BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――仲間がそこにいる心強さ

 

 

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 今垣光太郎、連勝! 今日はいわゆる好枠デーだったが、それをきっちりモノにして、最高のスタートを決めるかたちとなった。勝っても喜びをあらわにするタイプではない今垣も、福井支部勢の出迎えを受けて、さすがに目が細くなる。勝利者インタビューなどの“儀式”をひととおりこなしたあとは、ルーティンとなっているボート磨きを今日も行なっていたが、その間に報道陣の取材を受けると、かなり大きな声でそれに応え、その声量と口調に高揚する気分があらわれていた。

 ところで、今節は福井支部が5名も参戦している。今垣、中島孝平、石田政吾、萩原秀人、松田祐季。最初の2人はSG常連で常に一緒に参戦しているわけだが、SG覇者である石田に、萩原、松田はSG参戦もそれなりにありはすれども、5人で一堂に会する機会はこれまでに記憶がない。

「あ、たしかにそうかもしれないですね。5人はなかったかも」

 と、光ちゃんもおそらく初めてのことだろうと言っている。これ、けっこう凄いことなのだ。というのは、現役の福井支部選手は48名。そのうち約10分の1の選手をSGにいっぺんに送り込んでいるのだ。東京支部なら20名を送り込まなければこの数字には達しない。福井支部は隠れた“王国”なのだ。

 

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 それを光ちゃんに振ると、「グランプリにも2人行ってますから」。なるほど、18人しか出られないグランプリに、福井支部から24分の1が食い込んだ。東京支部なら8人を送り込まなければならないわけだから、たしかにこれも福井支部の誇りであろう。12人時代にも今垣&中島で参戦を果たし、10年は優勝戦1着3着。この二人がグランプリに顔を揃えるのは何も不思議なこととは思えないわけだが、支部単位で見ればかなりの難業なのである。

「やっぱり、同支部が多いと心強いですよ。俊介は滋賀支部で男子一人でしょ。大変ですよね」

 光ちゃんだって、福井支部単独参戦だったSGもいくつかあるだろう。人数が少ない支部にとってはつきものだろうが、だからこそ5名での参戦は5名それぞれにパワーとなるのである。まずは初日、大将が結果を出した。光ちゃんの快進撃を含め、福井支部の旋風に注目しておこう。

 

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 常に複数名、時に大量参戦があるのが、所属人数も多く、また強い選手がゴロゴロいる福岡支部だ。いつだって心強さを感じて戦えるのは大きいし、瓜生正義という精神的支柱の存在がまたデカい。もちろん、切磋琢磨も強烈だろうから、相乗効果でさらに皆が強くなっていく部分はあるだろう。

 9Rで池永太が1マークで落水した。しかし池永は自力でボートに再乗、また走り出している。先頭との差は半周くらいで、タイムオーバーになる心配はなさそうだ。ところが……池永は途中で戦線を離脱。落水失格と判定されている。どうやら、選手が完全に操縦席から水面に落ちてしまった場合、その時点で落水失格となるようで、再乗できたとしても失格に変わりはない、ということのようだ(競技規程には、「速やかに元の状態に戻れないとき」とあるが、完全に落ちた状態をそう判断するということになっているのだろう)。

 せっかくレースに戻れたと思ったら、残念ながら失格に。レース後の池永はやはり、落胆しているように見えた。しかし、すぐに篠崎元志をはじめとする福岡支部が池永を囲んで、言葉をかけている。そういう仲間が常にそこにいる、というのはやはり大きい。この世代は同支部でなくとも仲がいいので、同世代が慰めてくれるのもまたパワーになるはずだ。ボートレースは言うまでもなく個人競技だが、仲間の存在はその個人の戦いにも影響を与えることがあるわけである。

 それにしても、失格に終わったとはいえ、落水しても諦めずにボートによじ登り、たった半周遅れ程度でレースに復帰しようとした池永には、ナイスガッツ!と言っておきたい。これはつまり、後ろを走っていても決して諦めずに前を追ってくれる選手、ということにもなるのである。池永はこちらのそんな言葉に納得していないようで、ただただ悔しいレースだったようだが、しかし池永のその姿勢には力強いものを感じずにはいられない。結果はひとまず置いといて、池永のスピリッツに拍手だ。

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 さてさて、初日のレースを終えて、終盤の時間帯に本体整備をする選手が何人かいた。今垣とは逆に好枠デーを活かせず、明らかに機力劣勢と見えた谷村一哉もその一人。表情には必死に上積みせんとする思いが見受けられた。後藤翔之は2R後に整備を始めていて、9R発売中にはふたたびモーターをボートに乗せて、試運転へと飛び出している。地元SG、悔いを残す戦いだけはしたくないところだ。角谷健吾も、選手代表の仕事と本体整備を両立させていた。これはなかなか大変。落水失格の池永に声をかけに行く姿も目撃していて、選手代表が大役であることを改めて感じさせられる。そして、パワーアップの成功を願いたくなる。

 

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 もう一人、寺田千恵も本体をバラしていた。1号艇2着だった6R、しかし上積みの必要性を感じたのだろう。BOATBoy4月号のインタビューで寺田は、「女子選手は本当に諦めない。遅い時間帯にどれだけピンク(試運転用の艇旗と艇番はピンク色であるレース場が多い)を見ることか」と女子レーサーの努力ぶりをアピールしていた。それはもちろん、特に後輩選手のその姿勢を称えている言葉なわけだが、いやいや、テラッチ自身がとにかく諦めない。2着でも緩めない。女子初のSG優出レーサーという偉大なる先輩が、とことん努力を続けるその背中を見て、後輩たちも奮闘しているという部分はあるはずだ。

 

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 ふと水面に目をやると、ありましたありました、ピンクが。係留所に3艇並ぶピンクの旗をつけたボートは、遠藤エミ、滝川真由子、川野芽唯。今日は全員が1回乗りで着外。遠藤は3番手争いで見せ場を作ったが、滝川と川野はなすすべなく6着に敗れている。SG初陣の二人は、いきなり洗礼を浴びせられたわけである。しかし、テラッチが言うとおり、諦めることなどありえない、のだ。遠藤にしても2度目のSG、キャリアがまだ浅い3人が、なんとしても巨大すぎる強豪の壁に立ち向かうべく、努力を続ける。その姿勢には、やはり拍手を送るしかない。

 あ、そうか。今節、女子が4人も参戦しているというのは、まだSG経験の少ない彼女らにとって、本当に心強いことだろう。3人で感触について話し合いながら、ともに試運転を走れるのだ。SGに出始めの頃はほぼ女子単独参戦だったテラッチの苦労を思えば、彼女たちは実に素晴らしい環境で経験を積んでいるわけである。そして、それを活かして努力も積んでいる。その心強さをしっかり活かして、おっかない男の先輩になんとか一矢報いてもらいたいぞ。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)