共同会見場に現われた今垣光太郎の顔には嬉しさがにじみ出ていた(写真は表彰式)。
どちらかというと喜怒哀楽がそのまま顔に出やすいタイプだとは思うが、見ているこちらまで幸せな気持ちにさせてくれる笑顔だった。
今日一日、ピットで書きつけていたメモを見ると、今垣については「不機嫌のようにも見える顔」「厳しい表情」といったものが目立つ。
この会見では「今日の調整はバッチリ合ってました!」と話していたので、アシに不安があったわけではないだろう。「また何か起きたりしないか……」といった嫌な感じがあったのではないかと想像される。
なにせ6年ぶりのSG制覇だ!
「遠い記憶になりかけています。だいぶおじさんになってきたんで、(力が)落ちていく頃かな、という気持ちはあったんです」
「SG優勝8回目から9回目にいくのが自分の中では壁になっているようで、越えられる壁なのかどうか、というのがあったんです」
「今のペラになってSGでは仕上がらないことが多く、たまに仕上がると、事故を起こしたりしてしまっていたんです」
とも話していた。
こうした言葉を聞けば、今垣は「自分の中の壁」と戦っていたのがよくわかる。
この優勝で、また自信を掴んだ今垣だ。来年も大いに期待していいだろう。
「来年は年男なので頑張ります」
「来年はできればシックスに入りたい」
とも言っていた。
時間を遡るが……、優勝戦の最中のピットは静かだった。
今垣のレースを見守っている福井支部勢は中島孝平と萩原秀人の2人だったから、少し寂しい。1マークを回ったところで、選手の誰かは悲鳴をあげていたが、中島と萩原は大きな歓声をあげるようなタイプではない。レース中はその姿が死角に隠れて見えなかったが、2人で静かに握手でもしていたのではないかと想像される。
レース後、盛り上げてくれたのは、同じ近畿地区の大阪支部勢だ。湯川浩司や丸岡正典らが拍手で迎え、太田和美は何度となく拳を突き上げ、喜んでいた。太田の喜びようは少し意外な感じがするほどだったし、そうされた今垣が恐縮するように頭を下げていたのが印象に残る。
それに比べれば、あくまで控えめな福井支部勢だが、今垣が完全にボートから降りたあと、萩原が控えめにハイタッチをしていたのが、いかにも、らしかった。
1日を通して、6人それぞれに粘りの調整をしていたといえるが、とくに好感をもてたのは齊藤仁と重成一人だ。
2人のどちらに対してもいえることだが、自然体に近い雰囲気で集中して、休まず作業を続けていた。
重成はレース後、「結果的に2着を狙うようなレースになってしまった」と振り返っていたが、それにしても、勝ちにこだわる気持ちが強かったからこそ出た言葉に違いない。
それぞれ近いうちにSGを獲るのではないか。
そんなことが予感させられた「11Rの優勝戦」だった。
(PHOTO/池上一摩 TEXT/内池)