BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット--シリーズ優勝戦

 逃げる木下翔太。すがりつく馬場貴也。2艇同時に突入した1周2マークで明暗は分かれた。圧倒的人気を背負った木下が勝負ターンを放つが落水。水面に投げ出された木下は、一瞬、天を仰いだ。

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 観戦する選手たちの目の前での転覆。スタンドの喧騒とは対照的にピットは凍り付く。響き渡る「選手負傷」のアナウンスに、5.9度の気温がさらに下がった気がした。
 レース終了。主を無くした62号機を格納したのは、歴代賞金王の松井繁と太田和美の2人だった。久しぶりの大阪支部からのニューSGウィナー、平成生まれのSGウィナーの誕生はならなかった。

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 優勝は馬場貴也。ピットで出迎えるのは滋賀支部の遠藤エミと丸野一樹の二人だ。それにしても最近の滋賀支部は絶好調。クイクラでも、遠藤エミがこの流れに乗ることになるだろう。

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 馬場の優勝は、現行制度に変わって、はじめてのグランプリ敗戦組からのシリーズ復活優勝であった。
 当然、グランプリ出場選手はシリーズのことなど考えずに参戦しているので、1stで敗戦すると気持ちの持って行き方が難しい。実際に馬場もトライアル敗退が決まったときに、いったん気持ちが切れそうになったという。

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 しかしそれを紡いだのが、風呂場で一緒になった井口佳典の「また明日からがんばろう!」との言葉。
「たしかにそうやなと考えなおしました。昨日も風呂で一緒になったので『井口さんの言葉でがんばれました』と伝えておきました」と語った。

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 今年のSG優勝戦はここまですべてイン逃げ決着。馬場のまくり差しが、イン圧倒の流れを止めた。ちなみに約1年半ぶりのイン逃げ以外の決まり手である。
「昨日は外枠、今日は3コースから勝てた。ボートレースの面白さを見せられたかなと思うと、選手冥利に尽きます」
 馬場の鋭いまくり差しは、イン絶対の常識を切り裂いたのだ。

 最後に。オール4000番台、オールやまと卒で行なわれたGPシリーズ。今回の出場メンバーたちの中から、5年後のボート界を背負う選手がきっと出るてくると思う。今回の敗戦は、きっと将来の糧になる。

(TEXT姫園 PHOTO池上一摩)