が、最終関門で無残に散った。今日の生奈のレースっぷりは、まるで別人だった。まずは前半5R、スタートで完全に後手を踏む。「2走④着⑤着で6・00」という思いが、気持ちを守りに向かわせたのかも知れない。それでも、4カド太田和美に叩かれてから、すぐに態勢を立て直して全速マイのまくり差し。果敢な立ち回りで最低限のノルマと言うべき4着をもぎ取った。この4点の価値はベラボーに高いと思っていたのだが……。

 

 

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 ⑤着で6・00。微妙な勝負駆けを残した後半11Rのスタートはコンマ11、おそらく全速。6コースからバチッと決めた。が、今度はこの後の動きが別人だった。スリットから内の田中信一郎より半艇身ほど覗いた生奈は、そのまま直進した。昨日までなら、委細構わず握って差し場を狙っていたのに。直進して、信一郎が動くのを待ってから差しハンドルを入れた。やや弱気な作戦だが、これはまあいい。6コースの最内差しは、誰もが使う常套手段だ。問題は、そのターンスピードだった。ハンドルがまったく入らず、ゆっくり膨れるようにしてターンマークに向かっている。辿り着いたときには、先頭集団から完全に置き去りにされていた。文字通り、ハンドルが入らなかったのだろう。

 

 

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 1周2マークも同様に、ぼんやりターンマークをなぞるようなターンだった。昨日までの切れ味鋭い全速ターンとは正反対だ。慎重に回ったと言うより、気持ちばかりが急いてハンドルが入らない。そう見えた。それでも、5着が欲しい生奈は、前を行く信一郎に追いすがる。2周1マーク、やはり初動と軌道がどこか心もとない、怪しいターンだ。回った直後に、艇が左右にバウンドした。それでも、前を追う。

「5着、5着が欲しい!」

 そんな切実な聞こえるような猛追。2周2マークの直前。生奈は勝負に出た。信一郎に強ツケマイを浴びせようとする決意が、上体の動きからはっきり伝わった。が、おそらく心はすでに平常なそれを失っていたのだろう。握る前に、また艇が左右に激しく揺れた。気持ちが先走って、ハンドルを入れすぎたか。

 危ない!?

 思った瞬間、生奈は握った。あっという間にボートがひっくり返った。初動、ハンドル、レバー操作……どれもがチグハグだったことは、素人目にもわかる転覆だった。生奈、脱落。

 

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 初日から3日間、生奈はレーサーとしての経験値を半端ないほど上昇させた。このまま優勝戦まで突き抜けそうな上昇ぶりだった。が、厳しいことを言えば、4日目のステージでその許容量がMAXに振り切れたのだろう。現状、レベルMAX状態になった生奈の視線は、さらなる高みではなくボーダーラインに向かった。④着⑤着の低いハードルを超えればいい、超えたい、超えなければならない。そんな心の機微が、生奈の全身を硬直させたではないか。そうとしか思えない11Rだった。イコール、SGのプレッシャー。イコール、現状での小野生奈というレーサーの限界。それはむしろ、26歳の女子レーサーにとって当然の変調だと私は思う。今日の残念な結果も踏まえて、この4日間の生奈に拍手を贈りたい。うん、今日の悔しさ悲しさ情けなさ……これまでのレーサー人生でもっとも激しく揺れ動いたであろうそれらの感情は、生奈の経験値のキャパシティをグンッと大きくしたはずなのだ。また同じ場面を迎えたとき、生奈の瞳はより高いステージを見つめるだろう。

 

 

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 また生奈のことばかり書いてしまった。勝負駆けを成功させた選手としては、やはり濱野谷憲吾だな。1着がなかったものの、日々粘り強いレース&パワーで17位入選。連日アタマから狙い撃ちしている私は大損したわけだが(涙)、準優~優勝戦であっと言わせるだけのポテンシャルを秘めているとお伝えしておく。

 

THE勝負駆け②予選トップ争い

智也、逆転トップ!

 

 

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 一方、V争いでもっとも重要なトップ争い(そう、ここはイン帝国の大村!)は、非常にわかりやすい直接対決となった。最終12R、暫定1位~4位による一発勝負だ。各選手の状況は、こんな塩梅だ。

 

12R

①山崎智也…他力だが、勝って丸岡が3着以下ならトップ。つまり1-2345のフォーカスならトップ当選。

④湯川浩司…勝てばトップ。

⑤篠崎仁志…可能性はあるが、ほぼ難しい状況。

⑥丸岡正典…勝てばトップ。

 

 

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 つまり、自力の目があるのは湯川と丸岡のふたり。しかし、智也が逃げきってしまえばかなり有利、という状況だ。「4選手による同一レース直接対決」というのはかなり珍しいと思うのだが、その結末はあっけないものだった。インの智也がトップS(コンマ21、危ないスタートではあったのだが)からしっかり逃げきり。こうなると「丸岡が2着かどうか」だけが争点になるわけだが、その丸岡が最アウトから何もできずに最後方に置き去りにされた。1マークを回って勝負あり。智也のトップがこの時点で約束された。

 

 

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 少し機力について触れておくと、本人がソコソコ満足している智也に対して、私の評価はさほど高くない。伸びは中堅、出足・回り足は上位に手が届くかどうかで、トータル中堅上位レベルと見ている。つまりは絶対的なV候補とは思っていないのだが、ここは大村。スタートを決めてしっかり1マークを回れば、それで逃げきるに十分なパワーとも言えるだろう。スタート~1マークまでに智也を叩ききれる選手がいるかどうか。それで智也のV確率は大きく変動すると思う。明日の12Rは……??(photos/シギー中尾、text/畠山)