BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――若武者たちの勝負駆け

 

 

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 9Rの松田大志郎は男前だった。山口達也の前付けに、深イン上等で徹底抗戦。「上見たら、80mの空中線がありました(笑)」という起こしになっている。逃げ切れば予選トップ確定の状況を知っていたかどうかはともかく、リスクを恐れずにインを獲り切ったのだ。そして、コンマ04のスタートをビシッ。外の攻めを完封して逃げ切ったのだから、これは価値のあるイン逃げだ。

 それからしばらく経って顔を合わせた松田の表情は、実に爽快。あれだけのレースをして、トップ確定は報道陣から聞いていただろうから、明るくて当然。足は決して抜けているわけではないようだが、気持ちはもはや超抜クラスだろう。GⅠ初制覇に大きく近づいたと言っていいと思う。

 

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 18位通過は、丸野一樹だ。ヤングダービー初出場のルーキーが、最後の最後に転がり込んだ。「ぜんぜん乗れると思ってなかったです~」と顔をほころばせる様子は、実に初々しい。得点率5・50で、他の勝負駆け勢の失敗が多かったから、これは恵まれの準優進出か、といえば、それは違う。丸野は6Rで3コースからまくり差し一撃。素晴らしい切れ味だった。この1着があったからこそ、浮上できるポジションにいたのである。同得点率の岡村慶太との差は、この1着があるかないか。自力でもぎ取ったのに近い予選突破だ。

「もう、思い切りいきます! チャレンジャーですから」

 そう力強く宣言するあたりも初々しく、好感度大! 準優は6コースとなるだろうが、大外から若者らしいレースを見せてほしい。

 

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 ここまでのルーキーシリーズに出場してきたのは106期以降で、今節は6人(と女子の今井美亜)が参戦。109期の丸野ももちろんその一人で、このなかからは丸野を含めて4人が予選突破。大健闘である。そのなかで、優勝への強い意欲を見せてくれたのは、丸野と同期の島村隆幸だ。島村はこのヤングダービーで、相手が桐生だろうが岡崎だろうが仁志だろうが、何としても優勝したいと欲している。理由は何か。

「総理大臣杯(ボートレースクラシック)に出たいです」

 SG出場を目指す! いや、この言葉にはもっと深い意味がある。来年のグランドチャンピオン。これが島村の地元・鳴門で開催されるのだ。グラチャンに出るためには、SG優勝戦完走で優先出場。それ以外はSG予選得点上位者が選ばれる。SGに出なければ何も始まらないわけで、島村は現在出られる可能性のあるSGとしてクラシックに照準を絞っているのだ。そこで優出しなければならないわけで、かなりハードルの高いチャレンジであるが、島村は少しも諦めていない! 優勝すればグランプリシリーズの可能性も出てくるぞ。僕は、まだSG出場実績のない島村が、ちゃんと地元SGを視野に入れていることを高く評価するべきだと思う。俺なんて、などとはひとつも考えていない島村がカッコいい! 俄然、応援させてもらいます! 準優の相手はまさに桐生に岡崎だが、思い切ってぶつかっていけ!

 

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 地元愛知支部から準優に駒を進めたのは、北野輝季ただ一人となってしまった。北野も6Rでは大敗を喫しており、16位での通過。レース後は本体整備に取り掛かっていた。表情には悲壮感も見えるような気がした。

 今朝、北野とは少し話をしている。ここまでは悪くない感じではあるが、まだ1着がないこと。昨年のヤングダービーはF2での参戦で、不完全燃焼だったこと。今回は地元だけに、今日の勝負駆けはめちゃくちゃ気合を入れて勝ちにいくこと。淡々とではあったが、強い思いが感じられたものだった。それだけに、今日の大敗に気落ちもあっただろう。朝の表情と整備をする表情はまるで違うものだった。

 それでも、準優には残ったのだ。明日は地元の期待を一身に背負い、緑のカポックを着る。コース動く可能性もあるだろうし、6コースだったとしても、今節は6コースからの2着がある。道は開かれている! 明日は今日以上の気合を見せてもらいたい。

 

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 さて、終盤のピットで完全に主役になっていたのは、西山貴浩だった。7R5着で、得点率は5・67。想定ボーダーだった6・00を大きく割り込んだ。ところが、勝負駆け失敗が相次いで出て、8Rを終えた段階では19位の次点。10Rでは2着条件の古澤光紀が道中3番手を走って18位浮上かと思われたが、最後の最後に古澤は逆転2着で西山は19位キープだった。

「まだ諦めてないですよ! こんなにオープンに他人の不幸を祈ってるなんて、僕だけでしょ!」

 報道陣がどっと沸く。11Rでニッシーニャの呪いをもろに受けたのが、地元の本多宏和で、4着勝負のところを5着に敗れてしまった。2着勝負で西山を超えていた後輩の岡村慶太も3着。

「面白くなってきました~」

 とまずは18位浮上を喜ぶ西山。もし残った場合のコースを聞かれて、「とにかくイン。80mでもイン。死んでもイン」という具合に、インを10回くらい繰り返していた。報道陣がどっと沸く。

 そして、12Rで塩田北斗が17位から転落し、自身の17位が確定! ド派手に何度もガッツポーズを繰り返し、僕の顔を見てニヤリ。いや~、悪い顔でした(笑)。かわいがっている後輩の塩田の脱落を知って少し顔を曇らせてもいたが、何はともあれ予選突破! しかも、曲者にはもってこいの6号艇である。

 西山の根っこには勝負師魂が確固としてある。おそらく明日は、それが濃密に発揮されるはずだ。レースも、ピットの様子も、そのあたりがおおいに楽しみ。最後のヤングダービー、悔いなく戦ってくれ!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)