BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――難解進出戦

 

 

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 1~3着は無条件で準優に進める。しかし、4着以下は今日までの得点率上位6名までが準優へ。ということはつまり、たとえば9Rの4着以下の選手は、自分の運命を12Rが終わるまでわからない、のである。

 9Rの4着は原田佑実。この4着で得点率は6・00となっている。しかし、この数字が準優行きに足るものなのか、一般戦回りを強いるものなのかがわからない。10R以降の選手の点数状況を見ると、かなり有利であるのは間違いないが、しかしたとえば10R以降がすべて④=⑤=⑥ボックスで決まったりすれば、アウトなのだ。4着に敗れたことはもちろん悔しかろうし、準優行きを確定できなかったことへの痛恨もあるだろうが、しかし望みを残している以上、気持ちの置き所は難しい。

 

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 一方で、9R6着の竹井奈美は、準優行きをあきらめていただろう。実はその後、ボーダーの俎上にあがってくるのだが、常識的に言って、このシステムでの外枠6着はかなり厳しい。竹井が5・00、5着だった宇野弥生が4・80と、宇野との比較だけで言うなら有利な位置にいたわけだが、それすら自覚していなかったのではないか。モニターの前に集まる群衆の最後列でリプレイを見ていた竹井は、ただただカタい表情で、時折映し出される後方の争いを確認していた。完全に敗者の顔だった。

 

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 10Rも内枠3者が上位を独占し、4号艇が4着、6号艇が5着、5号艇が6着と4着以下は同じ順番の入線。得点率もほぼ同じようなことになっている。6着の淺田千亜希は、やはり敗者の顔つき。チーム徳島に囲まれながら、引きつったような表情になっていた。やはり6着の痛さを自覚していただろう。

 

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 勝ったのは田口節子。予選3位での進出戦1着だから、準優1号艇は確定……といったところで、報道陣の間でちょっとした問答が起こった。出走回数の関係で、4日目終了時点の得点率が、「予選3位・田口=8・33」「予選4位・平高=8・40」となったのだ。たとえば、10R2着の小野生奈=6・83、3着の森岡真希=7・40の逆転現象は、上位着グループが内枠に入るのは準優などと変わらないから、問題にならない。しかし、1着グループではどうなのか。なにしろ、あさっての優勝戦の枠番は「4日目終了時点の得点率上位者が同じ着順グループでは内枠に入る」ことになっているのだ。それに進出戦4着以降も「4日目までの得点率」が基準になるわけだ。ならば、1~3着についても同様ではないか、そうなると仮に11Rと12Rで1号艇が勝った場合、平高が準優1号艇、田口が2号艇となるのではないか。正解は、準優メンバーを見てのとおり、「1~3着については予選順位」が基準になっているわけだが、報道陣は首をひねりまくりなのであった。案外、平高自身は「ぜんぶ1号艇が勝ったら自分は準優2号艇」と割り切っていたかも。

 

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 11Rはちょっとした波乱になった。勝ったのは1号艇の今井美亜だが、2着に6号艇の香川素子が入ったのだ。3連単は2万円を超えて、①-④⑤⑥-④⑤⑥を買うつもりだったのに直前で⑥を2着から外した中尾カメラマンが地団駄踏んだ……のはどうでもいいが、香川の最内差しと2マークの思い切った旋回はお見事だった。レース後には今井と“東近畿ライン”でがっちり握手を交わしている。

 

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 平山智加は完全に展開を見誤っただろう。垣内清美のツケマイをおそらく想定していなかったはずだ。戦前に新概念データを見ていれば……というのはともかく(垣内の2コース時まくり/差しは3/2)、垣内が握るタイミングと平山の握るタイミングがばっちり合ってしまい、まくり競りのようなかたちになってしまっている。バック後方も3番手争いにも加わらんというところまで追い上げたのはさすだが、しかし進出戦はまず「3着まで」である。4着という結果に、平山は悔し気に苦笑いを浮かべながら、話しかける淺田千亜希らに応えていた。敗因がほぼ自分の読み違えだけに、そうした悔しがり方になったか。

 で、平山の得点率は6・33となっており、4着以下グループのなかではこの時点で2位だった。つまり、平山は準優当確。しかしそのことをどこまで把握していただろうか。苦笑いが「4着だったけど準優に行ける」から生まれたものだとは思えなかったのだが……。5着で得点率6・40の垣内も当確。そして、この時点で4着以下グループ3位となった中谷朋子も当確となっている。

 

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 12Rは予選トップの海野ゆかりが順当に勝って、山川美由紀が2着、岩崎芳美が3着。内枠の上位独占となった。海野と山川は笑顔を向け合い、モニターの前では並んでリプレイに見入った。岩崎は一時4番手も逆転3着で、疲労感はありつつも充実感も見える表情で、海野と山川に続いている。

 

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 4着に敗れた遠藤エミは、やはり逆転されているだけに、溜め息が出る。脱力した感じで天を仰いでもおり、逆転負けと準優当確権を逃したこと、その両方に対する悔恨があふれ出た雰囲気である。得点率5・83は実は準優当確であったのだが、それを把握していたかどうかは関係なく、その時点では準優行きの喜びなど浮かんではこないし、ただただ敗戦の悔いしか感じていなかっただろう。

 

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 これで、いちばん長く結果を待つことになっていた原田佑実も当確となったわけだが、問題は6人目だった。9~12Rの6着はすべて5号艇で、その4人が得点率5.00で並んだのだ。1着のない竹井が脱落したのはすぐにわかった。しかし淺田、魚谷香織、長嶋万記の3人は着順がぜーんぶ一緒。ということは最高タイムの勝負なのだが、そのとき僕の周囲には最高タイムの資料を手にしていた者が誰もいなかった。もちろん記憶もしておらず、こりゃもう発表を待つしかないと思考放棄(笑)。そして、5・00の4人も自分が準優に残れるかどうかをまるで把握していなかったのではないか。タイム差勝負の対象になったことも理解してなかっただろう。タイム勝負の勝者は、この12R6着の長嶋万記。その表情は、ただただ絶望感ただようものだった。ピット離れで遅れて6コースになり、そのうえ見せ場も作れず6着。心中は真っ暗だっただろう。結果的には無事故完走で当確だったことになるわけだが、それを知っていたとしても、同じ表情でピットに上がってきたのではないか。「1~3着は自動的に準優へ」という基本ルールがある以上、そこを目指すに決まっているからだ。

 というわけで、選手の姿やレースのゆくえを追いながら、何やかやと頭をひねっていたので、しかも最終結論をその場で導き出せなかったので、知恵熱出そうです(笑)。明日の準優は、通常の1着2着勝ち上がり。僕も“全員が2着条件の勝負駆け”に素直に熱くなれるし、選手はひたすらそれをクリアすべく今日以上に熱闘を繰り広げてくれるだろう。明日もアツいぞ~。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)