ファン投票による女子レーサーの祭典がはじまった。ウムム、これまでの女子ビッグレースとは、やはり雰囲気がちょいと違う。華やいでいるというか初々しいというか、室内全体が淡いピンク色に染まっているような気がした。ぶっちゃけ「ルックスのレベルが高い」が正直な印象である。
さてさて、今期の宮島には「怪物」と噂される絶対エース機が存在する。11号機。9月の初下ろしから14節で11優出3Vの荒稼ぎ。全部の足が強めで、とりわけ伸び足は「誰が乗っても節イチ級」というスーパーモーターだ。
この目玉商品が飛び出す前に、まずは地元の海野ゆかりが2連率3位の超抜機をゲット。
「54号機……2連率は48%!」
というスタッフの声を聞いても、海野は顔色ひとつ変えない。が、10秒くらいたってから、いきなり「ヨーーシッ!!」とガッツポーズだ。
これを見た寺田千恵、羨ましそうな目で「ずいぶん溜めといたなぁ、海野ぉ」と茶々を入れる。すでに抽選を終えたテラッチは28%と聞いてずっこけていただけに、マジで羨ましかったのだろう。
「溜めた溜めた、溜めました。こんなん、久しぶりですもん」
答えて、海野はにっこり笑った。
とはいえ、54号機はまだまだ前座に過ぎない。21番目の選手がガラポンを回したとき、それは起きた。
「11号機……59パーセント!!」
見事に引き当てたのは、ただでさえ優勝候補の長嶋万記。その瞬間、室内に悲鳴と絶叫が響き渡った。いちばん大きな声を出したのは、やはり28%のテラッチだ。
「えーーーーっっ?? ちょっと、どういうことーーーっ!!?? そんなんありーーっ????」
大きなマスクをしていたので万記の表情は見えなかったが、テラッチの羨望の叫び声に対して頭をポリポリ掻いて照れくさそうに下を向いた。「こんなん引いて、どうもさーせん」みたいな仕草だったな。それを見ながらテラッチは「あ~あ、勢いある人って、こんなもんですよねぇぇ」と隣の谷川里江先輩にすがり付いていた。
この一事で抽選会のメインエベントは終わったわけだが、「11号機と同レベルかも」と私が勝手に思っている20号機はまだガラポン機の中。絶対エース11号機はV候補の手に渡ったので、こちらは大穴候補のB級レーサーに引いてもらいたかったのだが……数分後、これまた優勝候補の川野芽唯が準エース機をモノにした。私の見立てでは「このトップ2がかなり抜けている」と思っており、今節のV争いは下剋上のない銘柄級の争いになりそうな気配だな。
運も実力のうち? V候補が続々と好モーターを引き当てるのに対し、多くの若手たちはやや気圧されたように低勝率機に甘んじた。ただ、最後の最後、ラストバッターの深尾巴恵が下馬評の高い53号機を引き当て、微かな笑みを浮かべた。残り物の幸運を、どこまで本番で活かしきることができるか。F持ちの身の上ではあるが、この相棒のパワーをしっかり引き出して大先輩たちをギャフンと言わせてもらいたい。(TEXT/畠山、PHOTOS/シギー中尾)
宮島の注目モーター
★★★11号機(59%)…長嶋万記
★★★20号機(52%)…川野芽唯
★54号機(48%)…海野ゆかり
★15号機(42%)…谷川里江
★53号機(46%)…深尾巴恵
穴31号機(32%)…角ひとみ