BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――その決意に敬意を

 

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 篠崎元志の容態を心配されている方も多いと思う。言えるのは、出ると本人が決めた以上、我々はただ見守るのみ。そして個人的には、ただただ頑張ってもらいたいと思う。

 あの事故があったときから、元志はグランプリに出ることだけを考えていたそうだ。そのために、できることは何でもした。元志曰く「いい治療ができた」そうだ。ちなみに、折れた肋骨が肺を破っていたそうだが、これについては数日で完治したようだ。グランプリに出ると決意したのも、実際に今日ここに来た決断も、元志自身が下したもの。実際、「もしダメそうだったら、潔く帰ろうと思っていた」とも元志は言っている。もしダメそうだったらというのは、「周りに迷惑をかけるようなことになったら」という意味。これは、対戦相手が元志を気遣ってしまうという意味も含んでいる。明日は出走表に名前が載った。つまり元志は「イケる」と判断した。ならば我々は、見守ることしかできないだろう。

 ピットでの様子を見ると、動きに違和感は見えない。僕も肋骨骨折の経験があるが(さすがに6本というわけではなかったが)、本当に痛んでいればカポックを着たり脱いだりの動作もキツいはず。しかし元志はスムーズにカポックを着脱している。試運転では、スムーズにモンキーの態勢もとっていた。もちろん100%万全とは思わない。思わないが、元志は100%のパフォーマンスをするべく、やるべきことをすべてやって、勝負に臨むだろう。普段以上に事故のないことを祈りつつ、僕は敬意と覚悟をもって、元志の戦いを目に焼き付けるつもりだ。頑張れ元志。

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 強い決意を感じたのは、重成一人も同様。明らかに頬がコケているのだ。5年前のグランプリ初出場時にも大減量して臨んだ重成。今年も同じように減量を自らに課して、今日はなんとオレンジベストである。つまり51kgに届かない体重だ。チャレンジカップの初日体重は53・3kg。次の福岡周年の初日は54・4kg。通常53~54kgで入ってくる重成が50kg台で住之江に入ったのだ。体を真っ二つにしたらボートレーサーが2人出来上がる僕が3~4kg落とすのはわりと簡単である(酒の誘惑を断つことだけが難しい)。しかし、おそらく53kgあたりが理想体重であるはずの重成がそれだけ落とすのはどれだけ大変か。それだけでも尊敬に値するわけである。

 重成といえば、5年前のトライアル第3戦で6号艇からインを強奪して逃げ切ったのが印象深いが、そのときの第1戦は6号艇ですんなり6コースであった。というのも「6号艇は1年間に自分が出した結果」という考え方だからだ。ということは今回も6コースか、ということになるが、どうやら悩んでいるようだ。というのも、トライアル1stはたった2戦しかない。「悠長なことを言っていて、2ndに行けるのか」。1stは過酷な戦いなのだ。一晩考えて明日、重成が出す答えは? まずはスタート展示に注目したい。

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 1st組では、山崎智也が上々の手応えだった様子だ。「去年苦労した分が今年に回ってきた」という言い方を智也はしていて、去年は優勝したとはいえ、実は機力はかなり劣勢だったのだ。だったら連覇も充分か。このシステムになって初めて1stからのスタートとなる智也だが、「楽しみにしてきました」と言ってしまうのだから、2nd行きは既定路線と智也は考えている。明日は逃げ切るイメージしか抱いていないだろう。

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 池田浩二は3年連続で1stからの出場。そして、過去2回はきっちり2ndへと駒を進めている。さすがだ。今年も当然そこを狙っていくわけだが、モーター的には「普通に動いている」とのこと。そこを会見で「普通とは?」と突っ込まれると、「レバーを握れば前に進むし、レバーを放れば減速する」。ガハハハハ! そりゃそうです!(笑)本当に普通っす(笑)。池田もそう言ってニヤリとしていた。煙に巻いたということなのか? ただし、もしかしたらそこに意味があるのかもしれない、と勘繰ったりもしている。選手コメントでよくある「ターンで前に押す感じがする/前に押さない」「ブレーキの掛かりがいい/悪い」というのを当てはめてみると……。やはり今年もシリーズ回りの池田浩二はちょっと考えにくいのだ。

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 1st組では、やはり坪井康晴の評判がいい。永島知洋氏によると、桐生順平が舌を巻いていたそうだ。桐生のモーターは数字的には抜けていても、気配では15号機に劣っているわけだ。坪井もそれを実感したのだろう、表情には余裕がうかがえる。7年前の優勝戦1号艇→大敗のリベンジを果たす時がやってきたか!?

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 一方、今年のSGで抽選運抜群だった石野貴之が、上位6人のなかではもっとも苦しいモーターを引いてしまった。そして、今日の動きは実際に芳しくなかったようである。あと2日間はレースがなく調整に費やせるということもあるのか、それほど焦燥感を感じさせる表情ではなかったが、明るい顔つきではなかったのも確かなことだった。ただ、先述のとおり、昨年の賞金トップ参戦だった智也も、劣勢モーターを引きながら頂点に立っている。今日の気配が結果に直結するわけではないだけに、石野の立て直しには注目しておきたい。今年のSG2Vも、初日は大きな着を獲って、そこから巻き返したものだ。3日目=トライアル2nd初戦に間に合わせてくる可能性だっておおいにあるだろう。

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 さて、グランプリ組はタイム測定&スタート練習の班が1~3班ということもあって、ほとんどが1便バスで宿舎に向かっている。唯一、1便バスに乗らなかったのは、篠崎仁志だった。仁志は1便が出た後もペラ室にこもって、調整を続けた。記念すべき兄弟出場が確定したわけだが、もちろんそのトピックだけで終わらせるつもりは毛頭ないわけだ。というより、次はもちろん兄弟2nd行きを目指すのである。ついに兄弟出場という目標がかなってよかったね、などという感慨は元志にも仁志にもまったくないのだ!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)