優勝戦メンバーの午後イチの様子をいくつかのパターンに分けるとこうなる。
●ゾーンに入っている 菊地孝平、魚谷智之
菊地の顔つきが、とにかく鋭かった。穏やかさも保ちながら、今日が大切な日だということを認識しているという感じ。気合はそりゃあ入っているに決まっているが、それがはっきりと顔にあらわれていた。
魚谷智之は、自分の世界をきっちり作り上げているように思える。表情はとにかく神妙で、6人のなかでいちばん声をかけにくい雰囲気だったのが、魚谷だ。これも彼流のメンタルコントロールだろうか。
では、石野貴之はどうかというと、ここに加えてもいいのだが……。
●余裕があるように見える 石野貴之
モーターを装着したり、ピット内を移動している際の表情は、いつも通り凛々しい。目にも強烈な力がある。だが、選手仲間に声をかけられたり、検査員の方と会話を交わしたりしたときには、さっと柔らかい笑顔が浮かぶ。僕もとある件で声をかけたのだが、童顔とも言える笑みを浮かべて、冗談も口にしたほどだった。優勝戦のレースは6~7時間も先のこと。まだ余裕はあって当然だが、これが優勝戦1号艇の選手だと考えれば、やはり凄いことだ。ますます死角が見当たらなくなってくる。
●リラックスモード 柳沢一、長田頼宗
SG初優出でもまるで雰囲気が変わらない柳沢は、やはりたいしたものだと思う。優出インタビューに出発する前、唯一ペラ室にいたのが柳沢で、ただしゲージを当てて形状をチェックする程度であった。その後は師匠の原田幸哉と談笑したり、ゆったりと装着場を歩いたり。レース直前になれば別だとしても、今は緊張している様子は皆無であった。
長田も同様だ。スタート特訓前には、山崎智也らのモーター装着を積極的にヘルプ。一般戦組がスタート特訓に出ていき、装着場にボートががらんとなると、いかにも手持ち無沙汰という雰囲気で、装着場を逍遥していた。声をかけてみると、実に明るい声であいさつをしてくる。前回のSG優出はなにしろ、初めてにして1号艇だったから、今日はかなり気楽なのだろう。
で、茅原悠紀もここに加えたいのだが……。
●秘める思いあり 茅原悠紀
「くろすださ~ん、やりましたよ~」。ピットに立っていたら、茅原が後ろから声をかけてきた。顔はニコニコで、そして雰囲気は非常に柔らかい。リラックスしているのは間違いなく、茅原はさらに手を差し出してきた。がっちり握手!
そこですかさず「でも、ここで終わりじゃないっすからね」とエールを送ると、茅原の顔はすーっと真顔になった。「今日はやってやりますよ!」。途端に戦士の顔になったのだ。
2R発売中に行なわれたスタート特訓に、茅原はただ一人、参加しなかった。秘策ありか!?(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)