師弟の呼吸
10R
①丸岡正典 06
②峰 竜太 15
③瓜生正義 16
④平田忠則 21
⑤太田和美 04
⑥白井英治 12
スリットの隊形で、5カド太田の勝ちが見えた。内の平田をぴったり1艇身出し抜いている。もちろん、太田は伸びなりに容赦なく締めた。平田が、瓜生が、峰があっという間に呑み込まれてゆく。このまま、まくりきっても不思議ではない勢いだったが、太田はスッとスピードを緩めて冷静沈着な大人のまくり差しハンドルを入れた。そう、インコースは愛弟子の丸岡なのだ。夫唱婦随ならぬ師唱弟随、バック直線で師弟が仲睦まじくファイナルロードを歩んでいく。準優としてのレースは、この時点で完結した。弟子がコンマ06、師匠がコンマ04。ふたりの度胸が他を圧したレースだった。
機力的には、判断の難しいレースではあった。スタート勝ちか、パワー勝ちか。私は前者の色合いが強いと見る。太田の70号機は伸びトップ級として知られてきたが、今節はそれに見合うだけの迫力はない。むしろ全部の足が強めのバランス型というイメージで、スタート同体から自力で攻めきるだけの伸び足はないと思う。ただ、好枠が約束された明日は、伸びに特化するより現状の性質をしっかり磨く方向でいいだろう。
一方の丸岡は、この敗戦がむしろ有利に働くかも? トップ級の伸びを誇るだけに、4カドからS一撃も夢じゃないと思うぞ。舟券的にも、このセンター丸岡の存在によってより妙味溢れるファイナルになったとお伝えしておく。
服部の流れ
11R 進入順
①湯川浩司 F+03
②篠崎仁志 02
⑥下條雄太郎 04
③桐生順平 11
④新田雄史 01
⑤服部幸男 00
灼熱のスリットラインで波乱は起きた。湯川、コンマ03の勇み足。10Rの大阪師弟コンビに触発されすぎたか、大好物?の湿気で自慢の行き足が仕上がりすぎたのか。ドカーーンとハミ出し、バックで他の5艇をぐんぐん引き離したままピットへと向かった。1周2マーク、「恵まれ」の1着争いは大混戦。惜しかったのは篠崎仁志で、しっかりサイドが掛かれば先頭か、という勝負どころで真横に流れてしまった。それこそ湿気に拠るものなのか、プレッシャーで思うようにハンドルが入らなかったのか……悔いの残るターンだったことだろう。
その間隙を突いて勇躍先頭に立ったのが服部だ。6コースからコンマ00、タッチで残し、新田のまくりで絶好の展開が生まれ、湯川のFで繰り上がり、仁志の勝負ターン不発で1着ゲット。この一連の流れは軽視できないな。もともと持ってるレーサーではあるのだが、今節の服部は20代にブイブイ言わせた頃の迫力と運気を思い出させる。
熾烈を極めたのが2着争いだ。桐生、仁志、新田のNG軍団によるターンスピード合戦。2周バックで新田がやや遅れ、内に仁志、外・桐生で舳先が並んだ。2周2マークの手前、桐生が握る素振りを見せた。新鋭リーグの時代から、その破壊力を熟知している仁志。そうはさせじ、と桐生を弾き飛ばすように膨らみながらレバーを握った。まともに喰ったら、桐生は消波装置までぶっ飛んだかも知れない。が、そこが桐生の凄いところだ。咄嗟にレバーを放り、しかもウイリーのように舳先を持ち上げて仁志の突撃ターンを交わしたのである。虚しく流れる仁志。1周2マークも2周2マークも、仁志は「相手が桐生さん」というのを意識しすぎたのかも知れないな。
1着・服部、2着・桐生。
服部の足はちょっとうまく言えないのだが、初日から不気味なムードが漂っている。どこがどうではなく、レースを見るだに「なんか、いい感じだなぁ」みたいな。具体的に判別できていないので機力診断とかでは割愛してきたが、うん、なんかいいんですよ。
桐生の足は前検トップ3に挙げた通り、行き足~伸びを中心にかなりいい出来だと確信している。破壊力で言うなら、優勝戦では丸岡と同格かやや下か。ただ、当地GI優勝戦でFを切ったばかりの身の上、さらにSG優勝戦でもやらかしたら大村永久追放なんて境地に立たされる?ので、明日スタート勝負に出るとは考えにくい。この破壊力がまったく活かされない展開も想定しておきたい。
成熟のデッドヒート
12R
①山崎智也 19
②今村 豊 15
③石野貴之 18
④池田浩二 19
⑤石橋道友 18
⑥濱野谷憲吾 21
智也がガッチリしっかり逃げきった。スタートはコンマ19。昨日の21に続いて絶品というレベルではなかったが、F艇が出た直後としてはギリギリ及第点とも言えるだろう。他の5艇もやや慎重で、すべて1艇身以上の余力を残してスリットを通過した。2コースのミスター今村がスーーッと伸びて半艇身ほど覗いた瞬間が、もっとも波乱含みの光景だったな。智也はそこからじわじわ伸び返し、まくらせないだけの態勢を作ってから先マイした。回ってからは、優勝戦1号艇を脅かされるほどのエピソードはもはやなかった。
凄まじかったのは2着争いだ。53歳・今村と37歳・池田の一騎打ち。11Rでは20代のNG軍団が若さをぶつけ合うような激闘を演じたが、53歳のミスターもまったく負けていない。1周2マーク、外から襲い掛かった石野を全速ターンで弾き、内から差し伸びた池田と舳先を並べる。そこから丸々2周のデッドヒートに突入するのだが、圧巻は3周1マークの手前だ。外から半艇身ほど覗いた今村は、内にハンドルを切って池田を締めに行った。締めたというより、体当たりのような迫力だ。前半分だけをぶつけられた池田の艇は、バランスを崩して左右に激しく揺れた。常にクリーンなレースを心がけるミスターにしては、珍しいラフファイト。左右にバウンドする池田を残して、今村は先マイを果たした。並の相手ならこれで決着、というシーンだったが、池田がまた凄い。すぐに態勢を立て直して全速の差しハンドルを入れた。この差しが、ギリギリ届く。届いて、舳先が並んだ瞬間、最後のファイナリストがほぼ決まった。敗れはしたが、脂の乗りきった天下の池田浩二と互角のスピードで渡り合った53歳……ただただ敬服するばかりだ。本人は、そんな褒め方をされてもちっとも嬉しくないだろうけど。
1着・智也、2着・池田。
今日も言おう。智也の足は中堅上位レベル。スリットからじわーり伸び返した伸び足も、回ってから少しだけ押して行ったレース足も、ジャスト中堅上位と呼ぶに相応しい。このまま上積みがなければ「盤石の1号艇」とは呼べないな。もちろんスリット同体なら十分逃げきれるが、スタート遅れなど小さからぬデメリットが発生したら、それをカバーしきるだけの機力ではないと思っている。
智也と比べると、池田の足は全体的にかなり強めだろう。日々、本人はちよっとした不満を漏らしているが「泣いているときの池田のほうが活躍する」というオカルトチックな法則もある。優勝を意識できるほどの足だからこそ「もっともっと」という欲が出るのかも? とにかく、選手+今節のパワー=6コースからでもあっさり優勝してもおかしくない存在とお伝えしておこう。(photos/シギー中尾、text/畠山)