BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――輝かしき優出者たちよ!

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 ボーダーが23点とは、とんでもなく高い数字になったものだ。好着順がここまで特定の選手に集まるとは。11Rを終えた時点でファイナル確定組の記者会見が行なわれるのだが、23点の遠藤エミが会場まで誘導されながら、まだ確定していないためいったん帰らされるという事態もあった。12Rの結果次第では、遠藤が次点となる可能性があったのだ。23点なのに。そして、通常ボーダーと想定される21点を獲った小野生奈が次点に終わってしまうのだから、このトライアルは明暗がひどくくっきりしたものとなった。小野はレースを終えたときにその状況を知っていたかどうか。5着に敗れた悔しさもあっただろうが、なんとも硬い表情を見せていたものだ。

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 最終戦でも結果を残せなかった選手たちも、一様に苦い表情をしている。中谷朋子はヘルメットを脱ぐや怒れるような目つきになっていたし、山川美由紀も首を傾げるばかり。樋口由加里は呆然とも見える表情で控室に戻っていったし、日高逸子も表情にはあらわれないものの、不機嫌そうな雰囲気が伝わってきた。戦前から優出は厳しい状況だったからといって、サバサバとトライアルを終えられるわけがない。ただただ不本意だったこの3日間に、ひたすら心を曇らせるのだ。

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 一矢報いたとするなら、12R2着の海野ゆかりだろうか。もちろん2着で満足できるはずはないが、少しばかりの安堵感はあるのか、微笑を浮かべる瞬間が控室に戻る際にはあった。レディースチャンピオン覇者の意地と言ってしまうのはやや軽々しいかもしれないが、下位を這うばかりで終わらせなかったのは見事だったと思う。

 敗れざる者たちも、最後の最後まで全力で戦った! 樋口は辻栄蔵ばりの“ギリペラ”調整だったし、海野は12R組ではペラ室を出たのは最後だった。山川は気合の表情で待機室に向かっていたし、日高も中谷も同様だ。もちろん、優出の望みがおおいにあった小野も、自分を追い込んで準備を続け、全力でベスト6の座を奪いにいった。誰もが最後まで力を尽くしたのだ。

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 そうした敗者たちの姿が、優出した6人をより輝かしく見せるのだろう。イン逃げを決めて戻ってきたときの長嶋万記のとびきりの笑顔は、まさにシャイニングスマイルだった。「準備が大切」という信念通りに一日を過ごし、「外は見ないようにした」と自分のスタートとターンに集中した。それが最高の結果を導いたことが、レース後の長嶋の最高の笑顔を引き出した。いいメンタルで明日を迎えることになりそうだが、明日もおそらく今日と同じように過ごしてファイナルに臨むだろう。

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 11Rを制した時点でファイナル1号艇が確定した松本晶恵も、派手に喜びをあらわすような人ではないが、ニコニコと素敵な笑みを浮かべていた。松本も逃げれば明日は白カポックと戦前に知っていたとのことだし、報道陣ももちろんわかっているから、レース後は松本の周囲に人が集まる。フラッシュの雨が降る。それを受け止めながら、やはり松本は静かに笑う。その様子を見ていると、明日のレース後も同じようにニコニコしている松本の姿が自然と想像されてしまうのだが。いや、まったく別の顔を見せるのかな。それを確認したくなってきた。

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 ファイナル行きは決めたものの、竹井奈美はちょっぴり悔しいレース後となった。いったんは先頭を走ったのだから、逆転された痛恨はどうしても残る。会見中にモニターがリプレイを映し始めたとき、竹井は「見たくない」と笑っている。逆転された瞬間のことは消したい記憶だろう。もっとも、逆転手前の瞬間をテレビカメラはなぜか映しておらず(3番手争いにフォーカスが移っていた)、竹井は「映ってない!」と声を上げてもいるのだが。それでも、初出場で優勝戦に駒を進めたことの高揚感はあるようだった。グランプリで瓜生先輩が優勝し、シリーズでも川野先輩が優勝戦1号艇。福岡に向いている流れに自分も乗れた喜びはあるだろう。小野先輩は残念なことになってしまったが、明日はその思いも背負って戦うことになるだろう。

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 平山智加は、レース後は少し複雑な表情に見えた。3着以上を獲らなければならないとノルマを把握していたようだが、実際は2着を小野が走っていたら、平山が次点になっている。3着であがってきて、ノルマはクリアしたはずだが、もしかしてという思いもあったのだろうか。話は聞けていないが、そんなふうにも見えた。

