BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――奥義?

 

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 ピットにいると、転覆レースは一瞬で緊張感が高まるのが実感できる。選手にとっては他人事ではないし、関係者にとっても選手の負傷は絶対的に避けたいもの。2Rの白水勝也の転覆の瞬間も、同様だった。幸いにも、すぐに「選手、異常なし」のアナウンスがかかって、緊張感は解けたが、それでもレスキューで白水が戻ってくるまでは、関係者も選手仲間も心配そうな顔をしていた。

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 選手班長の角谷健吾と同支部の瓜生正義は、レスキューが到着するピットまで降りていって、白水を待ち構えていた。特に痛がる素振りを見せない白水に、角谷も瓜生もホッとしていたようだった。ピットへと戻る渡り橋の先には、深川真二がいた。深川は白水に声をかけ、白水はうなずくような仕草をした。白水は確かな足取りで、それを見て全員が胸をなでおろすわけだ。それを見ていた僕も同じこと。大事に至らずよかった。

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 そのレースで勝ったのは前本泰和。白水とは70期の同期生で、明暗が分かれるかたちだ。その前本がエンジン吊りを終えて最初に歩み寄ったのは、田中信一郎。田中がまくり、白水がそれを張る展開を捉えただけに、田中が「行ってくれたから」という思いはあっただろう。頭を下げた前本の背中を田中がポンと叩く。まくり切れなかった田中は悔しかろうが、自分の作った展開を利して勝った相手を祝福したわけである。まくりマークの差しというボートレースらしいレースを作った二人の爽やかなノーサイドであった。

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 寺田千恵のウェアの背中に、いかつい勘亭流の漢字がびっしり並んでいる。目をこらして読んでみると「本家平賀流乗艇術奥義継承者」。ん? 本家平賀流乗艇術? その奥義って? テラッチがその継承者なの? 平賀流乗艇術ってすごいのか?

「あっはは~。平賀くんに訊いてよ~」

 平賀とは、すでに引退した平賀圭らしい。岡山支部だから、テラッチの後輩である。後輩から乗艇術を伝授されたの?

「継承したら、なんかゴンロク並べそうだよね~」

 いや、それは……。ここまで3着2本だし。まあ、いい。今節はテラッチの披露する奥義を堪能するとしよう。

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 乗艇術といえば、中村亮太が「フェイクモンキー」なるものを編み出したらしい。「フェイクっていうと、なんかイメージが悪いですけどね~」ということで、ネーミングは仮称といったところだが、ようするにフェイントをかけて自分の有利な隊形に持ち込もうというものだ。昨日の12Rで、実は繰り出されていた。リプレイをぜひ見てほしい。1マーク手前、誰よりも早く立ち上がってモンキーの態勢に入っている。その外から攻めようとしていた茅原悠紀はこれを察知、亮太がまくると見たのだろう、差しにチェンジした。ところが亮太は、モンキーのまま鋭角に差した。これで茅原は二番差しとなってしまった。茅原はまさに亮太のフェイントに引っかかったのだ。まあ、結果は茅原が先着ですが(笑)。亮太といえば、持ちペラ時代には独特な形状のプロペラ=亮太スペシャルを編み出した男。オリジナリティ、クリエイティビティに富んだ男である。持ちペラでなくなった今、乗り方でも独自性を追求していくわけである。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)