 会見で印象的だったことがある。昨日はいったん4番手を走ったが、そのとき「落ち着け落ち着け」と自分に言い聞かせていたという。今日は1周2マークでターンマークにわずかに接触して流れ気味となったところで「焦るな焦るな」と言い聞かせたそうだ。昨日も今日も、道中で己と会話しながら、あるいは己のはやる気持ちを戒めながら、きっちりと上位着を獲ってきているのだ。冷静でいられている、ということだ。それを平山は足に余裕があるからだとも説明しているが、だとするなら、明日も同じように冷静に走れるだろう。女子戦最高賞金の大一番(今年から優勝1200万円!)、冷静さを保てる者がいちばん怖いと思うがどうか。6号艇でも侮るなかれ。

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 で、優出者の輝きを放ちながらも、今日はただただ悔しかったのが寺田千恵だ。まさかの6着。自力で攻めたが、日高とまくり競りのような格好になり、後退した。「日高さんはまくらせてはくれませんね」と振り返っていた。判断ミスを悔やんだわけだ。

 で、なかなか面白い組み合わせになったな、と思うのは、まずテラッチは明日も4号艇ということだ。もちろん今日の反省を生かすレースを考えるだろう。おっと、遠藤エミも今日と同じ5号艇だ。あら、平山智加も今日と同じ6号艇ではないか。今日が予行演習というわけではないが、同じ艇番、おそらく同じコースから戦ったイメージが鮮明であるうちに戦う優勝戦なのである。極め付けは、1号艇・松本、2号艇・竹井は11Rと同じで、今日は松本はいったん差され、竹井は「攻めようか(まくろうか)と迷って、差しにいった」と語っている。スリット隊形や明日の仕上がりなどもろもろ違いはあるだろうが、まずカギを握る1コース2コースが、今日の記憶をファイナルに持っていくのである。ちなみに、長嶋は3号艇を初戦で体験している。

 推理しがいのある組み合わせになった優勝戦。明日、最高に輝かしい笑顔でティアラをかぶるのは誰だ!

 

<シリーズ組>

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 シリーズは準優制だから、誰が優出かみんながわかっている。ということもあるのか、勝ち上がった本人よりも出迎えた仲間たちが喜んでいたのが印象的。5号艇で見事に差し抜けた池田浩美の凱旋は、静岡勢みんながバンザイして出迎えている。この8Rには三浦永理も出ていたので、出迎え自体は二手に分かれてのものなのだが、池田がリフトに近づくはるか前から静岡軍団はバンザイバンザイ。外枠からの勝ち上がりという興奮もあったか。

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 6号艇で1着の平高奈菜に対しては、もちろん香川勢の笑顔が向けられた。西村美智子はハイタッチ!……と手を挙げたが、平高はグータッチのつもりだったのか、手のひらと拳が合う形となっていた。ジャンケンならみっちゃんの勝ちです。西村はそれに合わせてグータッチを返そうとしたのだが、今度は平高は拳を握ったままガッツポーズに移行したので、西村と平高の拳が3度くらいすれ違った。結局、うまく呼吸が合わなかったのだ。その様子はなんかかわいかった(笑)。

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 王道モードに入った川野芽唯の隣では、藤崎小百合が思い切り目を細めてニコニコ。渡邉優美も、自身は8Rで悔しい思いをしているのだが、先輩のV王手を祝福していた。川野はあと1回逃げるのみ! 昨年に続いて大晦日Vを、舞台こそ違うが、果たしたいところだ。

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 2着勢では、大瀧明日香は逃げられなかったのが悔しかっただろう。声をかけてくる仲間に対して首をすくめて苦笑を漏らしている。8Rでイン垣内清美を沈めて展開を作った西村歩は、池田明美に腰をぽんぽんと叩かれて労われていた。妹の勝ち筋を作ってくれたのが西村だ。そこには感謝の気持ちもあったことだろう。水口由紀は淡々とした様子で、滋賀勢からの祝福にも微笑を返す程度だった。それでも、しっかり差し残せた足は上々。手応えを得られる2着だったはずだ。明日は一昨年レディチャン覇者の意地を見せてもらいたいところだ。

 シリーズ優勝戦は昨年のクイクラ優勝戦ワンツー、その優出者、一昨年のクイクラ出場者、初代クイクラシリーズ覇者が揃う、なかなか豪華なメンバーになった。11Rも濃厚な一戦となるだろう。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)